第10話 エレキテル到着〜



 とりあえず、列車の運行は再開。そのあとはなんの障害もなく正常に走り続けた。


 途中、何度か、もよりの駅で停まったけど、僕らは終着駅のエレキテルが目的地だ。


 エレキテルは王都シルバースターから約三時間。ボイクド国の東の端だ。その向こうは海をはさんで隣国ヒノクニ。

 僕はまだミルキー国とボイクド国しか行ったことないなぁ。ヒノクニ、どんな国だろ?


 さて、エレキテルの街はなかなかの都会だ。その名のとおり、電気を発明した人がこの街にいて、次々に新しいものが誕生しているという。汽車や蒸気船なんかも、この街で造られた。


 王都のヨーロッパ調の華やかな風情にくらべたら、駅舎も鋼鉄の建物で、なんだか機械的。機械と電飾の街だ。


「あなたがたのおかげで無事に戻ってくることができました。ほんとにありがとうございます。お菓子もご馳走になってしまって。お礼がしたいので、ぜひ、わが家を訪ねてくださいませね」


 カロリーネさんは屋敷の場所を告げると、アーベルとアガーテの手をひいて歩いていった。ちゃんと迎えの馬車が来てる。いいなぁ。お貴族さまは。


「じゃあ、僕らも行こうか。まずはギルドかなぁ。研究所の場所なんかも聞いてみたいしね」

「そうですね」


 話す僕らのよこを、あの足モゾモゾのおじさんが歩いていく。


 ん? なんか今の人、どっかで見たことあるような? どこでだったろう? 冴えない感じのアラフォーで、ガリガリにやせてるんだけど、見ようによってはイケメンと言えなくもない。


「あの人、前に会ったことない?」


 僕が聞いてみても、蘭さんもアンドーくんも首をかしげてる。

「さあ。僕は知りませんね」

「わも見たことないやなよ?」

「ふうん。そうなんだ?」


 変だな。僕だけが会った人なのかな?


 まあいいや。おじさんは通りすぎていったし、僕らは僕らで行動しよう。


 駅舎を出ると、大通りの前にミニスカポリスマンが十人ほど立っていた。

 ビックリ。なんだ、あれ? コスプレか? この世界には警察ないんだけどな。いるのは各都市の兵隊さんだ。


 うわっ、ミニスカポリスの集団がこっちに来る!

 と思ってたら、僕らのお出迎えだった。


「あなたがたが、さっき列車強盗を捕まえてくださったロランパーティーさまですね?」

「ほんとにありがとうございました!」

「エレキテルはあなたがたを歓迎いたします」

「こちらへどうぞ」


 わあっ、歓迎は嬉しいし、お姉さんたちのミニスカからのぞくふとももは、もっと嬉しいよ? でも警察にしょっぴいていかれるのは、なんかイヤ!


 とは言え、わらわらとかこまれて、しかたなく歩く。

 つれていかれたのは警察じゃなかった。ギルドだ。なんでか知らないけど、この街のギルドの職員さんたちは、みんなポリスマンの制服を着てる。


「なんだ。ギルドだった」

「かーくん。せっかくだから、見てまわりましょうよ。新しい街だから、変わった品物を売ってるかもしれませんよ?」

「そうだね。それにロラン。最近、ギルドに来てなかったんじゃない?」


 蘭さんは王子様だから、ヤドリギに占領されてた自国をたてなおすために尽力していたのだ。Sランク授与式には来たけど、称号の取得とか細かいことは放置してた。


 ギルドの受付で国境でのレッドドラゴンを倒したことや、四天王の一をやっつけた功績を報告しながら、蘭さんはクスクス笑ってる。


「どうしたの?」

「なんでもないです。ただね。次に僕の国にかーくんたちが来たら、きっとビックリしますよ」

「へえ。なんだろ?」


 僕は蘭さんの受付での用事がすむまで、となりの雑貨屋をのぞいていた。

 む? むむむ?

 やっぱりエレキテルだけ文明の進みかたがおかしい。見なれないアイテムがたくさん並んでる!

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