第8話 トレインジャック戦3



 あーあ、盗賊が仲間を呼んで、機関車からドタドタと男が三人走ってきた。さっき運転手をおどしに行ったメンバーだね。四人ずつにわかれてたから、今は一人だけ機関車に残ってるのか。


 テロップは告げる。



 盗賊が仲間を呼んだ。

 野生の山賊が現れた!

 野生の海賊が現れた!

 野生の村人が現れた!



 えっ? 村人? 村人って職業はないんですけど。つまり、ただのそのへんの人ってことだ。たしかに、いかにも見るからに弱そう。


「なんか、ツッコミどころがありすぎて、なんて言っていいのか」

「山賊とか海賊なんて職業もあるんですね。僕、初めて見ました」

「僕らが知ってる職業が全部じゃないってことだね」


 大盗賊というのは、まだパーティーの誰もなったことはない。ないけど、自分の職業管理パネルを見れば、なれるんだなぁって思ってはいた。でも、山賊海賊は知らなかった。


「ぽよちゃん、もう一回、聞き耳お願い」

「キュイ!」


 ぽよちゃんのお耳が動いて、山賊と海賊の得意技をのぞきみる。蘭さんがめざとく、それを見つけた。


「山賊。待ちぶせ、大岩ころがしですか。待ちぶせは先制攻撃率アップ。大岩ころがしは全体攻撃ですね。威力は通常攻撃の……えっ? 1.2倍? ちょっといい技ですねぇ」

「だね。ふつうは全体攻撃って威力がさがるもんね」


 海賊は大砲っていう、これも全体攻撃だ。ただ、ターゲットがランダムで四連続攻撃。威力は0.8倍。狙った相手を速攻で倒したいとき向きの技じゃないね。


「どっちも全体攻撃できるんだ。やっぱり、僕らももっと上級職いっぱい、おぼえないとね」

「そうですね」


 この世界に初めて来たときは、昔、僕が好きだったドラゴンをクエストするゲームに似てるなぁって思ったんだけど、じっくり冒険すると、どうも違う。ターン内で素早さの差異によって行動回数が加算される戦闘方式とか、職業の数も異様に多い。上級職の上にさらに最上級職とか、隠し職業なんかもあるみたいだ。


 それにあのゲームでは数値の上限が、レベル99、各ステータスは999だったはずだけど、僕のHPすでに1000超えてるもんな。


 てか、前に僕のスキルでズルしてマックスに近くした幸運数値は99998だ。つまり、万の位まで数値は伸びるってこと。それ、もう別のゲームだよね。もしかしたら、レベルも999くらいまで成長するんじゃないか?


 まだまだ、謎に満ちた世界だなぁ。


「とにかく、やっつけましょう」

「そうだね」


 新たに現れた敵のレベルは25から28。さっきの連中より強い。まあ、こっちは装備品がとにかく最終装備なみだから、相手のレベルが10や20上でも楽勝なんだけどね。ほぼ、強くてニューゲーム状態。


「全体攻撃連続されるとやっかいだから、僕、山賊と海賊、やっつけてもいい? ロラン」

「いいですよ。でも、あの村人は優しく素手で叩くくらいにしてあげないと、死なせちゃいますよ?」

「そうだね。気をつけないと」


 僕は足をふみふみして、さらに素早さをあげなから、村人を観察した。村人って言うか、どう見ても中坊なんだけどなぁ。十三、四歳。再会を約束して別れたナッツを思いだす。ナッツもあのくらいの年の少年だ。見るからに、わけありそう……。


「とにかく、やるよ」


 さっきから動きまわってるから、僕の素早さはすでにもとの値の五倍。500%だ。いつもながら、このブーツ反則技だよね。1000%まで重ねがけできるんだよ? ザコ敵相手なら僕一人で、たいてい終わる。


 走っていって、精霊王の剣(レプリカ)を山賊海賊の腹に叩きこむ。よろいがめりこむくらい衝撃があって、山と海の賊は仲よく倒れた。


「ヒイッ。やっぱり、バケモノだー!」

「あっ、もう仲間呼びはよしてください。いくら呼んでもムダですから。戦闘が長引くだけ」


 パシパシッと容赦なくムチをふるって、蘭さんが盗賊をしとめた。



 チャラララッチャッチャ〜

 村人Aは戦意消失した。

 戦闘に勝利した。経験値500と200円を得た。

 戦士は薬草を落とした。

 武闘家は薬草を落とした。

 盗賊は皮の帽子を落とした。

 大盗賊は秘宝の地図を落とした。

 山賊は山賊刀を落とした。

 海賊は海賊のヒゲを落とした。



 そんな感じにテロップが流れていく。ほんとは宝箱をいちいちあける説明なんかもあったんだけど、長いから割愛だ。


 僕のマックス1手前の幸運値のおかげで、ほとんどの敵がアイテムをドロップする。

 薬草や皮の帽子は今さらいらないんだけど、秘宝の地図ってのが、すごく気になる。

 なんだろ? それ。

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