一番の友達


 本を読む時、テレビを見る時、夜花は傍に黒猫のぬいぐるみを置いていた。つい先日、五歳の誕生日にと、祖母が贈ってくれたものだ。

 小さな夜花の身体では、両手で抱えるのがやっとなほどに、その黒猫はとても大きく、見た目の可愛らしさはもちろん、肌触りも良く弾力性もあり、その上大好きな祖母から贈られたとあって、抱き締めたその瞬間から、黒猫は夜花の一番のお気に入りになった。

 家の外には絶対に出さない。

 母との約束を夜花は守る。前のお気に入りをこっそり外に持ち出して、修復不可能なまでに壊されたことがあるから。祖母の家にだって見せに行かない。

 家で大人しくする時に、一人が淋しい時に、黒猫の柔らかな温もりにすがるのだった。

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