第90話【リノのお礼とロギスの告白】
「――本当にありがとうございました。
このご恩は一生忘れません。
何か私に手伝える事があれば何でも言ってください」
思い切り嬉し涙を流したリノは僕の前に立ち深々とお辞儀をしながらお礼を言った。
「うん。治療が上手くいって本当に良かった。
でも、この治療はここにいる皆の力で成し遂げた事だから僕だけじゃなくその事も憶えておいてね」
僕はそう言うと周りの皆を見た。
「ナナリーは君を心配して僕の治療を受けるように薦めたし、アーリー様は偶然だけどロギスさんを連れてきてくれたし、ロギスさんは君の事を心配して化粧を落として診察を受けるように説得してくれた。
リリスは僕のサポートとして君のケアを受け持ってくれたし、何より君自身が過去のコンプレックスに打ち勝つために僕の治療を受ける決心をしてくれた」
「はい、それは十分に理解しています。
皆さん本当にありがとうございました」
リノの言葉にロギスがソファから立ち上がりリノの前に立ち彼女に言った。
「やはり、君は十分に可愛いと思う。
接客業だから化粧は必要だと言う者も居るかと思うが、君は今の素のままでいるほうが健康的で魅力的だと思う。
今まで力になってやれなかった俺がこんな事を言うのはおかしいかも知れないが、君の側で力になりたいと思う気持ちが溢れてきている。
もし、良ければだが俺と付き合ってくれないか?」
「「「ええっ!?」」」
ロギスの告白にその場にいた3人の声がハモった。
「そんな……私なんかがロギスさんとなんて……」
リノが戸惑いながらもそう呟く。
「ロギスさんがリノさんに……。
意外とお似合いなのかもしれないのか?」
僕がふたりを見比べながら呟く。
「そんな……ロギスさんはナナリーさんとくっつけてナオキから完全に身を引いて貰う私の完璧な計画がぁ……」
皆に聞こえないように本当に小さな声で呟いたリリスはハッと手で口を塞いた。
「リノ。どうするかは自分で決めなきゃ駄目ですよ。
あなたはもうコンプレックスに押しつぶされそうになっていたあなたじゃないのだから……」
当のナナリーはリリスの思惑など知る由もないのでリノの背中をグイグイと押してやる。
「えっと……。
まだ、よく考えられないのだけどロギスさんが顔に似合わず優しい方だと言うことは十分承知しています。
でも、この場でお返事をする事は申し訳ありませんが出来そうもありません。
一週間……いえ、3日ほど考える時間を頂けたらと思います」
リノはロギスにそう言うと深々とお辞儀をしたがその顔は真っ赤になっていたのを僕は見逃さなかった。
「――皆さん今日はありがとうございました。
おかげで今日もいい夢が見られそうです。
また、情報がありましたら連絡をお願いします。
お連れ様でした」
あの後、顔を赤く染めたリノは再度深々とお辞儀をしてから早く家族に治療が上手くいった報告をしたいと言い足早に家路についた。
僕はナナリー達に労いの言葉をかけるとリリスと共に拠点の宿へと向かった。
その道中ではリノとロギスの事を話すリリスが大変だった。
「ロギスさん、リノさんの食堂の常連だと言ってましたよね。
あんな顔してずっとリノさんの事を狙ってたんですかね?
で、今回彼女の治療が上手くいって魅力的になったから告白したのかしら?」
「さあ、どうだろうね?
ただ、彼のリノさんを見る目は治療前も治療後も変わってないように僕には見えたから治療が上手く行ったから告白したとは僕は思わないし、元から彼女に気があったと思うよ。
ただ、彼自身も言ってたけど彼女が抱えているコンプレックスを癒やしてやれなかった事で二の足を踏んでいた可能性は十分にあるかもしれないけどね」
「それって、やっぱり治療が上手くいったから告白した事にならない?」
「うーん。そうなのかな?
まあ、どちらにしても僕達がどうこう言える問題じゃあないのだから静観してあげるのが正解だと思うよ」
「そうね。ちょっと惜しいけどそうするしかないわね」
「惜しい……? 何がだい?」
僕の言葉にリリスは慌てて「何でもないわ」と答えて急に別の話題に切り替えた。
「さあて依頼料も貰ったし、ちょっと美味しいものでも食べに行かない?」
あからさまなリリスの態度だったが僕は気がつかないふりをして彼女のフリに乗って「いいね、行ってみようか」と返した。
一方、ナナリーは皆が帰った後でロギスがリノに言ったセリフを思い返していた。
ナナリーはリノと同じ年の自分もまだ化粧は必要ないと思い始めており、さらにリノの肌が綺麗になったのを見ていい事を思いついていた。
(前に治療を受けた時はアザが消えた事に気をとられて気がつかなかったけど、やっぱりナオキ様の治癒魔法には女性の肌を再生してくれる力があるのが証明されましたわね。
3歳も上のリリスさんの肌があれだけ瑞々しいのは絶対にナオキ様に定期的に治癒魔法を施して貰っているからに違いないですわ。
次にお会いしたら化粧を止める代わりに治癒魔法をかけてくださいと言ってみようかしら……)
ナナリーは鏡の前に立って肌の状態を確認しながらそう考えたが、ふと治療の方法を思い浮かべて手を頬にあてながら一人で恥ずかしがっていた。
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