「日本で有名 (Big in Japan)」(ドキュメンタリー)

「俺、いつかビッグになる男だから、今は充電中なんだよ。ビッグになるその日まで充電中なんだよ」


 そう思い続けて、数十年経ちました。



「日本で有名 (Big in Japan)」(2014 アメリカ 100分)

監督  デイビット・エリオット・ジョーンズ、 ラックラン・マクロード、 ルイス・ダイ


 ちょっと変わった方向性でのドキュメンタリー映画をご紹介。

 デイブという、ちょっと顔が個性的なオーストラリア人。

 この映画は普通の外国人である彼が、どうやったら、日本で有名人になれるかを様々な手段を使って実験するドキュメンタリーである。


 まず、デイブは日本の芸能事務所に入ってCMなどのエキストラをやったり、「おにぎりマン」と名乗り、おにぎりの被り物をしてふんどし姿でアレコレ挑戦する姿をYouTubeで配信したりと、様々な手段を使って有名になろうと奮闘。

 更にアドバイスをもらうため、実際に日本で有名になった外国人である格闘家のボブ・サップ、髭面で筋肉モリモリマッチョマンなのにゴスロリ服を着るレディビアード、アイドルとして活躍するオーストラリア人女性などにインタビューをする。



 日本人ですら日本で有名になるのは難しいというのに、「おにぎりマン」とか嘗めとんのか?と思いきや、どうやったら日本で有名になれるかを真剣に研究して実践しており、かなり見ごたえのあるドキュメンタリー映画になっている。

 ゲストのボブ・サップ、レディービアード、アイドルへのインタビューも、

 どうして、日本に来たのか?

 どうして、母国ではなく日本で有名になろうとしたのか?

 なにより、有名になった時のメリットとデメリットはなにか?

が、ちゃんとインタビューされており、これはかなり勉強になった。


 まず、上記の3名は母国では見向きもされなかった。

 しかし、日本では外国人というだけで珍しがり、そこにキャラクター性を持たせると一気に人気になる。

 ボブ・サップもそれで人気を得たが、同時に家から出たら、その「ボブ・サップ」という仮面を被り続けなければいけない苦悩を吐露した。

 また、アイドルは「彼氏を作ってはいけないのに、何故グラビア写真では水着になり、肌を露出させなくてはならないのかがわからない」と嘆いていたりと、よく考えたら、確かに変だと気づかされる点が多数あった。

 そして、意外だったのは、レディビアード。彼は母国で、イジメられていた過去を話した。今の女装キャラは、実はコンプレックスが根幹にあったのだ。


 ……とまあ、日本で活躍する外国人タレントのインタビューだけでも、かなり見応えありだが、デイブのおにぎりマンが日本でウケたかはどうかは割愛で……。



 日本で有名になるまでには当然、苦労はある。

 だが、有名になってからも仮面を被り続けなければならない苦労がある。

 こういった日本で活躍する外国人の苦労話が聞けただけでも、この映画は観る価値ありだと思いました。


 いろいろ挑戦してきたデイブだったが、最終的に日本を去る。

 そして、最後に、


「有名になるということは同時に、普通で居られる自由を失う」


と言い残したのが印象深い。

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