七人のヒロインはファンタジーゲームの職業を使って世界を救います
水無月 深夜
ギャルゲーのヒロインは突然として現れる
ギャルゲーはヒロインは戦わない。それもそのはずなぜなら恋愛シュミレーションゲームだからだ。
しかしそんなヒロインが戦うとなったらどうだろうか。誰もギャルゲーヒロインが戦ってはいけないという制約はない。
それは突然の事だった。深夜にコンビニに向かう青年。そんな青年が住宅街を歩いているとゴミ置き場で何かを漁っている人物を見かける。
ホームレスか何かだろうと素通りしようとした時、その人物が青年の方を向く、その時街灯によって照らされた正体、そのホームレスはただのホームレスではなかった。額から角が生えて顔の半分皮膚がただれて人間とは到底思えないゾンビらしき者がそこに居た。さらにゴミ置き場を漁っていたのではなくそこにはスーツ姿で血だらけで息絶えたサラリーマンの内蔵を喰っていたのだ。
青年はあまりの衝撃に腰が抜けその場に尻もちを着く、大声を出そうとしたがあまりの衝撃に声が出なかった。そのゾンビらしき生き物ゆっくりと青年に近付いてくる。食われると思った瞬間、突然ゾンビらしき生き物が横から蹴り飛ばされた。
颯爽と現れた人物、青年は唖然とするがその人物は振り返り笑顔を見せる。
「――お待たせ勇人君。安心して勇人君は私が守るっ!」
現れた人物は赤いマントに鎧を身に纏ったファンタジーでよく見る騎士のような格好をした青年と歳が同じくらいの少女だった。
青年は一体何が起きたのか分からず唖然とするがそれ以上に驚いたのはその少女とは初対面のはずなのに名前を呼ばれたことだった。
「な、なんで俺の名前を知ってる?」
青年の名前は
「私だよ勇人君。私『プロメモ』の
少女が発した言葉、プロメモ。正式名称は『Problem・Memories』。恋愛シュミレーションゲーム。いわゆるギャルゲーで様々な性格の登場人物がいてそれぞれを攻略してくのが醍醐味である恋愛シュミレーションゲーム、そして今勇人の目の前にいるのはそのプレメモの登場人物である神凪 美雨。
だがここは現実世界、ゲームの登場人物なんているはずがない、コスプレかと思うが初対面である少女が突然その登場人物の名前を名乗って勇人の名前を知っていることが不思議だった。
本物か確かめる前に少女が蹴り飛ばしたゾンビらしき生き物が立ち上がると急に走り出して襲いかかってくる。
「種族ゾンビだけあるね、じゃあこれはどうかしら」
少女は何か小声で呟くと少女の手から杖が召喚され同時に少女の服が鎧から黒いローブに変わる。
「――ファイヤ!」
そう唱えると杖から火球が飛び出てゾンビらしき人に当たりゾンビらしき人はその場で悶えるように動き回ったのち灰となって消えた。それを見届けると少女の服装はローブからプロメモに出て来る制服姿に変わる。
「勇人君。怪我はない?」
「…………」
「勇人君?」
「……あ、ああ大丈夫……一応確認したいんだけど本当に神凪 美雨ちゃんなの?」
「そうだよ。ただこれには説明が必要だよね」
「出来ればお願いしたい」
「うん。任せて」
少女、神凪 美雨は笑う、その笑みは天使のような笑みで誰もが見惚れる笑顔だった。
その後、勇人は美雨を連れて家に帰る。
「ただいま〜……」
先に家に入ってリビングを確認する、リビングでは勇人の両親がテレビを見ていた、勇人はそれを確認すると美雨を先に二階に行くように誘導する。
「あら勇人帰っていたの?」
「んっ!ああうん」
「そういえばさっき勇人の部屋で物音したけど何か置いてあった?」
「そうなの?知らない、幽霊か何かじゃない」
「怖いこと言わないで」
「じゃあ俺は部屋に行くわ」
「そう、おやすみ」
「おやすみ」
勇人は急いで自分の部屋に入ると行儀良く正座して待っていた美雨。
「えっと〜とりあえず君が本物の神凪 美雨であるか証明出来る?」
「はい。私の名前は神凪 美雨。獅子王城学園に通う二年生で血液型はA型、誕生日は6月6日。成績優秀で容姿端麗と性格も良し、全男子生徒憧れの女子生徒です。……とこれでいいですか?」
「うん……合ってる合ってるんだけど……」
勇人は棚にある『プロメモ』のパッケージに入ってる取扱説明書の中に登場人物のプロフィールを確認すると少女が言ってることは一字一句間違いはない。だがこれだけでは証拠にはならない。
そう思った勇人だがそれも見越していたのか美雨は立ち上がり机の上にあったパソコンを勝手に起動させる。
「お、おい……」
「パスワードは知ってます。そして男の子特有の秘蔵フォルダの保存先も、しかし今は『プレメモ』を起動します」
慣れた様子で教えたことの無いパスワードを簡単に解除させ『プロメモ』のアイコンをダブルクリックして起動させようとした瞬間、ブラックアウトして画面中央にウインドが表示される。
「『現在プレメモ内の登場人物はいません。よって起動は不可能です』……なんだこれ?」
初めて見る表示に眉間にしわを寄せる勇人。
「この表示の通りです。今のプロメモ内には登場人物は誰もいないんです」
「えっ?じゃあもしかして神凪 美雨ちゃんみたいに今全員この現実にいるってこと?」
「はい。それと私の事はいつもみたいに美雨でいいですよ」
「あ、ああうん。じゃあ本当に本物の美雨ということでいいのかな?」
「はい!」
未だに信じることが出来ない勇人だがパソコンのパスワードからプロメモの知らない表示に何度も見る美雨の顔は例えコスプレだとしても完成度が高過ぎている、だが信じたとしても気掛かりな事があった。
「でも美雨はギャルゲーの登場人物だろ、あの時なんで鎧やらローブの他に杖から火を出せたんだ?……なんかどっかで見たことある服装だったんだけど〜」
「あっ!本題はそこです」
「本題?」
「はい、えっとたしかこの辺だったかな〜」
またもや棚を勝手に漁る美雨、そしてとあるゲームのパッケージを見つけ勇人に見せる。
「ブレイブファンタジーソード?これ俺が去年買ったゲームだけどこれがどうかしたの?」
「さっきも言いましたように私の着ていた鎧やローブなどの装備分かりませんか?」
「装備……あっ!このゲームで選ぶ職業か!」
「そうです!」
ブレイブファンタジーソード。それは異世界冒険ファンタジーゲーム。プレイヤーはあらゆる職業を使いこなして冒険するストーリー、多種多様な職業に加えて豊富な装備に技とそして敵も豊富でごく普通の盗賊相手から悪魔に天使と幅広くかなり人気の高いゲームで勇人もそれなりにやり込んでいた。
「しかしなんでこのゲームとプレメモ関係なくないか?」
異世界ファンタジーと恋愛シュミレーションゲーム。全くもって相容れない存在。しかし美雨は服装が変わってまで杖から火球を出すなんてプロメモにはない要素、それこそブレイブファンタジーソードの要素だった。
「ここからかなり重要な話になります、まず私達のプロメモである登場人物全員この現実世界にいます、そして最悪なことにこのブレイブファンタジーソードの敵も同時にこの現実世界に現れました」
「それってもしかしてさっきの?」
「はい。勇人君も知っての通り種族ゾンビ。火属性に弱い敵キャラです」
勇人がさっき出会ったのは紛れもない本物のゾンビでブレイブファンタジーソードの敵キャラだった。
「じゃあ、あの食べられた人は……」
「こちらの世界の人間でしょう。不幸なことにゾンビと出会ってしまった……」
悲しそうな顔をする美雨、それを見て勇人も言葉が出なくなる。偽物ではない本物、死を意味していた。
「で、でもなんでそんな事に?」
「原因は正直分かりません、ただ私から言えることは第一に『勇人君を守ること』、第二に『この世界から敵を全滅させること』。この二つは私がこの場に出てきた時に頭に流れてきた情報で同時にブレイブファンタジーソードのゲーム情報も流れて咄嗟に勇人君に身の危険があると知らされたので素早く登場したのが私が出てから勇人君と出会うまでの経緯です」
「ゲームの世界がこっちに出て来たなんて本当に信じ難いけど……美雨といいゾンビといい、信じられないとは言えないんだよな……そしたらさっさと警察か何かに連絡して一斉に敵を全滅させたらよくないかな?」
「不可能です」
「なんで?」
「最悪な事にこの世界の武器は通用しません、ブレイブファンタジーソードの職業によるスキルや攻撃しか倒すことが出来ないんです、そして敵はいつ出てくるか分からないんです」
「そんな、じゃあまたさっきみたいにいつ現れていつ被害が起きるか分からないってこと?」
「はい……すみません……」
「いやいや美雨が謝ることじゃないよ、じゃあ美雨だけで地道に倒していくしかないってこと?」
「いえ先程も言いましたようにプレメモの登場人物が全員この世界にいるので協力を……と思いましたがそういえば……」
「あっ……それはかなり難題かもしれないな色んな意味でヤバいかもな……」
プロメモの登場人物、それはタイトルにある通り『Problem』とは登場人物、攻略対象である女の子達が問題児であることだった。美雨を含めて登場人物は様々な問題を抱えた人物でそのこともあってかこの『Problem・Memories』自体が異質なギャルゲーであり好みが分かれる作品もあってかプレイしてる人は少ないゲームだった。
「まさかとは思うけどあの人も?」
「は、はい……私もあの人は苦手ですけどあの人は天才でもあるので職業を使いこなせれば最強の一角だとは思います」
プロメモの攻略対象でルート分岐があまりにも複雑過ぎて最難関と言われる登場人物がいた。美雨もその人に関わることが苦手でゲーム内でもその人と会う度に萎縮してあまり会話してるシーンを見た事がないため引きつった笑いを見せる。
「けどなぜ美雨だけここに?」
「それ私の口から言う必要あります?」
「ん?どうして?」
「勇人君のいじわる」
ただ聞いただけなのに先程まで答えてくれたのに今回は頬を膨らませて怒る美雨に不思議に思う勇人、しかしプロメモのパッケージを見て気付いた。
「あっ!!ごめん美雨!最初にクリアしたルートだったよね!もしかしてそれ?」
「もうもうあれだけ画面の前で好き好き言っていたのに目の前にしてから何も言わないじゃない!!」
「いやほらそれはコスプレの人だとてっきり……」
「もーーーー!今目の前にいる神凪 美雨は本物!ほら可愛いでしょ!」
「うん可愛い」
「ちょっと目を見て言って!」
「ちょっ、待って……本物だと分かったら恥ずかしさで……」
美雨は勇人が顔を逸らすのを強引に引っ張り直視させようとするが勇人は改めて本物の美雨を目の前にして恥ずかしさが出てきて顔を隠す。すると隣の部屋からドアが開く音が聞こえ廊下を歩く足音が怒りがこもったように重い足音が聞こえ勇人は急いで美雨を隠す。
「――――ちょっとお兄!もう夜中だよ、うるさ……い……何してるの?」
隣の部屋から勇人の妹である芹沢
勇人はギリギリ美雨をベッドの布団の中に隠して勇人自身はそれを隠すようにその前に座り本を読んでいた。
「いや別に読書中だが?」
「うーーん?なんか女の声が聞こえたけど……」
「ああいつものギャルゲーだよ、気にするな」
「キモい、なんか怪しいけどまあいっか……」
ゴミを見るような目で勇人を睨みつけたあと奏美は欠伸をして部屋に戻っていく。
「ふぅ……危ねぇ」
「さっきのは妹の奏美ちゃんですね。相変わらず可愛いですね」
布団の中から顔を出した美雨は微笑ましい笑顔をする。
「可愛い?アイツ俺がギャルゲーやってるだけですげぇ軽蔑してくるんだぜ」
「大抵の女の子はそんな反応ですよ」
「ギャルゲーのヒロインでもある美雨自身それ言って自分で傷つかないか?」
「大丈夫ですよ、私達はあくまでゲームの登場人物に過ぎませんから」
「…………」
勇人はその言葉に少しモヤッとしたが美雨は笑顔のままだったため何も言えずにいた。
「私このまま勇人君のベッドで寝ますね」
「は?いやちょっと待って」
「え?なんですかもしかして私が床に寝ろって言いたいのですか?」
「いや違うそうじゃなくて寝るの?」
「はい。寝ますよ、睡眠は大切なので」
「大切だけどそうじゃなくて……」
「あっ!もしかして私と一緒に寝たいのですか?そうなら早く言ってくださいよ、ほらどうぞ」
「うぐっ、それはたしかに美雨ならお断りしたくないが違う、そうじゃない……――美雨は……ってもう寝てるしマジか……」
悶えている間にいつの間にか静かな寝息を立て眠る美雨、起こそうとしたがさすがに止めて勇人は電気を消して勇人はパソコンの前にある椅子に座って眠った。
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