第13話 刑事
僕は恐る恐るドアを開けた。そこにはスーツを来た細身の男が立っていた。目つきの鋭い男だった。ホテルマンのように短髪をきっちりと七三に分け、少し無精ひげを生やしていた。男は階段を1段下りた場所にいたが、僕と目線はほとんど変わらなかった。恐らく、身長は180センチを優に超えているはずだ。
「ちょっと訊きたいことがあります」
そう言うと男はスーツの上着の胸ポケットから黒い縦折りの手帳のような物を取り出した。男が開いた薄い革の物体の内側の上半分には、この男の上半身が映った写真が、そして、下半分には金と銀の紋章のようなものが付いていた。警察手帳だ。男は警察手帳を胸ポケットにしまいながら自己紹介した。
「岡山県警刑事課の真田です」
「な、な、な、な、何ですか?」
僕は緊張のあまり声が裏返ってしまった。刑事が眉間にしわを寄せて僕の顔を覗き込んだ。
僕は極度のあがり症だ。そのくせYouTuberになるなんて宣言したものだから、周りの反発は大きかった。しかし、僕の意志は固かった。だが、YouTube動画の撮影で警察に遭遇することになるとは、想定していなかった
男はスーツのズボンの後ろのポケットからペン付きの手帳を出すと、短く、細いペンを抜き取り、
「実はこのサンライズ出雲号で殺人事件が発生しました。任意ですが、いくつか教えていただきたいことがあります」
と言った。言葉は丁寧だが、相変わらず目つきが鋭い。断ると、ただでさえ良くない印象を悪化させてしまいそうなので、僕は頷いた。
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