私のせいだと?


男に命じられるまま、差し出された書類にサインを書き玉璽を押す父。

その書類を男に差し出すと、父はツカツカと歩み寄る。


「以上をもってパスリム国の消滅をここに宣言する」


男の宣言とともに顔を赤黒くさせていかりをあらわにした父に顔を蹴られ、踏みつけられるという暴行を受けた。

反撃したくても……逃げ出したくても、衛兵たちに押さえつけられて抵抗すらできない。


「止めてください! 父上……」

「黙れ! こんなことになるなら貴様なんか10年前に殺しておくべきだった!」

「幽閉して別の奴を王太子にしなかった貴様も同罪だ、廃国の王。親子揃って大人しく地下牢に入ってろ。ただし家族に殺されないよう、別々の部屋でな」


『貴様は何者だ!』


そう言いたかったが、口の中が切れたのか動かそうとしただけで痛みが走る。

そんな私に気付いたのか、男は私に近付いてくる。


「ほう、貴様は私が分からぬようだな」

「お、お許しを……」

「黙れ、ゲスが‼︎」


父が男の足に文字どおり縋りついたが、男は父が縋った足とは逆の足で父を蹴り飛ばす。


「愚かな自分の責任だとなぜわからん!」

「お許しを! 何卒お許しを」

「父上! 何故そこまでこの男を……」

「ほう。貴様はまだ自分の罪を理解せず、この国が滅びた責任を負う意味もわからぬとは」

「お許しください、コートレイル公爵!」


必死に土下座をする父。

父は今なんと言った……?

コートレイル公爵?

私の婚約を無碍にした女の父親か!


「傷物女の父親か! 嫁に貰ってやるというこの私の慈悲を無にしやがった」

「黙れ!」


傷物女の父親が私の顔を蹴りつけた。

鼻が、歯が……血の匂いがする。


「貴様が我が娘を侮辱することは許さん」

「我が国でも傷物女で有名だ!」

「そりゃあ有名だろう。娘の足を傷つけたのは貴様だからな」


ガンッと私の顔を踏みつけた男はガンガンッと繰り返し踏み付けてくる。


「お前が我が娘を階段から突き落とし、娘は足を傷つけられて歩けなくなった。誰のせいだ? 全部……貴様のせいだ!」


今度は私の腹を蹴り続ける。


「それをなんだ? 『傷物になったお前を嫁にしてやる。性奴隷くらいには使えるだろう? 私を悦ばせろよ』だと? よくも恥も外聞もなくあんな手紙を送り付けやがったな。娘の手に渡る前に私が受け取った。そして両国王に延期にしていたこの国の消滅を認めさせた。お前が心を入れ替えれば属国のままでいられたものを」


私のせいだと?

パスリム国が滅びる理由が……

いや、パスリム国は属国?

そして……私のせいで…………滅ぶ?

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