自殺飽女は死を嫌う
ナガイエイト
第1話
都内某所にあるビルの屋上。そこで一人の少女、
「生きる価値も無い私は、早く死んでしまおう」
躊躇いなんてなかった。
当たり前のように、彼女は虚空に向かって歩きだした。
だが、彼女が踏み出したのは虚空、空中だ。魔法が使えるわけではないので、当たり前のように歩けるわけがない。
彼女は、落下した。当たり前だろう、この世界には自由落下運動というものがあるのだ。もしそれが無ければ、彼女は生きながらえていただろうが、しかし、残念ながらあるのだ。
それは、しかし彼女にとっては幸運と言ってよかった。
秋奈は迫り来る死に、一切の焦りもなく、呼吸を乱すこともせず、バイタルも正常通りだった。
いや、そんなものを感じる暇も、測る時間もなかった。
落下する寸前、路上を歩いていた少年と激突したことにも、秋奈は気付かなかった。
享年16年、篠右秋奈。
享年17年、
もし、ニュートンの上に人が降ってきていたら、世界の物理学はどうなっていただろうか。
果たしてそれは、きっと何も変わらなかった。
世界は、一人の喪失ではそうそう変わらない。変わるとすれば、
新たに一人誕生したときだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます