第26話 ばれた
北山高校鉄道研究会の部員たちが京都駅からのぞみ号に乗車する頃、出雲警察署では、昨夜寝台特急サンライズ出雲号で起きた殺人事件に関する取り調べが行われていた。
取り調べ室に入るとすぐ真田刑事は部下の刑事に「あれを持ってこい」と命じた。
数十秒後、ノックの音とともに、丸刈りの刑事と、サンライズ出雲号で乗車していた女性の鑑識の職員が入ってきた。
鑑識の職員は、白い手袋を両手に装着すると、ジップロックのような開け閉め可能なビニール袋からビデオカメラを取り出した。それは、間違いなくマッスルトレインさんが持っていたビデオカメラであった。
『ヤバイ』
僕は焦った。
そんな僕の様子を見て満足そうに頷いた真田刑事は、
「あの場面を再生しろ」
と鑑識の職員に指示した。
あの場面とは、もちろん僕とマッスルトレインさんが衝突したシーンだ。
もろに僕の顔が映り、マッスルトレインさんの僕を罵倒する声が取り調べ室に響く。僕の狼狽した表情が映し出されたところで、鑑識の職員は動画を停止した。
真田刑事はふんぞりかえると、勝ち誇ったように、
「さてと、これはどういうことなのか、しっかりと説明してもらおうか」
と僕に迫った。まるで勝負あったとでも言いたげな顔である。
僕は観念してYouTuberであることを認めた。
「実は、昨夜のサンライズの車内で動画を撮影していまして・・・」
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