第10話 拾い物がついて来ようとしてるのですが3
何それ?何それ?全っ然意味がわんないです!!
長閑な田舎道のど真ん中で、マクレーンは先程聞いたアランの話に内心大絶叫していた。
アランの話はこうだった――。
1ヶ月前、ある国の傭兵を辞めたアランは魔女の森に向かったのだそうだ。
しかし、その森に入ってすぐに道に迷ってしまったらしく。
森の中を出口を探して彷徨っていると、真っ黒いフードを被った占い師に呼び止められた。
路上でテーブルの上に水晶を置いて座っているアレだ。
そしてその占い師はアランを呼び止めると、こう言ってきたそうだ。
「私と別れた後に貴方はすぐ人に出会います。その人に必ず付いて行きなさい、そうすれば貴方の望みは叶えられるでしょう。」
と・・・・。
アランのその話にマクレーンは半眼になった。
明らかに怪しいですよそれ・・・・。
胸中で呟きながらマクレーンはアランの顔を見上げた。
見上げたアランの表情は実に嬉しそうだった。
「なっ?なっ?凄いよな、本当にあの占い師の言った通り、すぐにマクレーンに会えたんだよ!」
運命的だよな~!と、まるで自分の手柄のように胸を張って言うアランに、マクレーンは冷ややかな視線を向けた。
「いえ・・・・あんな森の入り口に居たら誰にでも会うでしょうね。」
はぁ、と溜息を吐きながらアランを見つけた場所を思い出す。
確か彼は森の入り口の休憩場にいた。
そこへ自分が偶然通りかかっただけだった。
しかもその時アランは行き倒れていたのだ。
もしかしたら僕の通る前に何人か素通りして行ったのかもしれないし・・・・。
山や森は、野党や山賊が多い。
行き倒れた旅人のフリをして助けた相手を襲うといった話を聞いたことがある。
あの時は驚いて思わず助けてしまったが、旅慣れた者やあの森を管理する木こり達ならまず近付かないだろうなと、己の失態にマクレーンは小さく舌打ちした。
あのまま素通りしていれば、どこかの親切な人が拾ってくれていたかもしれない。
そうすれば僕は今頃一人で居られた筈なのに・・・・。
まさに己がその『親切な人』に十分当て嵌まっている事に全く気づかないマクレーンは、胸中で残念そうに呟いていた。
「そんな事無いって!俺あそこに丸一日倒れていたけど誰も通らなかったぜ。」
その言葉にマクレーンは固まった。
「ま?丸一日!?」
「ああ。」
目を丸くしながら言うマクレーンに、アランはしれっと答える。
「す、直ぐ会ったって・・・・。」
「ああ、直ぐ会ったじゃないか?たった一日で。」
にこにこと笑顔でそう答えるアランに、マクレーンは驚きの声を上げた。
「い、一日中あんな所に倒れていたんですか!?」
「ああ、人に会うのに三日もかからないなんてラッキーだよな!占い師に会った時は5日もかかったからな。」
衝撃的なその言葉にマクレーンは真っ青になる。
「な……そ、そんなにあの森の中を彷徨ってたんですか!?」
「いや、正確には2週間と4日だぞ。」
いや~一時はどうなるかと思った、と笑顔で衝撃発言をして来るアランにマクレーンは更に顔色を変えた。
「に、2週間って……半月以上も彷徨ってたんですか!?」
信じられない!と、真っ青になったその顔でアランを見上げた。
「ああ、一応食料はあの森で調達できたしな・・・・ただマクレーンに会う三日前には無くなったけど。」
「あ、あの森は迷っても大抵1日もすれば外に出られる筈ですよ?」
魔女の森の仕組みを思い出しながらマクレーンはアランに詰め寄った。
何故そんなに彷徨ってたんですか?と聞いてくるマクレーンにアランはさも当然とばかりにこう答えてきた。
「何言ってんだ?俺は赤の魔女に会いに来てたんだぜ、会う前に帰ってどうするんだよ?」
おかしな事言うな~と笑うアランにマクレーンは眩暈を覚えた。
筋金入りだ、この人は。
筋金入りの……。
「馬鹿ですか?」
思わずぼそりと喉を突いて出てしまった言葉にアランがむっとした顔を向けてきた。
「馬鹿って何だよ・・・・俺は本気だぜ。」
口を尖らせながら言うアランにマクレーンは疲れた表情を向ける。
「すみません・・・・。」
ひと言、そう言うので精一杯だった。
思わず頭を抱えてしまう。
凄い執念だ・・・・。
マクレーンは目の前の男をちらりと見上げながら溜息を吐いた。
そこではた、と気づく。
まさか・・・・。
もの凄く嫌な予感に、つぅと背中に冷や汗が流れた。
「あ、あの・・・・そう言えば魔女は?」
恐る恐る見上げながらマクレーンは訊ねる。
「ああ、探すよ。」
マクレーンの質問に、簡潔に答えたアランの顔は笑顔だった。
「えと・・・その行かないんですか?」
マクレーンは先程のアランの話を頭の中でまとめながら、気づきたくない事実に内心首を振る。
まさか……
「何処へ?」
「魔女の森へ・・・・。」
マクレーンは搾り出すような声でアランに向かって言った。
祈るような気持ちでアランを見つめる。
お願い・・・・気が変わって!!
マクレーンは胸中で祈った。
真剣な顔で己を見上げてくるマクレーンに。
にこり。
アランは屈託の無い爽やかな笑顔を向けると。
「いや、マクレーンに付いて行けば俺の望みは叶えられるからな!」
その瞬間、マクレーンの脳裏で淡い期待が脆く崩れ去る音が聴こえてきた。
ああ・・・・やっぱり!!
真っ青な空に悲鳴のような叫び声が響き渡っていった。
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