休息

岩下さんはキャミソールにショートパンツを履いていた。砂浜でアシカと一緒に寝そべる岩下さんを僕は見つめる。

カンブリア紀、北朝鮮と来て今度はガラパゴス諸島か。

岩下さんのスマホも僕のスマホも故障せずに使えているのはよかった。


「ここはフェルナンディナ島だよね?」

岩下さんが僕に聞く。

「そうだよ」

僕はスマホの電源を切って、SIMカードを抜く。

誰とも連絡が取れないのは辛いが今は住居を探すしかない。

岩下さんは泣いていた。

「日本に帰りたいよ…」

彼女の涙が頬を伝う。

泣きたいのは僕も同じだ。岩下さんだけではない。

僕はいつの間にか岩下さんを抱き締めていた。

泣き止んだ岩下さんはアシカと一緒に砂浜で眠っていた。


『今起きてる現象について調べたいなら左スクロールしろ』

級友の三ノ宮イツキ君からLINE が来ていた。

僕はイツキ少年の指示通りにスマホの画面に触れ、左にスクロールするように指を動かす。

『タイムリープとは時間跳躍を日本語に訳したものだ。自分の意識だけが時空を動かし、過去や未来の自分の身体に意識が乗り移るという意味だ。お前と岩下がカンブリア紀に行ったのはタイムスリップだ。タイムトラベルは理論的に可能だ。しかし、過去は変えられない』

イツキ君らしいメッセージだ。








  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る