第13話 この世界の秘密について


 これを読んで思ったこと。

 異世界とゲームの世界が混ざった世界みたいだなと感じたこと。

 そして幾ら好きな人を独り占めしたいからと言ってやっていい事と悪い事がある。その判別すらつかなくなり沢山の人の気持ちを考えず好き勝手するカルロスを許せないとも思った。もっと言うならば、マリアの気持ちは何処にあるのかと言う所だった。好きな人と一瞬にいたいと願うならまずは相手の気持ちを考える事から始めないといけない。しかし今のカルロスにはそれがなかった。ただ自分の欲求を叶える為に暴走しているだけとしか言えなかった。


「……こうゆう事だったのか」


 ユリアが立ち上がりこちらに向かって歩いてくる。


「カルロスの過去を知ってどうだった?」


「どうもこうもない。やっていい事と悪い事の判別が付いていない。これじゃマリアが救われない」


「そうね」


 ユリアが頷く。


「一つ聞いてもいい?」


「なにかしら?」


「これは誰が書いたんだ?」


 本を読んでいるうちにこれを書いた人物は全てを見ていたあるいは知っているのではないかと思った。それぐらいまでに具体的な内容が書かれていた。

 それに、文末に合ったカルロスのログデータから作成とは一体どうゆう事なんだろう。とても気になる。


「これは転生者や転移者がこの街に来た時に勝手に作られる本なの。だから誰も書いてないわ。転移者や転移者の記録帳と言った方がいいかもしれない。一応ここに来ることが出来る権限を持つのは大聖堂の主マリアとマリアに許可を得た人物だけなの。今の所その人物は私しかいないけどね」


 つまりは、ゲームで言う各ユーザー情報を記録し保管する為のユーザーアカウントデータのような物なのかもしれない。確かに他の世界にも干渉できるマリアの魔法をもってすればこれを作成できるかもしれない。なによりマリアの魔法の正体はこれで。異世界干渉などは表向きの魔法で本来は相手の記憶にも干渉できてそこから……他にも機能というか効果というかそう言ったものがあるのかもしれない。少なくともマリアはバカめが……じゃなくてこの世界では女神なのだから。


 それにこれを使えば復活魔法を習得した者を生き返らせるのに使ったり……え? 

 そもそも何でそんな物があるんだ?

 そもそも何でそんな大事な物がこんな所に保管されているんだ?

 蓮心の頭が違和感を覚えた。

 それにマリアとユリアしかここに来ることは出来ない……らしいが。


「この世界に蘇生魔法は存在するのか?」


「……えぇ。一応。ただしまだ誰も習得してないわ」


「そんなに難しいの?」


「うん。習得難易度Sランクだから」


 その言葉に納得した。

 たしかにSランクともなれば蓮心にとってはまだ未知の領域。

 あの隕石ですらAランク。

 となると、Sランクとはそれ一つで超現象を起こすレベルだと言うのだろうか。

 たしかに蘇生ができるとなればそれは超現象といっても過言ではないが。


「もしかして、ユリアも転生者? もしくは転移者?」


「えっ?」


 ユリアが驚いた顔をする。

 ユリアの目を見ると動揺して焦点が定まってない感じがした。


「何で……わかったの?」


 この世界は異世界でありながらゲームみたいに誰かの手によって作られた世界なのかもしれない。それならこれだけの膨大なデータを本として保管している事に説明がつく。そして本を自動生成し書き留めておく必要もある。でないと、万一の時にどのプレイヤーが何をしたか何て覚えておくことが不可能だからだ。逆を言えばそれさえあれば蘇生ができるとも言えるわけだが。そうなると今蘇生魔法を唯一使える可能性があるのはマリアになるってことか?


 急に頭が痛くなる。

 思わず手を使い、頭を抑える。


「ちょっと! だ、大丈夫!?」


 慌ててかけよってくれるユリア。


「どうしたの? 頭が痛いの?」


「うぅぅぅぅぅ」


 するとユリアがなにか魔法を使ったのか緑色の光が身体を包み込んだ。

 それは不思議と頭の痛みを取り払ってくれた。


「大丈夫? 一応これで大丈夫だとは思うんだけど……」


 心配そうに顔を覗き込んでくるユリア。


「う、うん。ありがとう」


「よかったぁー」


 胸に手を当て、一安心の顔を見せてくれるユリアに心臓がドキッとしてしまった。

 こんな美人さんがここまで心配してくれたことなんて生まれて一度もない。

 そのためかこの世界も中々悪くないと思ってしまった。

 どうせなら元の世界で出会いたかった。

 そうすれば毎日が幸せだったのかもしれない。


「それより少し別の本を読んでも?」


「えぇ。構わないわ」


 ――。


 ――――。


 ――――――――。


「それでカルロスに対抗する手段は見つかった?」


「いーや。全然見つからない……」


 首を横に振り否定する。


「ステータスが異常に高いだけでなく、スキルもかなり持っている。それに対して俺は防御最弱攻撃最強。その気になれば街を滅ぼす力はあっても誰か一人を倒す力は残念ながらない魔法剣士ですから」


 諦めが入った声では合ったが、現実を見てどうするかを考える。

 

『緊急任務:女神マリアを救え』が出たと言う事は、この状況を打破できるとマリア自身が確信しているもしくは期待しているからなのだろう。


 今までとは視点や考え方を変える。

 何が正解で何が不正解なのかを頭の中で考える。

 だけど答えがすぐに出てこない。

 こんな時こそあの大きな胸にダイブしたら頭がリフレッシュされて解決方法が浮かぶかもしれないのに……はぁ~。


 あーーーー。

 触りたい、触りたい、触りたい。

 揉みたい、揉みたい、揉みたい。

 イチャイチャしたい、イチャイチャしたい。


 ん?

 あれ?

 いかん、いかん。今は真面目にユリアのおっ――マリア救出とカルロスのおっ……じゃない! 

 ダメだ。

 頭の中がおっぱいで侵略され始めた。


「ねーユリア?」


「なにかしら?」


「彼氏いる?」


「え? いないけど?」


「なら好きな人は?」


「いないわよ?」


「なら触ってもいい?」


「なにを?」


「いえ……なんでもありません」


 まずい……。

 話しの話題を変えなくては……。

 ユリアの眼が不振がっている。


「ここに剣や魔法について書かれた本ってありますか?」


「えぇ。さっき通って来た所にあるわ。ん? なんで急に敬語?」


 ドキッ!?


「た、頼みがあるんだけどいいですか……じゃなくて、いい?」


「なに? 怪しいわね」


「後三時間。剣や魔法について書かれた本を読んでもいいですか? できれば怒らず付き合って欲しいんですが……」


「あー、そうゆうこと。別に構わないけど?」


「ありがとう」


 なんとか誤魔化せたみたいだ。

 ふぅー危なかった。

 お礼を言い早速中学校の教室程しか広さがない部屋を出て剣や魔法について書かれた本を探しに行く。今できる事そしてカルロスとの実力差を埋める方法それは知識だ。知識があれば『EX(エクストラ)固有スキル:模倣』を使い自分の物として消化し獲得出来る。それが今出来る唯一のこと。この世界がステータスと魔法を全ての基準(強さ)としているならば恐らく知識として正しく理解すればそれを獲得できると判断したのだ。


 あ~、何がとは言わないがたわわな果実を揉み揉みしたいよ~。


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