紅のエクス・フェアリス
上条 樹
第1話
月が雲に覆われた闇夜。
およそ人とは思えない物体が暗闇の中を駆け巡る。まるで何かを探しているように辺りを探っている様子である。
それは全身が黒く、蜘蛛を連想させるいで立ち。獲物を狩るかの如く数匹でコンビネーションを組み計算されたような動きで駆け抜けていく。
彼らから少し離れた場所を、赤い閃光が見える。
「本当にしつこいわね!」その言葉を発した少女は木の陰に体を隠して様子を探るように粗利を見回しながら、苦虫嚙み潰したように歯を食いしばる。
彼女は追手の動向を確認して、彼らの目から逃れるように、樹木の繁る道なき場所を駆け抜けていく。赤いスーツに身を纏い、長い白銀の髪に白く美しい肌。まるで暗闇の中を一陣の赤い光が駆け巡るように見える。
どこに逃げようともいずれその姿はすぐに見つかってしまうであろう。彼女は人間には到底無理と思われる跳躍力で走るというよりは宙を舞うかの如く木々の間を縦横無尽に移動していく。
「パートナーがいればこんな奴ら目でもないのに・・・・・・!」少女は吐き捨てるように呟いた。「あなた・・・・・・・、助けてくれないの?」まるで独り言のように少女は呟く。
「アナタハ能力ヲツカエル条件ヲミタシテイマセン」彼女の耳に飾られたイヤリングから声がする。
「ちっ!」少女は小さく舌打ちをした。その刹那、彼女の目の前に追手ではない物体が目の前に飛び込んできた。
少年は自転車に乗って、木々の間に唯一整備された道を帰宅していく。彼の家は、少し人里離れた場所に位置している。
彼は毎日、この道を自転車に乗って通学している。その所要時間は、およそ30分。道と言っても決して整備された物ではなく、所謂、徐利道であった。坂道もあり結構な運動量を毎日強いられていた。
「畜生、赤点取ったからって、こんな遅くまで補習しなくたっていいだろうが・・・・・・」彼は自転車のペダルを力いっぱい踏みしめる。空気が少ないのかタイヤからゴロゴロと振動が伝わってくる。もはやパンク寸前であることは明らかであった。
彼は、市内の高校に通う学生であった。どうやら成績は芳しくないようで、本日は補習で残されて帰宅が遅くなってしまったようである。腕時計の針は、午後9時を指していた。
「あっ!?」目の前に、赤い物体が突然飛び出して来た。彼はぶつからないようにブレーキを目いっぱいみぎり締める。しかし、砂利道では思うように自転車は止まってくれず体制を崩した状態でその物体にぶつかってしまった。その瞬間、体は慣性の法則に乗っ取って空中に放り出された。「うわー!!」地面に叩きつけられるかと思った瞬間、彼の体は優しく受け止められた。
「大丈夫ですか?」優しい少女の声がする。強く瞑っていた目をゆっくりと開くと目の前には、大きく宝石のように輝く瞳、高く筋の通った鼻筋、綺麗な白い頬、程よく赤く形の整った蕾のような唇、そして白銀の輝く長い髪、この世の物とは思えない未だかつて見た事の無いほど美しい少女の顔であった。大きな彼女の二つの膨らみが体に触れて少年は頬を真っ赤に染めた。どうやら、女性への免疫は皆無のようであった。
「あっ、いや、大丈夫・・・・・・・です」ゆっくりと呼吸を整えながら彼は立ち上がった。そして少し少女から距離を取った。
「良かったです」彼女は可愛い笑顔でほほ笑んだ。その顔を見てまるで天使のように見えた。
「あ、ありがとう」ドキドキする鼓動を気づかれないように、彼は胸に手を当てた。そして彼女の姿を見て少し驚いた。真っ赤な上半身、黒いズボンにブーツ。まるでライダースーツのような恰好。でも辺りにオートバイは見当たらなかった。
「・・・・・・・!」木々の中からなにやら理解出来ない言語の声が聞こえる。その瞬間少女の顔が凛々しく一変する。
「・・・・・・・・!」少女も同じような言語で応対する。
「・・・・・・・・・!・・・・・・・・!!」なにやら激しく怒っていいるようである。木々の中から、声の主が姿を現す。そして、その姿に少年は驚愕する。
「まさか!こ、昆虫!?」目の前に現れた、さきほどまで少女と会話していたのは、この昆虫のような姿をした音尾達であった。「もしかしてコスプレ・・・・・・・・。あっ、映画の撮影かなんか・・・・・・・・」どおりで、こんなに綺麗な女の子が、変わった格好で、こんな場所にいたのだと勝手に納得した。
「・・・・・・・・・!!」なにやら口論は続いているようであった。相手の口調は罵るかのように激しいものであった。
「・・・・・・・・」少女は唐突に深いため息をついた。相手の言葉を聞いて呆れているようであった。
「どうやら何を言っても無駄のようですね。そこのあなた、血液は何型ですか?」少女は振り返らずに口を開いた。少年の血液型を確認しているようであった。
「えっ!?」少年は少女の言葉の意味が全く理解出来なかった。しばらくしてから、自分の血液型を聞かれたのだと理解した。「O・・・・・・・、O型だけど」彼は自分の血液型を告げた。
「そうですか。私の名前はレオです。あなたの名前は?」なにか嬉しい事があったかのように振り返りながらレオは微笑えんだ。
「えっ、俺は、一郎・・・・・・・・、天野一郎」一郎は唐突に名前を聞かれて戸惑う。
「そうですか・・・・・・・、一郎。私のパートナーになってください」レオは一郎の手首を掴むとその体を引き寄せた。
「えっ!?」彼女は一郎の頬を両手で優しく抑えると、彼の唇に優しく自分の唇を重ねた。
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