29・赤信号で止まったから過失

 とある日、仕事帰りのこと。

 帰宅するために俺は自動車を運転していた。

 俺は安全運転を心がけているので、危険運転などせずに普通に運転していた。

 そして交差点で、信号機が赤になり、俺はブレーキを踏んで停止した。

 すると後ろから、



 キキィーッ! ドン!



 ブレーキの音と共に、俺は体に強い衝撃を受け、体が思いっ切り前のめりになったかと思うと、次にはシートベルトのおかげで止まり、しかしクビが後ろに戻った反動で、後頭部をシートに打ち付けた。

 俺は衝撃で意識がもうろうとしていたが、かろうじてブレーキは踏んだままだった。



 まあ、ようするに追突事故を起こされたわけである。



 まあ事故なのだから警察に通報しないわけにはいかない。

 保険とかの手続きにも、警察の取り調べ資料みたいな物が必要らしいし。

 で、警察を呼んだわけなんだが、お巡りさん様は明らかに俺に睨みを効かせていた。



「こういう時だけ頼るつもりか」



 なるほど。

 犯罪の常習犯扱いされている俺のことを知っているわけだなと思ったが、とりあえず手続きだけして貰えないかと、お願いした。



 そしてお巡りさん様は言いました。

「おまえの過失だ。赤信号で止まったから事故が起きたんだ。赤信号を無視していれば事故は起きなかった。おまえの責任だ」



 うん、この交通課のお巡りさん様、なに言っちゃってんの?

 あまりのことにポカンとしたけど、お巡りさん様はマジだった。

 ホントに赤信号を無視すれば、事故は起きなかったと思っている。

 だから赤信号を守って停止した俺が悪いといったのだ。

 マジで。



 さらに、追突してきたドライバーに、

「こんなやつに弁償しなくて良いぞ。俺がこいつに払わせてやる」

 俺が被害者なのに、過失者に弁償させるとまでいいだした。



 一応追突してきた人は、

「え? え? なにいってんですか? ちゃんと弁償しますよ」

 といってきた。

 常識的に考えてそれが正しいし、保険も下りるし、っていうかこのお巡りさん様が明らかにおかしい。



 でもお巡りさん様は俺に睨みを効かせていった。

「脅迫罪で捕まりたくなかったら、弁償させるな。おまえが弁償しろ」



 で、結局その事故の過失は俺にあるとして、警察では処理された。

 でも、追突してきた人はちゃんと弁償して、車は綺麗に直ったことだけが、不幸中の幸いだった。

 その弁償に関する話を、改めて追突した人と話をした時、その人は言った。


「あの警官、一体何だったんですか?」



 俺にも分からない。

 でも俺が遭遇したお巡りさん様なんて、みんなそんな感じだった。



 そんな感じ。

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