Phase3 『プレイゾーンと危険区域』
【Roster No.7@ウランバナ島南東部】
「この大会が終われば、このウランバナ島は『サバイバルゲーム』をテーマとしたアミューズメントパークが開園することとなっている。くれぐれも、建造物を破壊しすぎないように」
と、空港で開かれた開会式で起き上がりこぼしのような体型の老人=
「どうするよこれから」
Roster No.7【3rd ClassB StarS】は実銃ではなくモデルガンや各種装備を整えて行われるサバイバルゲームのチーム――ではなく、スマートフォンのバトルロイヤルゲームのチームである。国内最高峰と名高い『Shrimp Scrim』ではTier2から瞬く間にTier1へと駆け上って頭角を現し、幕張メッセで行われた国内大会『LARGE』では他チームを圧倒して優勝した。チームメンバーが全員現役の男子高校生で構成されていることでも知られている。
「帰るべ」
「どうやって」
チームリーダーであるナカハラは当初、この大会を自らがプレイしているゲームタイトルの『オフライン大会』だと思い込んで応募した。応募の地点で引き返せたらよかったものの、オーディションには合格し身体能力測定は問題なし。
「そりゃあ船とかボートとかあるべ」
ゲーム内に実装されているマップを再現した島で行われるオフライン大会。4人ともが心躍らせながら今日この日を迎えた。のだった。が――。
「運転できる?」
「船舶免許はない」
「だよな」
空港に集まってみればまず手持ちのスマートフォンやタブレットを回収され、イヤホンやヘッドホンの類も使用不可だという。代わりに配布されたのはゲームがインストールされていない携帯情報端末とチーム内の意思疎通にしか使えないトランシーバーのみ。周りを見渡してみればオフライン大会で見たことのないような人たちばかり。男の子のような格好をした可愛い女の子に話しかけたらすんごい目つきで睨み返されてしまった。殺気立っている。
ムードメーカーであるミトは「現地で指定のスマホがもらえるべ、たぶん」と盛り立てたが、輸送機内では何のアナウンスもなかった。実際に配られなかった。
「できないけど、なんとかなるべ」
北から南までの航路で、彼らが降りたのは南に離れた小島である。エリアでいえばウランバナ島の南東部にあたる。ただし、これは降りたというよりは降ろされたという表現のほうが正しい。他のチームが次々とランドマークを決めてパラシュートで降下していく中で、状況が飲み込めずに「どうする?」「乗ったままでよくね?」などと会話していたところを乗務員たちに放り出されてしまった。
「すげぇ痛いんだけど折れてね?」
ナカハラとミトがいかにしてこの島から脱出するかを考えているさなかで、フジヤマは左足首に包帯を巻いている。着陸に失敗して捻挫してしまった。降り立った場所から近くにあった家に救急セットがあってよかったと思う。
輸送機から空中に投げ出された4人はなんとかパラシュートを開いて、タンポポの綿毛のようにかなりゆっくりと戦場へ降り立ったのだが、この島に数多く発生しているケガ人のうちの1人となってしまった。
「早く医者に診てもらわないと……」
「医者いるの?」
「さあ……でも、やっぱ病院には行ったほうがいいべ」
4人のうちただ1人だけ免許を持っていたカワムラが車を運転し、北東部にあるらしい『盂蘭総合病院』を目指している道中。
「ってか、海ってプレイゾーンじゃなくね? どうなんその辺?」
会話を聞いていたカワムラがつっこむ。今回のルールではプレイゾーンの中に入っていない選手は強制的に"失格"となってしまう。つまり、ここから帰るためには――。
「4人で生き残るしかない」
ナカハラは自身に言い聞かせるようにつぶやく。それを聞いたミトがうなずいて、拾い上げたSCAR-Lを掲げた。パラシュートで降り立った地点から、車を見つけて4人で乗り込んで移動。ここまではどこからも撃たれずに無傷だったが、ここからどのような敵が待ち構えているのかわからない。病院でハイドしている可能性すらある。索敵しながら、手分けして防弾チョッキやバックパックを回収する。
「撃つ練習しといたほうがよくね」
左足を庇いながら歩き回って、フジヤマはTommy Gunを手に入れた。4人ともゲーム上でのリコイルコントロールはお手の物だが実際の銃を扱ったことはない。安全装置が外れていないことにも気付かずに壁を撃とうとしている。
「まあ、なんとかなるべ」
【生存 76(+1)】【チーム 23】
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