クリスマス①
俺たち受験生にとって、クリスマスなんて縁のないもの。
とは言え。
いーじゃねーか、たった2時間くらいなら!
息抜きだって、必要だし。
だいたい、頭のいい奴ってのは、気分転換だって上手にしてるもんだ。
てな訳で。
藤沢、夏川、悠木、俺のいつもの四人で、クリスマス当日の昼間に2時間限定でクリパをすることになった。
なぜイブじゃないかって?
それは、イブが、悠木の仕事のラストだったから。
終わりも遅くなると言ってたし、悠木がいないとこのクリパの意味が無い。
クリパってのは、実は口実で。
本当は、これは『悠木の夏川への告白』イベントなのだから。
クリパの会場は、もちろん俺の家。
俺の家以外でこのイベントを実行できる場所なんて、他には無い。
夏川は最後まで『カラオケ行こうよー!偶には思いっきり歌いたいよー!大声出したいよー!』なんて言ってたけど、安心しろ。
カラオケなんて行かなくても、お前、絶対大声出すから。
よって、食い物は全て持ち寄り。
藤沢は、チキン担当。
夏川は、ケーキ担当。
俺は、悠木のリクエストで、稲荷寿司担当。
足りなかったら、ピザでも頼めばいいだろうと、話はまとまった。
時間通りに俺の家に集合したのは、悠木を除く2人。
夏川が、不思議そうな顔をして俺に聞く。
「あれ?悠木は?」
悠木には、こちらの準備が全て整った頃に来るように伝えてあった。
真昼間にルイ姿で近所を歩かせる訳にも行かないから、真菜さんに協力を仰いで、車で家まで連れてきてもらう手筈になっている。
「あー、もうすぐ来ると思うぞ。その前に、セッティングしちまおうぜ」
と、藤沢。
藤沢、ナイスフォロー!
何事もキッチリしている性格の悠木を知っているせいか、夏川は納得していない様子ではあったが、それでも藤沢に言われたとおり、食い物やら食器やらのセッティングをし始める。
なんとなく、一応のセッティングが終わった頃。
予定通り、玄関のチャイムが鳴った。
「悪い、夏川。きっと悠木だ。出てくれないか?」
事前の打ち合わせ通り、藤沢と俺は用も無いのにキッチンに立ち、椅子に腰かけて悠木の到着を待っていた夏川に、玄関に悠木を出迎えに行かせる。
「うん、OK」
何の疑いも無く、夏川は玄関へ向かう。
俺は藤沢とアイコンタクトを交わした後、そっとその後を追った。
「遅かったじゃん、悠木・・・・えっ」
ドアを開けた夏川は、その場で固まっていた。
ドアの向こうには、ルイの姿。
「お待たせ、亜由実ちゃん。遅くなって、ごめんね?」
まるで王子様のような気品漂う笑顔を浮かべ、ルイが夏川に軽く頭を下げる。
「えっ・・・・え、えっ・・・・どーゆーことっ?!なんでっ、なんでルイがっ?!」
「中に入っても、いいかな?」
「あ・・・・はい、え、っと・・・・」
慌てた様子で、夏川が振り返る。
もちろん、すぐそこに、藤沢も俺も控えている。
成り行きを、見守る為に。そして、多少のサポートの為に。
助けを求めるような夏川の目に、藤沢も俺も大きく頷いた。
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