第8話 今年は忙しくなるぞ

後柏原天皇 京 京都御所 1522年 正月


今日は朝臣・幕臣を集め、直に言葉を伝える。


「本日をもって、幕府を廃する。今後は細川高国を従一位・太政大臣に任じ、室町第にて政を任せる事とする。励め。」


宣下を終え、高御座を下りてホッと一息つきながら紫宸殿を後にする。



北条菊寿丸 相模 小田原城 1522年 正月


「慧仁殿下よりお預かりした書状にございます。」


書状を兄の氏綱へと渡すと、兄はその場で内容を確認した。


「幕府を廃し、今後は高国が政を取り仕切る様です。」

「その様だな、高国は太政大臣に就任するそうだ。」

「朝廷は上手く考えましたね。見事に武家から幕府を取り上げました。」

「慧仁殿下は今年2歳だろ、この様な書状が書ける物なのか?誰かが後ろで糸を引いてるのでは?」

「書状は目の前で書かれはしませんでしたが、私との謁見の時は自分の言葉でお話ししていました。まさに神憑りでした。今後を考えると恐ろしく感じ、取るものもとりあえず兄様の元へ下った次第です。」

「なるほど、それ程の者か」

「北条の善政がお耳に入ったらしく、まずは北条へお声がけ下さったみたいです。」

「では、利用するだけ利用して、その後は知らぬ顔で・・・無理か。朝敵か。」

「いち早く上洛し陛下への臣従を誓えば、陛下からの覚えめでたく、他の大名に先んじる事となりましょう。」

「何が目的かの?」

「金山かと思われます。しかしながら、あれこれ詮索しても埒があきません。先ずは交渉役として私を上洛させて下さい。」

「いや、わしが自ら上洛しよう。得心すればその場で従臣を誓って来ようと思う。船で行く。先触れを出しておいてくれ。」


兄と細かい打ち合わせをして机に向かい筆をとった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る