世界樹の樹木から誕生したウッドヒューマンは強くなりモンスター王国を建国する
MIZAWA
第1話 世界樹の樹木からジュレイ誕生
その日は沢山の星が輝いていた。
遥かロックライト山脈より高い場所に位置する巨大な樹木。
それは人類やモンスター達は世界樹の樹木と呼んだ。
星が1つまた1つと彗星のように流れていく。
まるで世界樹から誕生する1人の人物を祝福するかのようだ。
世界樹の樹木の上から下、つまり根っこの部分からそれは誕生した。
大きさは人間の赤子程度で、髪の毛は葉っぱのようにエメラルドグリーンをしており、衣服は体を覆う蔓などだ。
見るからに赤んぼうのそれは、ゆっくりと立ち上がった。
「ふむ、世界樹様も突然僕を生み出して、モンスター達を救えか」
その男。
「ジュレイ、それが僕の名前のようだ」
ジュレイと呼ぶ。
僕がこの世界に誕生したのは、いつかくる人間達による世界樹への侵攻だ。
それに際してモンスター達を殺すか奴隷にしようとしている。
なぜそこまで理解する事ができるか。
「世界樹とはこの惑星にあるすべての植物と繋がっている。人間達の策謀など見過ごすわけがない」
そういう事だ。人間達が世界樹を侵攻しようとしている事、その作戦会議の中身ですら、ジュレイは知っている。
しかし人間達はまだこちらに侵攻しない。
ということは。
「それまでに対抗策を練ろという事かな世界樹様はまったく、でもこうやって意識を持つことはなんと素晴らしい事か」
とはいえまだ赤ん坊の姿のジュレイは困り果てる。
いつの間にか目の前には巨大な狼がこちらを見ていた。
「ふむ、そなたは、ライガーウルフだな」
「はい、ジュレイ様、世界樹様よりお達しは受けております。わしが、ジュレイ様の命を守ります」
「ふむ、ライガーウルフよ、それは嬉しい事だ。だが成長してしまえば、僕はもっと強くなるぞ」
「そのためのわしでございます。わしのことはライとお呼びください」
「ではライよ、周りの景色をじかに見てみたい」
「承知いたしました。この背中にお乗りください」
「うむ」
ライと呼ばれるライガーウルフの大きさは普通のウルフより3倍くらいはしている。
これは馬車1台の大きさに匹敵するのだ。
僕はまだ赤ん坊の体をしている。
しかし不思議と体の節々を上手く操る事が出来る。
思いっきりジャンプするとライの背中にまたがる事に成功する。
ライは問答無用とばかりに地面を蹴った。
それから辺りの景色がぐるんぐるんと回っていく。
辺りの景色を細かく見る為には時間がかかったが。
数分くらいで慣れてしまった。
「ライよ、ゴブリンとオークの争いごとはまだ続いているのか」
「はい、あいつら、縄張り争いに忙しいんです」
「ふむ、ゴブリンとオークの争いを沈めてみるか」
「まだあなた様にはお早いかと」
「だが時間はないぞ、人間達がロックライト山脈を越えて世界樹を侵略する時間など」
「わかりました。今から向かいます」
「そうしてくれ」
「御意に」
それから沢山森の木々の横をかすめていった。
風がとても気持ち良かった。
世界樹の中にいては気づけない不思議な感覚だった。
これが精神世界ではなく肉体を持つという事なのだと理解してきた。
しばらくするとゴブリンとオークが喧嘩をしていた。
その真ん中にライガーウルフであるライが乱入した。
「おい、ライガー邪魔だてするな、そこのオークが俺の妻に手をだそうとしたんだぞ」
「だからちげーって、ゴブリンの女性にプレゼントしただけだぞ」
「それが色目つかってんだよ」
「だから、この前薬草で助けてくれたお礼をだな」
「るせー」
「てめーがうるせーぞ、ゴブリンよ」
「は、はいいい、てかガキかよ」
僕が冷たく言い放つと、ゴブリンの男は慌てて頭を下げたが、次の瞬間には頭を上げていた。
「あ、あなた様はもしかして」
「世界樹の木から生まれしジュレイだ」
するとそこにいたゴブリンとオーク達は頭を下げ始める。
全員が身動き取れない姿となった。
「ゴブリンとオークよ人間達の侵略がはじまろうとしている」
「「はい」」
「主たちの力が必要だ」
「はい、ぜひとも、このゴブリンを」
「ぜひとも、オークを」
「「んだとおおお」」
「だから黙れと言っている」
「「はいいいい」」
「ゴブリンとオークの仲が悪いのは昔からだ。それは致し方ない、だが今仲間同士で喧嘩をしている場合ではない、世界樹の周りの防備を固める。お主たちの力を貸してほしい」
「「はい、ぜひとも」」
「ゴブリンはざっと500人くらいでオークもざっと500人くらいだな、後で皆に稽古をしてやる。まずは世界樹の周辺に砦を気づく、ドワーフとエルフも探そう、彼らの力も必要だ。お前らは材料となる木材や石材をあつめてまいれ」
「「御意でございます」」
するとゴブリンとオーク達は一心不乱に乗り物である猪にまたがって世界樹の方角へと消えていった。
一斉に動くものだから1千人のゴブリンとオークの混合部隊となってしまった。
「ライよ、問題はドワーフとエルフだ。ドワーフはロックライト山脈の近くにいるし、エルフは海側の森にいる。お主ならどちらを先に相手したい」
「そうですね、どちらもダメです」
「ほう」
「せめてジュレイ様の体が赤ん坊サイズから子供サイズになってからです。それでは危険すぎます」
「そうだな、ちと世界樹の所に戻って栄養補給といこうか」
「そうしてくれるのが市場かと思われます、それに人間達が攻めてくるのは早いとはいえ、それはわしたちの概念です。時間にしてざっと数年は大丈夫なのですから、そこまで慌てずに」
「それもそうだな、ライおお主は色々と知恵が働くな」
「めっそうもございません」
「では世界樹の所に戻ろう」
「御意」
僕の世界樹を中心にした国造りはちゃくちゃくと始まろうとしていた。
今の僕ことジュレイの目標は赤ん坊サイズから子供サイズに成長する事だった。
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