第24話
「おっ、似合うじゃないか」大井戸は、白いワンピースを着たレオを見て感想を口にした。彼女の見慣れた赤と黒のユニフォームとは雰囲気の違う姿を見て一郎も息を飲んだ。
「なんだか、足元が頼りないのですが……」言いながらレオはスカートの裾を指で摘まんで引き上げようとする。
「レオちゃん!駄目!!」南は顔を真っ赤にしながら慌ててレオの手を抑える。
「どうしたのですか?」レオは平然とした顔を見せる。
「女の子なんだから、そんなことしたらいけないのよ!……見えちゃうじゃないの」まるで自分の下着でも見られたかのようであった。
「そうなのですか」レオは学習したようだ。
「もう、いいかな……」大井戸は声をかけるタイミングを図っていたようであった。
「あっ、すいません」南は深々と陳謝した。
「確かに、その格好ならレオだって解らないかもしれないな」感心するように一郎はもう一度、レオの姿を見た。髪の色こそ真っ赤であるが、普通の女の子に見える。
「髪の毛の色もこれで……、バッチリ!」言いながら南はレオの頭に唾の大きな麦わら帽子を乗せた。白のワンピースと合わせて夏らしい雰囲気であった。
「こりゃ、見事なものだ!」大井戸は南のコーディネートに感心したようだ。レオはキョトンとした顔をしている。
「それじゃあ、行きましょう」南は嬉しそうに声をあげた。
三人は少し離れた街を探索する。この辺は被害も少なく商店も普通に営業を続けている。やはりセクターの侵略は日本の一郎達の住む街の辺りに限定されているようである。海外においてはまるで他人事のように取り扱われ、逆に宇宙人の逆鱗に触れるような事を日本人がしたのではないかと報道されているようである。そして、日本国内では、その元凶がエクスであるというのが、一部のコメンテーターの意見であった。
「わあ、この水着可愛い!レオちゃんに似合いそうよ」南は白いワンピースの水着を手にとった。
「これは、防御する場所が少なすぎて、私には無理です」レオは南が差し出した水着を見て眉を歪める。
「そう……、可愛いと思うんだけどな。一郎くんはどう思う?」急に振られて一郎は驚く。
「そ、そう……だな」なぜ、自分が女性物の水着売場にいるのか解らなかった。さすがにSPも売場の外に待機しているようであった。
「レオちゃん、一郎くんはこっちの方が好きなんだって」南は大人っぽい黒のビキニをレオに差し出した。
「おっおい!」一郎は顔を真っ赤にする。
「一郎は、こういうのが好きなのですか?」レオは、南から水着を受け取った。
「ばっ、そ、そんな……す、好きじゃ……」一郎の顔は更に紅潮した。
「そうですか」言いながら、レオはワンピースを脱ごうとする。
「ちょっと、レオちゃん何をするの?!」南は、慌ててレオを制止する。
「これを着れば一郎が喜ぶのでしょう?」レオは綺麗な白い肩を出して一郎を見た。
「いや、ここで脱ぐのは流石に……」手で顔を覆っているが、指の隙間から視線はレオに向けられていた。
「レオちゃん、着替えるなら試着室!一郎君はじっと見ない!」南はレオの背中を押して彼女を試着室に連れていく。
「はぁ……」一郎は深いため息を一つ吐き出した。
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