第3章第009話 レイコの周囲の情勢とか その1
第3章第009話 レイコの周囲の情勢とか その1
・Side:ローザリンテ・バルト・ネイルコード
正教国から、レイコちゃんへの照会依頼がうるさくなってきましたね。しかし、彼女の言っていた"自由を所望"という言質を盾にして拒否し続けています。
彼女自身はそれこそ自由に行動しているので、接触しようと思えば容易にできますが。ただ、宿屋で給仕とか市場とか街道工事とか、教会勢が想像もしないところにいるというだけです。
現状、王国からレイコちゃんには目立った護衛は付けていません。そもそも護衛が必要な弱さではないですしね。
ギルドやアイズン伯爵からはよく護衛を出してますが。まぁ純粋に案内と虫除け、それに彼女がもたらすものの確認が主な目的でしょうね。
目立たない護衛なら、セーバスの方からは直接監視を一人と、周囲警戒を二人だけ付けています。
護衛ということなら、むしろ彼女の周囲の人の方に必要でしょう。
彼女から人質を取ることは無謀の一言ですが。無謀と理解できない馬鹿は結構います。
怒ると怖いですよ彼女は。まぁあの子が町中でレイコ・バスターを放つことは無いと思いますが。彼女に敵対することがどういう事か…彼女の心労を考えると、そんなことにはなって欲しくはありませんが。
セーバスの部下からの報告が回ってきました。
クエッタ・シクジリ祭司ですか。レイコちゃんに護衛が付いていないことや、その日は街道工事に出かけている等、どこからは聞き及んだようで。郊外でなら邪魔も入らないだろうと思ったのか、のこのこ出かけていったそうです。
帝国の魔女の伝承のせいで黒髪を忌避する風潮はネイルコード国でも皆無ではありませんが。それでも市街に黒髪の人は皆無ではありませんし、海の向こうからも人も多く訪れるエイゼル市では、そこまで気にする人はいません。
…レイコちゃんを「黒髪のガキ」ですか。よくも言ってくれましたね。
まぁ貴奴が国元へ帰ることころには、正教国本部にも彼の言動が"嘘偽りもなくそのまま"広まっていることでしょう。来年もその体重を維持できると良いですね。
…実は、レイコ殿の周辺配置が薄いこととその日は街道工事に出かけることがクエッタに伝わるように手配したのは、私なのですが。
工事現場にも、セーバスの部下が入り込んでいます。
クエッタがやらかすことは当然前提ですが。現場でのレイコちゃんは、人足の方々にもえらく人気だそうで。もし彼女がトラブルに遭ったとしてもそれらの方々が加勢してくれるだろう事も織り込み済みです。
結果、成果は上々。正教国に対する大きなカードになりました。
あともう一つ、面白いことを言ってたそうで。
"ダーコラからも告発"
内容については現在調査中です。まぁ毎度の"根拠の無い言いがかり"であることは確かなので、逆に真意を探るのが難しいという馬鹿馬鹿しい状況なのですが。
レイコちゃんがこの国で地球国大使となっているのは、既に周辺国と正教国にも伝えています。その辺を無視した要求がどこまで通用すると思っているのやら。
まぁ警戒して置くに越したことはないでしょう。何をやらかすのか、いまいち測り得ないところがありますからね。
あと。セーバスが醤油なる物を手に入れてきてくれました。レイコちゃんの新奉納の調味料です。
海岸付近で取れる雑草の実を絞ったものとのことですが。どうもレイコちゃんの国では有名な調味料と同じ味だとか。
奉納は醤油だけで取ったようですが、醤油を使ったレシピが沢山報告されています。
肉じゃがもどきですか。なぜもどき?と思ったのですが、全く同じ材料ではないからとのことです。遙か彼方の地球とやらの野菜、こちらでも似ている物は結構あるそうですが、全く同じ物でも無いそうです。…レイコちゃんは、故郷の味が恋しいのでしょうか。
出汁と醤油で煮ただけのお芋と根菜がこんなに美味しくなるとは… 優しい味ですね。
醤油は、煮て良し、焼いて良し、かけてよしと、その万能性には王宮の料理長も驚いていましたが。美味しいからと何でもかんでにも使ってしまうと醤油味ばかりになるのが欠点とのことです。何事もメリハリが大切ですね。
カステラードと孫達は、唐揚げなる料理が気に入ったようですね。とくに鳥肉の唐揚げは大人気です。
試食と称して会議後の昼食会で出されたときには、カステラードが大皿をほとんど一人で食べてしまって。一つしか食べられなかったマラート内相がちょっと涙目になってました。
醤油は今後、エイゼル市の食品専門の商会で扱うそうで、来年からは専用の畑も作るとか。
今年はもうエイゼル市周辺の海岸で黒塩草を取り尽くしてしまったので、さら東西の海岸地帯に採取のキャラバンを仕立てているそうです。
醤油と唐揚げのレシピを貰ったマラート内相は、早速今夜にでも自宅の調理師に作らせるようですね。あまり食べ過ぎないようにしてくださいね、クエッタのようになられては困りますよ。
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