第5話 東京駅で煽る
11時1分に京都駅を出発したのぞみ12号は、名古屋、新横浜、品川に停車し、定刻通り13時15分に終着の東京駅に到着した。わずか2時間14分で513kmを走破したことになる。
のぞみを降りた僕は、父親に土下座して買ってもらった小型のビデオカメラをリュックから取り出し、14番ホームから23番ホームを発着する様々な新幹線の撮影を開始した。僕が暮らす京都では基本的に東海道新幹線のN700系しか見ることができないが、東京駅では、他にも東北・北海道新幹線、上越新幹線、そして、北陸新幹線で運用されているバラエティー豊かな車両が慌ただしく現われては去っていく。東京駅には何度も来たことがあるが、E5系、E 6系、E7系等が目の前に登場する度に興奮し、いまだに鼻息が荒くなってしまう。僕は左手でカメラを構えながら右手でポケットからスマートフォンを引き抜くとスマホでも動画の撮影を始めた。そして、E5系とE 6系の最速コンビの入線シーンを撮影すると、すぐにメッセージアプリで鉄道研究会の連中と共有してみた。所謂、煽りだ。案の定、次々に僕を羨ましがるメッセージや怒りのメッセージが投稿されていく。
田代:おい、マジか!エグっ!!
沢村:貴様は天国にいるのか?!
酒井:羨まし-!!!
木村:グランクラスに乗りてぃ!
齊藤:FXXX YOU!!
当然部長のアリサも反応している。
アリサ様:自慢してんじゃねーぞ!草!!!おい、モー、今夜11時かライブ配信しやがれ!鉄道研究会のメンバーは全員参加だぞ!久しぶりに、深夜鉄道語り茶会の開催だ!
僕は鉄道研究会の面々を煽ったことを早速後悔した。そして、アリサのメッセージが気になった。『アリサよ・・・ライブ配信は、登録者がある程度増えてからやるもんだろ・・・いつものメンバーしか集まらないんだから、わざわざYouTubeで配信する必要ないよ・・・』
鉄道語り茶会とは、その名の通り、鉄道研究会のメンバーが鉄道を語り合う鉄道研究会の恒例イベントである。茶会というところが京都らしいが、普段の活動と基本的に変わらないのだ。僕は溜息をつくと、撮影を中止し、近くの自動販売機でペットボトルのお茶を購入した。
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