第15話 二人旅のはじまり
ウルに黙って王子ミケと王都のカフェで会っていたモナ。何故かそこへウルがやってきたので不思議に思っていたのだが、どうやらモナの跡をつけていたようだ。
いったい何処から見ていたのか、思い出話から告白まで一部始終を見ていたらしい。
そしてモナの頬にミケがキスをしたのを見てしまってから、ウルの機嫌が非常に悪い。
ミケが帰って二人っきりになった瞬間、腕を引かれて家に連れ込まれてしまった。
「なに、どうしてアンタが嫉妬してるのよ」
「うるさいな、別にいいでしょ。それより、その頬。……綺麗にするよ」
「ひゃあっ!?」
綺麗にする、と言って何をするのかと思ったら、いきなり頬をペロリと舐められた。
まるで、ミケのキスを上書きするかのように。
「ちょっとなにするの!」
「だから綺麗にしてる」
「ちょっと、やめてよ……っ!!」
ウルのキスの嵐は頬だけに留まらない。
モナの肩を押さえたまま首筋、耳、肩へと……。
「んっ、そこはちがっ」
「いいじゃん、この数日はもっと凄いことしてたじゃん?」
「してなっ、いっ」
実際には他の誰にも、家族にさえも言えないようなことばかりをしていた。挿入こそまだしていないが、幾度となく互いを絶頂させてきた。
そもそも、そんなことをするためにモンスター狩りに出掛けたのではないのだが……なぜあんなことになってしまったのか。
モナはウルに触れられながらも、現実逃避をするかのようにこの一週間のことを追憶していた。
◇
「まずは何処へ向かうつもりなの、ウル」
モナとウルの二人は王都の門から移動用の“アロット”というモンスターに騎乗し、青々とした草花が生い茂る平和な高原を悠々と歩いていた。
このモンスターは馬に似た見た目をしているが、空気中の魔素や魔法使いが与える魔力を食べて生きるので殆どエサを必要としない。それに象の鼻ほども長い伸縮可能な尻尾を自由自在に操って戦闘をすることも出来る便利なモンスターである。
この世界でも貴重な生き物だが、勇者たちが旅をするために太っ腹なフレイ国王より下賜された。旅が終わった後も使っていいとのことだったので、今回もこの相棒を連れてモンスター狩りに出たのだ。
「そうだな……まずは最寄りの隣の街から王都を中心に右回りで回ろうとしようか」
「随分と適当ね……特に目的はないの?」
ウルは契約が終わる前に新しい身体を手に入れると言っていた。
もちろん魔力の暴走を抑えるために、適度に魔法を放つ必要もあるのだが。
「いや、必要な素材はこの辺りにもある一般的なものなんだ。モンスターの一部の他にも自生している植物や岩石といったね」
「へぇ。そうなの? もっと何か特殊なアイテムが必要なのかと思ったわ」
ウルは新しい身体と言っていたので、てっきり人体を生成でもするのかと思っていたモナ。
しかしその辺のアイテムといえば簡単なポーション類ぐらいしか作れないはずなのだが……。
「じゃあその街に行って、なにか困りごとが無いか聞きつつモンスターを狩り尽くすわよ!」
「最初は乗り気じゃなかったのに随分やる気満々じゃないか」
「モンスター狩りは民の為になるからね。それに……」
「それに?」
「ご当地の美味しいものを食べに回るわよ!」
「……うん」
実は勇者メンバーの誰よりも食い意地が張っているモナなのであった。
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