第30話 魔王様の公開処刑
「これで俺がモナを愛しているって、信じてくれた?」
「わ、わかった! 分かったから止めてっ!!」
モナはウルの頬を両手で挟んで遠ざける。
彼はちょっと拗ねたように「どうして?」なんて言ってくるが、顔面が爆発するほど熱くなっていたモナはそれどころではない。
ただでさえ外見は大好きなレオなのだ。
アイツはこんな大胆なことをしてこなかったけど、この鬼畜魔王様は遠慮もなく恥ずかしいことをやってくる。
いったい何度乙女心を殺しに来れば気が済むのだろう、この男は。
「……モナは俺のことを好きになってくれないの?」
「~っ!? なっ、なるわけないでしょうが!! 私の想い人はレオ、ただ一人よ!」
「うーん、やっぱり前途多難だなぁ……」
モナは気付いてはいないようだが、実際は彼にすっかり毒されていた。
なぜなら、抱き寄せられただけではもう抵抗もしなくなっていたのだから。
結局、そのまま抱きかかえられて王都へ戻った二人。
門までやって来ると、心配した他のメンバーが迎えに来てくれていた。
「お姉ちゃん!!」
「大丈夫よ、リザ。ちょっと疲れちゃっただけだし」
「良かったぁ……あの鐘のお陰でモンスターが引いたんだけど、お姉ちゃんが行った方角から雄叫びが聞こえたから……」
「あぁ、うん。でもウ……レオに助けてもらったから」
強がってはみたものの、冷静に思い返すと本当に危ないところだった。
ウルが来てくれなかったら、今頃ゴリラ型のモンスターにペシャンコにされて地面の染みになっていたかもしれない。
「で、お前はいつまでレオの腕の中に居るつもりなんだ? そのままハネムーンでもいくつもりか? ガハハハハ」
「えっ、ああっ!? ちょっとレオ、離して!! 今すぐ降ろして!!」
元の姿に戻ったヴィンチにからかい気味に言われて初めて、集団の目の前で今の自分の格好に気付いたモナ。
バシバシとウルの腕を叩くが、どうやら彼は降ろすつもりは無いらしい。
「おい、レオ。彼女が恥ずかしがってるだろうが」
「なんだ、ミケ。嫉妬か?」
「……お前は今日の主役なんだ。あんまり余計な噂が立つようなマネはよせ」
「良いじゃないか別に。……ん、そうだ。なんなら、この機会に俺とモナが結婚するとでも発表しようか?」
「き、貴様っ……!!」
モナが恥ずかしがっているうちに、気付けば挑発したウルと諫めたミケが一触即発の雰囲気に。
「はいはーい、二人ともそこまでー! 今日はせっかくの女神祭なんだよ? 主役のイケメン二人が殴り合いで顔面血だらけにでもなったらカッコがつかないぞー」
「リザの言う通りだぜ。まったく、タダ働きなのにコキ使われて疲れちまったぜ。おいミケ、あとで酒でも奢ってくれよ?」
さっさと祭りの続きを楽しもうぜ、と言わんばかりの二人にウルとミケの闘志も冷めていく。
ミケはフッと笑うと「ひとまず今回はキミにモナを譲るよ」とウルの耳元で囁く。
そして集まっていた守備隊の面々に向かって叫んだ。
「あぁ、そうだった。早く帰って父上に報告しなくては。もちろん、陛下にタダで飲み食いさせてくれるよう僕からもお願いしよう!」
「「「わぁあぁあああっ」」」
「よし、ではモンスターの素材回収と死骸の処理をさっさと行い、祭りに戻るぞ!」
「「「「おうっ!!」」」
王族のお墨付きでタダ飯が食えると分かり、大歓声を上げる一同。
きびきびとした統率の取れた行動で一斉に平原へと飛び出していった。
勝手に国の奢りにしてしまったが、モンスター素材の利益と王都の守護成功を鑑みればあの寛大な陛下だったら首を縦に振るだろう。
「そういえばレオは何処に行ってたんだよー? アタシたち、ずっと探してたんだよ?」
「まったくだぜ。お前のせいで俺が駆り出されちまったんだからな?」
先に他のメンバーを置いてスタスタと前を歩いていたウルに文句のような疑問が投げつけられた。
その質問に対してウルは一度立ち止まって首だけで振り返ると、涼しい笑顔で彼らにこう答えた。
「だってほら、ヒーローっていうのは遅れて助けに来るものだろう?」
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