第31話 共闘

 街を歩く人々は、どこか早歩き。

 寒さから逃れるように、急いで移動していた。

 駅前の広場で、ヒサノリとミズチが出会う。まったくの偶然だった。

「言葉はいらぬだろう」

「ああ。そうだな」

 お互いに、カードを右手で持ち、構えた。それを、通行人の何人かが怪訝けげんそうな表情で見ている。

「ゆけ。カンサ・セプテン!」

「カンサ・フェブ!」

 カンサが呼ばれたことで、イマジン空間が開いていく。

 長く開きすぎるとマモノが現れてしまう、恐ろしい空間。それでも、バトルロイヤルで勝つためには開かざるを得ない。戦わざるを得ないのだ。

 願いを叶えるために。

 紫色になる周りの景色。その中で、カンサ使いとカンサだけが元の色を保っている。

 黒い服の男性は、フェブを操り縦斬りを仕掛けた。

 灰色のスーツの男性は、セプテンを操り大剣でガードした。

「むっ」

「くっ」

「なかなかやるようだ」

「貴様もな」

 その言葉に反応して、スーツ姿の男性が眉間にシワを寄せた。すぐに反論する。

「異議あり。貴様ではない。勇伊ゆういヒサノリだ」

「オレは、楠堂くすどうミズチ」

 戦いながら自己紹介する二人。そのあいだも、決して手は緩めない。

 建物が縦に斬られた。つづいて、大剣によって斜めに切られる建物。道路標識も、いつの間にか壊されている。

 互角。

 剣と大剣の違いこそあれ、お互いに自分の間合いをきっちり把握している。一気に接近するフェブと、ある程度の距離をとって戦うセプテン。

 一進一退いっしんいったいの攻防が続く。

「またか。ミズチ」

 と、そこに、公園方面から色の変わっていない人物がやってきた。

 アラタだ。

「戦いをめてやる。カンサ・ジャニュ!」

 ジャニュを召喚して、戦いに加わるアラタ。

「たしか、アラタといったか。何をしている」

「おれは、兜山かぶとやまアラタ。戦いをめるって言ってるだろ!」

 ヒサノリの問いに、剣をもって返したアラタ。フェブを、セプテンの一撃から救った。

「余計なことを」

 ミズチに邪険じゃけんにされても、アラタはミズチに、フェブ側に加勢する。

「戦いをめるだと? これがそうだというのか!」

「違うかもしれない。けど、いまはこれしかできないんだ!」

 セプテンの重い一撃を、ジャニュが剣で受け止めた。

 そこを、フェブが攻める。縦斬りでダメージを与えた。

「なっ」

「剣を引け! ヒサノリ!」

 どう見ても自分より年上の相手を、アラタは呼び捨てにしていた。戦いの高揚感こうようかんがそうさせたのかもしれない。

「やってくれるな」

「アラタにミズチ。この屈辱くつじょく、忘れんぞ」

「ああ。それでいいぜ」

「ふっ。何を言っている」

 ミズチはあきれていた。それでも、二人の連携によってセプテンが追い詰められている事実は変わらない。

 フェブとジャニュで、セプテンをあと一歩のところまで追い込んだ。

「む。時間か。では、失礼する」

 捨て台詞ぜりふを残して、カンサをしまう男性。ヒサノリは逃げていった。

「逃げたか」

「さて、次はオレたちの番だな」

 ミズチは、アラタと戦う気満々のようだ。

 アラタは、無言でカンサをしまった。

「おい。くっ」

 まだ戦う気満々だった様子のミズチ。仕方なく、すこし遅れて、ミズチもカンサをしまう。イマジン空間が消えていった。

 破壊された建物が元に戻っていく。紫色に染められた辺りも、元の色へと戻った。

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