第4話 魔法創作

 

 アオイ達が裏世界に行って三月が経つ。

 今日も今日とて庭で日向ぼっこをするワシ。

 少し前まではこの日常が当たり前じゃったのじゃがのう。

 今ではふとした瞬間にあやつ達のことを考えてしまう。

 う~む・・・

 どうしたものかのう。

 ライグリ達やココン達の修行をして日々を過ごしておるが、あまりやり過ぎてもいかんからのう。

 奴等の身体が壊れてしまうでの。

 じゃが修行の甲斐もあって、あやつ等のレベルは100を越えたからな。

 チャコルに至ってはもう後少しで200に届く程じゃ。

 まあしかし、ここからが大変なのじゃがの。

 おそらく、チャコルとライグリ以外のやつ等がレベル300までいくのには後100年は必要じゃろう。

 それだけレベル上げは大変なのじゃ。

 そうなってくると・・・

 ココン達が心配じゃな。

 老化遅延のスキルを持つチャコルと神の使徒になったライグリとルスカは数百年以上の時間があるが、ココン達にはそれがない。

 獣人族の寿命は120年ほど。

 このまま天寿を全うさせてやるか、それとも他の神の使徒になってもろうて寿命を延ばすか。

 ・・・

 後数年したら本人達に聞いてみるとしようかのう。

 どれ、まったりするとするか。

 ・・・

 ・・・

 アオイ達は大丈夫かのう。

 ・・・

 ・・・

 ああもう!

 モヤモヤするのう!

 ここ数日毎日これじゃ。

 一度考えて出してしまうと暫くはこんなに気持ちで過ごさなくてはならん。

 何も考えずにのんびりしたいのじゃがな。

 う~む・・・

 少しでもあちらの世界の情報が入ればのう。

 ・・・

 ・・・

 よし!

 ならばそういう魔法を作ればよいのじゃ!

 ワシのスキル『魔法創造』を使えばどうにかできるかもしれん。

 永いこと使っていなかったスキルじゃが、こういうときこそ使わんとな。

 どれ。

 早速作ってみるとするか。

 ・・・

 どういう魔法がいいかのう。

 やはり向こうの情報を知りたいとなれば、こちらで言うところのスキル『世界眼』と似たような効果を持つ魔法がいいか。

 となると・・・

 ふむ。

 今回は『ナイトメアシリーズ』ではなく『エビルシリーズ』にするかの。

 でなくては裏世界を覗き見ることはできんじゃろうからな。

 ワシは創作魔法を二つに分けておる。

 一つは、気軽に使える魔法のナイトメアシリーズ。

 もう一つは作れる数に制約を持たせたエビルシリーズじゃ。

 制約を持たせることで、強力な力を持つ魔法を産み出すことが出来るのじゃ。

 因みにエビルシリーズで作れる魔法は13まで。

 今あるのは7つじゃから後6つは作れるというわけじゃ。

 さて・・・

 早速作るとするかの。

 先ずは庭に魔法陣を描く。

 うむ。

 久し振りにしては良い出来じゃ。

 続いてワシの魔力の半分以上を陣に注ぎ込む。

 知っての通り、ワシの魔力は3000億に近い。

 その半分なのじゃから、それがどれほどのものかわかるじゃろ?

 エビルシリーズで使う魔力は大体1500億。

 ナイトメアシリーズで100億位じゃ。

 表、裏世界を含め、魔法を作るということは三大神とワシ以外誰にも出来んということじゃ。

 そんなこんなで魔力の注入は終わった。

 で、次は・・・

 どういう魔法にするかを魔石に刻まないとな。

 魔石も高純度でなければならない。

 でないと陣の魔力に耐えられず砕けてしまうからの。

 ワシは魔石に魔法の名前と効果を刻む。

 魔法名は『エビルズ・アイ』。

 そしてその効果は空間を裂き、裏世界を覗き見ることが出来るというものじゃ。

 効果時間は一回で10分。

 消費マジックポイントは100万位じゃ。

 マジックポイントは魔力に比例しておる為、ワシなら一日中見ていられる。

 しかし回数制限もしなければならない。

 制約が多いほど魔法創作の成功率が上がるからじゃ。

 つまり、失敗することもあるということ。

 失敗してしまっては折角の魔力も魔石も無駄になってしまうからの。

 魔力は1日休めば回復するが、魔石には数に限りがある。

 魔石を作るにも長い年月がかかるからの。

 ワシが今持っている魔石は後二個ほど。

 無駄には出来んのじゃ。

 ということで回数制限は・・・

 1日3回にするか。

 せめて朝昼晩の状況を見てみたいからな。

 よし。

 では始めるか。

 ワシは魔石を持ち、魔法陣の中心に立つ。

 そして魔石に魔力を込め、魔法陣の魔力と同調させた。

 すると魔法陣は白い光を放つ。

 魔力に反応して発光しておるのじゃ。

 何とも幻想的な光景じゃろうか。

 第三者が見れば、ワシを神だと勘違いして崇めてくるかもしれんな。

 まあそういうのが厄介じゃから人前ではやらんようにしておるがの。

 程なくして魔法陣の魔力が一気に魔石に流れ始め、そしてワシの体内を巡っていく。

 魂に魔法が刻まれていくこの感覚。

 久し振りじゃのう。

 魔法陣の魔力、魔石の魔力がワシの元へ戻ってくる。

 消費した分が戻った訳ではないが、その代わり魔法という新たな力となってワシに帰ってきたのじゃ。

 つまり・・・

 成功じゃ。

 ・・・

 フゥ・・・

 気付けば白い光もなくなっておる。

 これでワシは『エビルズ・アイ』が使えるようになったのじゃ。

 ・・・

 少し疲れたの。

 少し休んでから早速使ってみるとしよう。


 ・・・


 ・・・


 昼食を摂った後、ワシは『エビルズ・アイ』を使った。

 さて、裏世界の状況はどうなっておるかのう。

 ・・・

 う~む・・・

 相変わらず殺風景じゃのう。

 上空に視点をおいておるワシは溜め息をついた。

 国という国は存在しておるが、活気がない。

 しかしそれも相まってか、いざこざも無さそうじゃがな。

 表世界のようにやれ戦争だ、やれ侵略だ等という考えを持つ血気盛んな王族はおらんようじゃ。

 それはそれでよいのじゃが、魔物や魔獣がそこかしこに当たり前のようにおるぞ。

 しかも高レベルじゃな。

 裏の住人達はよくこれで生活しておるものじゃ。

 まあそれはいいとして・・・

 アオイ達を探すかの。

 ワシはエビルズ・アイからアオイの魔力を探した。

 ・・・

 ・・・おっ。

 おったぞ。

 裏世界の北西にある山で魔物と交戦しておるわ。

 うむ・・・

 あれは『ヘルズドラゴン』じゃな。

 レベルは・・・

 1211か。

 アオイ達なら何てことない相手じゃ。

 しかし・・・

 どうも動きがおかしい。

 いくらでも倒すチャンスはあるのにそうはしない。

 何じゃ?

 なぶっておるのか?

 いや・・・

 違うな・・・

 どうにも殺さないように闘っておるように見える。

 何か事情があるのかもしれんな。

 声が聞こえればよいのじゃが・・・

 う~む。

 困ったの。

 見れるようになったら今度は聞こえる効果の魔法も欲しくなってしまったぞ。

 ワシは欲深いのう。

 しかし、そんな限定的な魔法でエビルシリーズの枠を埋める訳にはいかんからな。

 今はアオイ達の状況を見れるだけで満足しておくとするか。

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