第1章第024話 毒殺未遂
第1章第024話 毒殺未遂
・Side:ツキシマ・レイコ
昼食休憩で、一悶着がありました。
タシニを出るときにいただいた焼き菓子で、私はアイズン伯爵らとお茶を戴くことになった…のですが。
護衛による毒味を済ませたあと、身分順で伯爵に譲られて私とレッドさんが先に戴く…のですが。レッドさんがお菓子をモグモグしながら、毎度の思念で警告を出しました。
"重金属化合物。蓄積型の毒"
「みなさん食べないでください!。毒です!」
私たちが食べたことで、他のメンバーも手に取ろうとしてたのを止めます。
「レッドさんが言っています。即効性では無いけど体に溜まるタイプの毒が入っています」
慌てたのは、毒味した護衛さん。すぐにその場から離れて吐きに行きました。
「レッドさんどれくらい強い毒なの?」
"これ全部なら十日ほど食べ続けると内臓不全で死亡"
伝わってきたイメージを、そのまま翻訳して皆に伝えます。
「すぐにバレないような毒ってことじゃな。姑息な。続けて食べないと聞かないってことは、今までも既に盛られておるのかの?」
私は、アイズン伯爵と合ってから昨晩の夕食とそのあとのお茶、それに朝食をいっしょにいただいているけど。レッドさん、どうでした?
"無問題"
そりゃそうよね。本当に入っていたら、さすがにすぐに教えてくれるよね。
「昨日から出されていたものには問題ないそうです」
となると、今朝お菓子をくれた人が最重要容疑者ではあるんだけど…
「タシニのあのパン屋か。さっそく手配をして確保を…」
ダンテ隊長が人を手配しようとするが。
「まて。あのパン屋はタシニの領館にもパンを納めているが、問題無かったのじゃろ?。あの夫人は、好き好んで毒を入れるようには見えん。脅されたか騙されたか、知られず混ぜられたかだろう」
ダンテ隊長が庇う。ニコニコしながら、焼き菓子とお弁当を渡して来た人の良さそうなおばさんを思い出した。
レッドさんは、同じところからもらったお弁当のサンドをかじっていた。こちらには毒は入っていないらしい。ただ、こちらも用心で、隊員達には食べるのを止めさせた。…もう既に食べきってしまった人もけっこう多いけど。レッドさんが大丈夫だと言っていると知らせると、ホッとしていた。
「この菓子は、まずわしに出されることを狙ってたってところじゃな。ダンテ隊長、どう差配すれば良い?」
「今すぐ、騎士をタシニに向かわせれば、毒がばれたと黒幕にも伝わるでしょう。毒を食べたかどうかの情報も向こうに渡すべきではありません。ただ、あのパン屋がそのまま無事かどうかも心配ですし、知らずにやったとするのなら、毒は回収すべきでしょう。どのみち事情は聞く必要がありますし。次のトクマクの街に着いてから定期伝令に混ぜて人を派遣して彼らを保護したほうがよろしいかと」
「多分、砂糖に混ぜられていたんでしょうね。高価なので普段使いするような材料ではありませんが、菓子には結構多く使われていました。伯爵にお渡しする特別なお菓子として使ったのではないかと」
吐いていた騎士が、口をゆすぎながら戻ってきた。実際に食べた味から毒の入っていた材料を推測する。
「なるほどな… ではダンテ隊長は、その差配で頼む」
「承知いたしました」
「…やっとたのは、バッセンベルか?、それとも正教国か?」
「即効性では毒味ですぐにバレますからね。搦め手の毒となると正教国あたりで作られた可能性が高いですが。この国と正教国は、親密とは言い難いですが、互いに交易で利益は出ているはずですし。アイズン伯爵を賦する利益は少ないでしょうね。バッセンベル領なら、嫌がらせにしかならないことでも喜んでするでしょうな」
裏で勢力争いがあるのは、どこの世界でも似たような物なのかしら。
アイズン伯爵とダンテ隊長の話を聞きながら、私とレッドさんは件の焼き菓子をポリポリ食べてます。毒の成分は無味だし、結構美味しいよっ!。
「レイコちゃんっ! なんで食べてるのっ!」
アイリさんが叫ぶ。
私たちには、毒は効かないですからね。砂糖が高いってのなら、捨てるのはもったいないよ。
残りもくれませんか? え、回収する? 残念です。
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