第46話 変身! ちょっとずつ変わる関係性!
秋。
岐阜県某市――
紅葉の見える、景色の良い丘の上に。墓園があった。
やってきたのは、8人。
咲枝と綾水、2代目の3人、胡夢とその父親志村一輝、母親の美優である。
しばらく黙祷を捧げて、咲枝が口を開いた。
「…………
「そうですわね……」
綾水も頷く。その墓石は、仲良くふたつ並んでいる。
『
『
「しょうがないよ。あたし達の時と咲枝ちゃんの代で、結構色々変わってるし。知らなかったんだから。あたしだって、恵那おばさんと理亜おばさんが亡くなったの、知らなかったし」
大空かけるが、ねえ、と同意を促す。両隣に立つ海野なみと花山りくも頷いた。
「一応、私らは自分らの代の時に会っててね。エナジーの使い方とか技とか、教えてもらったりしたのさ」
「うん。なんで僕らには適性が無いんだろうって、実は嫉妬していたよ」
「……ええ」
「あはは。それも結局、『シムラクルム』のせいだったらしいね」
花山りくが説明する。志村一輝と美優が同調する。
ここには、歴代エナリアとその家族しか居ない。リッサやナギは勿論、ポポディララディも来ていない。海野なみの夫や花山りくの息子も、今日は外してもらっている。
「そう言えば。シムラクルムは恵那おばさんのことを『完全なる奇跡存在』とか言ってたけど」
「ん」
ふと。気付いたように、大空かけるが切り出した。
「咲枝ちゃんて、それ超えてるよね。ストームフォームに『完全に』適合してるし」
「確かに。ああ、あと。綾水ちゃんも歴代最強のエナジー出力だし。あのシムラクルムを一撃で倒したもんね」
「そうそう。ふたり居たらダークオーラも余裕だったよねきっと」
「え……」
言われて。
咲枝と綾水はふたりで顔を見合わせる。
「…………ぉお」
「……な、なんだか、微妙な気持ちですわね……」
「やんなぁ……。大人んなってから変身ヒロインはちょいキツイよなあ。やっぱ」
「わたくしは構いませんけど、まあ。もう少し早く来てくださったら、本当に可愛らしい咲枝さんを見られたと思いますのに」
「…………綾水って、これ今まで訊かんとこう
「え? はい。わたくしは咲枝さんが一番大好きですわ」
「………………ここへ来て百合要素入れるか……」
「あっ。勿論。咲枝さんの幸せを第一に考えていますわ。ですから、空石様とはしっかり結ばれていただかないと」
「えっ。咲枝ちゃん空石さん好きなの?」
「ほう。詳しく聞こうか3代目」
「あー
「あははー! いくつになっても恋バナは良いねえー!」
「あんたも早く相手見付けなよ、かけるっち」
「しょーじきあたし美人だよねえ? なんでモテなくなったんだろ」
「そりゃ中身は女子中学生のままだからな」
「ああそう言えば。
「ですわよねっ。そうかなと思っていましたのよ。海野様って、どこかでお聞きしたなと」
「そこ。お嬢様同士で盛り上がってんじゃねえ。何の就任パーティだよ」
「ええと。内閣……」
「あーうるさいうるさい。ほら行くぞ」
新旧エナリア同士のコミュニティが形成された。
「あれ? ツッコミアタシと花山さんだけ?」
「大変よね……。お互い頑張ろう咲枝ちゃん」
♡
「うーい。お疲れさーん」
「お疲れさまですわ。咲枝さん。どうでした?」
「普通のつよ怪人やったわ。いつも通り」
「お怪我もなくて良かったですわ」
「エナリアなってから怪我したことないけどな」
あれから、予測通り日本全国で怪人が出現して暴れようとしている。同時に複数箇所現れることも多々あり、エナジーレーダーと疑似ワープ装置をフル稼働してもギリギリの対応になってしまうことも多い。
「秋やいうても沖縄はやっぱ暑いなあ」
「ですわよね。でもそれがなんだか懐かしくて。たまには行きたいですわ」
「流石、沖縄生まれはちゃうなあ。まあワープ使たらすぐやん」
「ええ。そうですわっ。今ならどこへでもすぐに旅行できますわよ」
「
「咲枝さん、空石様を誘ってみては?」
「…………!」
だが。確実にこれまでよりは余裕ができている。
「実は奥手だったりしますの?」
「うぐっ!」
「あらあら。今までも割と思わせな台詞を言っていたのは、おふざけの空気感があったからってことですのね。空石様はドが付く真面目ですもの。真面目な恋愛は、実は苦手なのですわね。咲枝さん」
「むぐぐ……! 綾水がめっちゃ攻めてきよる……っ」
「どうなんですの? そこんところ、詳しく聞きたいですわ」
「うう……。こういう所は女子大生やなあ綾水は……」
♡
「良いんじゃないか? 丁度良い。ふたりで行ってこいよ」
「……!」
と、三木に言われ。
「…………『京都市上京区』」
「ああ。御所があるな。昔はこの辺りが首都だった訳だ」
「いやそら知っとるけど」
咲枝と空石、ふたり。
京都市にやってきていた。
「もう殆ど失われたらしいが、ある古寺に『妖怪』についての記述があるらしい。当時のエナジー研究の資料という訳だな」
「……はぁ。なんや旅行や言うても調べモンかいな」
「まあな。今の怪人対策本部はとにかく忙しい。だが……今回は殆ど、休日と言って良い」
「へ?」
「その『調べモン』に2日設定した。無理矢理な。今日終わらせて、良い所に泊まって、明日は観光でもしようじゃないか」
「!」
空石からの、予想外の提案だった。あの、ド真面目空石からの。
「
「俺がリーダーだぞ?」
「おお……! 言うやん空石さん! よっしゃテンション上がって来たわ!」
「……まあ、俺も咲枝も皆から『休め』って割とマジっぽく言われてるからな……」
「そら空石さんリーダーやりながら戦闘もちょいちょいやるとか死ぬやろ。アカンでそれ。新人さんビビるって。この組織で上目指そう言う子おらんくなるで」
「まあ……な」
「そんな空石さんもカッコええけどな」
「……咲枝こそ、戦ってばかりだろ」
「アタシは割と、毎日温泉入るだけでオールオッケーやからなあ。アホやねん基本アタシ」
「そんなことないだろ。疲れは溜まる筈だ。今日明日くらい、何も考えず戦わず。ゆっくりしてくれよ」
「…………疲れとるように見える?」
「無理してるだろ。綾水の前では特に。別に気を張らなくて良いと思うけどな」
「………………」
「な、なんだよ」
ぴたりと。
足を止めた咲枝。振り返る空石。
「……アカンわ」
「は?」
「やっぱ好きや」
「え」
「もうロマンチックとかどうでもええわ。好きです。アタシと付き
「は…………?」
「…………!」
「…………っ!」
紅葉のように色付いた表情で。
♡
「エナジー適合者でない人間にエナジーを打ち込み、どうなるかの実験。これが記録にある限りでは最初の研究か」
「見付けたのか。その、『キョート』で」
「ああ。ウチのバカップルがな」
場所は、ウインディアに変わり。王城の一室にて、ナギに与えられた寝室に、三木がやってきていた。彼は持ち込んだノートパソコンをデスクに置いて忙しなく指を動かしている。
「まあ、結果は散々だな。殆ど全てが妖怪となり、退治されたと」
「で、あろうな」
「そこから、エナジーの量を減らしたり環境を変えたりして、少しずつ、『人工的にエナジー適性のある人間』を生み出そうとした訳だ」
「1000年掛かって、完成を見た訳であるな」
「そうだな。初代ミラージュウィンド『結城理亜』。彼女は普通の女の子として扱われ、従順に、エナリアをサポートし、その使命を全うして――」
「わらわのお祖父様は討たれた」
「――そうだな。だが、その研究のお陰で。本来エナジー適性の無い俺や空石、他の隊員達も、ウインディアに来れる。つまり疑似ワープができる訳だ。『エナジー適性が無ければウインディアへ来れない』というのは、乱用防止にも繋がるな。技術が漏れても、我々以外には使えない技術だ」
三木の座る椅子に、ナギがもたれ掛かってきた。
「……こんな小さき字、わらわには無理じゃ。ぱそこんとやらは」
「手取り足取り教えるが」
「…………嫌じゃ。ヒノモトのオスは皆いやらしい」
「俺は普通だぜ。空石の奴がプラトニック過ぎるだけだ」
「で。わらわはウインディアにて断罪されなかった。それも貴様の手引か?」
「いや。それはララ王女の腕だな。『殺した数より、救った数の方が多い』と言って。『救う為に必要なエナジー吸収だった』と正当化した」
「……わらわはいつでも、どれだけでも罰を受けるぞ」
「ああ。ララ王女も知ってる。けど、次元が違う。あの人は、『本当に』お前と仲良くなりたいらしい。人間を超えてるよ。あの精神力と責任感」
「…………」
「さて、今日の俺の仕事は終わった。今日は人間界へ帰るぜ。悪いな抱けなくて」
「いや。全く。帰れ」
「……それが照れ隠しじゃなくて『ガチ反応』だから面白い。『人類とは違う人間種』か。エナジー研究の産物だが、まだまだ謎は残る。俺の趣味は一生終わらないな」
「充分変態である。貴様も」
ナギは全く、少しも三木を見送らなかった。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
次回予告!
〈綾水〉:きゃ――! こっ。告白しましたわっ! 咲枝さんっ! 遂に!
〈咲枝〉:あー。やかまし。
〈綾水〉:ここへ来てようやく進展しそうですわね!
〈咲枝〉:恥ずかしわあ。目ぇキラッキラしとるしこの子……。
〈ふたり〉:次回!
『美少女エナジー戦士エナリア!』
第47話『変身! ウインディア討論会!』
〈咲枝〉:まだまだやらなアカンこと残っとるなあ。実は
〈綾水〉:ではせめて、わたくしが癒やしてさしあげますわっ! お風呂で!
〈咲枝〉:んー……。それもちょっと
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