漆黒の姫

@aoka20011

ブロローグ

僕は13歳の頃ある少女に出会った。黒い服に黒い髪の毛、そして黒い瞳とまるで闇夜の魔女を連想させる、そんな少女だった。






きっかけは家から追い出された日のこと、僕は行くあてもなく町をさまよっていた。追い出された原因は僕の“能力”にある。それは人を見ればその人の才能や能力や魔力量、強さがわかる上、相手の弱点や“死期”まで分かる。物を見ればその物の質がはっきりと分かる。人々からは“神の瞳”と呼ばれている。




ただしかし致命的な欠点がある。それは僕には魔力がないからだ。勿論武器を扱う才能もなく、勉学一筋でそれの欠点を埋めようとした。その結果天才とまで呼ばれるようになった。しかし僕の住む王国は実力主義、いくら頭が良かろうと戦うことが出来ない者は無能だ。




父と母はそんな僕に愛想を尽かしたのだろう。僕の弟は剣の才能があり、妹には魔法の才能があったが僕はそれがない。愛想を尽かすのも無理は無いだろう。それにこの能力を親に知られたときから一定の距離をおかれていた。きっと僕が心も読めるのではないかと勝手に勘違いしたからだろう。実際にはそんな能力はない。だかそれがより一層僕を苦しめたのだ。










弟と妹は元気にしてるだろうか。あの二人だけは僕の味方でいてくれたのは覚えている。だか今二人は帝国の学園にいる。また会いたいなんて思うのはお門違いだろう。






そして僕はある路地裏にいた。勿論食糧を探すために。しかしそんなうまくは見つからない。




“疲れてきた”




朝から何も食べておらず腹ペコだった。無駄に動くよりもおとなしくしよう。そう判断したとき、僕は出会った。




「貴方は誰?ここで何をしている?」




僕は一瞬みとれてしまった。どこかのお姫様、そんな印象だった。




「ねえ貴方?聞こえてる?」




「あ、はい。聞こえてます。その、ここで少し休もうかと。」




「ここから消えて。」




「え?」




「もし嫌だと言うのなら貴方を殺す。」




すると彼女は槍をこちらに構えた。そして僕は感じたことのない殺気を感じた。




──殺される!───




逃げたいが体が動かない。体が震え、汗をたくさん出てきた。




───動け!動けよ!───




しかし体は動かない。ダメだ、殺される!そして僕は命乞いをするかのように彼女に話しかけた。




「待ってくれ!体が動かないんだ!だから殺さないでくれ!」




「早く消えて?あなたの居ていい場所じゃない。」




感情のない声が僕の焦りを増幅させる。




──ヤバイ、ヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイ!──




その時だった。急に後ろから蹴られたのだ。その場に倒れこみ、振り向くと男三人がたっていた。




「おいっ!そこの嬢ちゃん、俺の部下を殺してくれたそうだなあ!」




「何?貴方たちも死にたい?」




「死ぬのはお前のほうだよ!」




すると男たちは魔法銃を取り出した。確かあれは異世界人が開発した新武器で避けることはほぼ困難とされている武器だ。あれを扱うのに才能なんかいらない。つまり彼女は不利な状況なのだ。




「あなたたちも消えて?。」




「ふんっ!何がここから去れだ!死ねっ!」




男が引き金を引く瞬間、僕は自然と体が動いた。そして彼女をかばうかのように彼女を抱きしめ、僕は身代わりになった。




「あははっ!なんだお前!その女をかばうのかよ!滑稽だな!」




「っ!くっ!・・・大丈夫かお前?」




僕はその場に倒れ、意識を失った。




「さあ嬢ちゃん、次はあんたの・・・ってあれ?」




「死ね。」






─────────────────────────────




目を覚ますと彼女が近くに立っていた。日もまだ落ちてない。あれからそんなに時間はたっていないようだ。




「貴方?大丈夫?一応治癒魔法は使ったけど。」




治癒魔法?そういえば痛みが消えていた。彼女、魔法も使えるのか、改めて彼女の能力を見ることにした。そして僕は驚く。全てにおいて才能があるのだ。こんな人初めて見た。もしかしたらあの異世界人も越えるかもしれない。そう思った。




「ねえ貴方?聞こえてる?」




「うあっ!・・・あ、ああ。大丈夫だよ。」




いきなり顔を覗きこまれたので驚いてしまった。それぐらい、綺麗な人なのだ。




「さっきはありがとう。貴方名前は?」




「僕はガイノス・バーン。ガイと呼んでくれ。」




「私はメリー。“漆黒の姫”勝手に呼ばれている。宜しくねガイ。」




メリーに名前を呼ばれ、思わず照れてしまった。それにしても漆黒の姫か。彼女にはビッタリの名前だと思った。




「ああ、宜しくなメリー。そういえばあの男たちは?」




「あっち。」




メリーが指指す方向を見ると首が繋がっていない死体があった。思わずゾッとする。




「す、すごいな。」




「別に。あれくらい日常的にある。それよりも貴方は何故ここにいる?」




「ああ、それはな・・・」




彼女に今までの事情を話した。勿論能力についても。彼女には何故か自然と話せた。自分でも不思議に思うくらいに。




「そう、それは大変だったわね。じゃあ次はワタシの番」




「いいのか?僕に話しても。」




「別に。話したいから話すだけ。貴方みたいに話は長くない。」




そう言うと彼女は話し始めた。




彼女は八歳の時、親に捨てられ今までのここで過ごしてきたらしい。生きる為に殺しや盗みもやったそうだ。そしてこの生活を七年は続けているそうだ。話しているときの彼女の顔はどこかつらそうだった。




「こんな感じ。」




「そうか・・・」




僕は彼女を抱きしめる。今の話を聞いて僕よりもひどい境遇であることを知ったから抱きしめたのもあるが、何よりも彼女がどこかつらそうな顔をしていたので無意識に抱きしめた。




「・・・温かい、すごく温かい。何か満たされるような感覚。ずっとこうしていたい・・・」




彼女も抱きしめてくれた。きっと彼女は誰かの温もりが欲しかったのだろう。しばらく離してくれなかった。




「ふぅ、ありがとうガイ。」




「いいよ別に。誰だって寂しくなるときはあるから。」




「それじゃあガイ、私の家に来る?」




「え、いいのか?」




驚いた。まさか家があるとは。




「ガイならいい。来てこっち。」




するとメリーが俺を引っ張って家に案内してくれた。






見た目は他の家と変わらず、内装も普通だった。ただ一人で暮らすにはとても広かった。




「この家ね、元々老夫婦が住んでたのを私にくれたの。もうあの老夫婦はいないけど。」




「へぇー。」




「それよりもお腹空いた。パン食べる?」




「ああ、頂くよ。」






食事を終えると彼女は風呂場に案内してくれた。まさか風呂まであるとは。正直驚いた。






そして泊めてくれることになった。そこまでは良かった。




「ねえガイ?早く来て?」




まさか一緒のベットで寝ることになるとは・・・




「ガイの体、とても温かい。またギュってしていい?」




「いいよ。」




ギュっーーーと抱きしめられる。その時彼女の胸が当たる。出会ったときはわからなかったがこんなにでかいのかと驚いた。そんな感じで一日を終える。ちなみに僕はあまり眠ることが出来なかった。






次の日の朝、俺はメリーに読み書きを教えていた。理由は彼女がやりたいといったから。何故かは知らないが彼女は俺に懐いている、断るのは可哀想だしやることもないので引き受けた。




そして一ヶ月後、メリーからあることを言い渡される。




「お金がなくなった。」








僕は今冒険者組合に来ている。冒険者とは文字通りの副業だ。年齢に制限はなく、仕事の内容は主に依頼を受けた土地の測量や調査がほとんどだ。勿論登録して依頼を受け、報酬としてお金が貰えるために来た。




「ごめんガイ、こんなことさせて。」




「謝るなよ、どうせいつかはやらなきゃいけないことだ。」




そして結果発表、そこに僕たちの名前はなかった。




「マジか・・・」




「ちょっと私キレそう。」




「っておい!落ち着け!ここで槍を出すな。」




メリーがいきなり槍を構えるので焦った。




「ガイが言うなら・・・」




「にしてもどうするかな・・・」




途方にくれていると一人の男性が話しかけてきた。




「君たち、ここは職員の採用試験の結果だよ。冒険者はあっち。」




「え?」








とりあえずお金を得る手段を確保できた。これからはお金を稼ぐ為に忙しくなりそうだか。するとメリーが抱きついてきた。




「ねえガイ?」




「どうしたメリー?」




上目遣いで見てくるので思わずドキッとした。




「私から離れていかないで。」




抱きしめる力が強くなる。僕も抱きしめる力を強くする。




「大丈夫、僕は離れないよ。安心して。」




「・・・そう。私も、私も“一生離さないから”。」





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