Web小説

 ある日、久しぶりに先輩からメールが届いた。


 『“Web小説”を書き始めたから読んで』という内容だった。


 ……それを見て、僕は溜息をついた。


 うちは親が厳しく、特に日本語の用法に関しては、病的なほどしつけけられたから、素人の文章を読むのは苦痛でしか無い。


 メールのリンクを辿ると…… 


 ……案の定、謙譲・尊敬はゴチャゴチャ、語彙力不足に加え、登場人物全ての動作表現が一緒。 おまけに誤用多数! ……こっちまでなり、内容が入って来ない。


 ……先輩の文章を校正して読み直し、やっと内容だけは理解出来た。


 ……が


 どう読んでも、つまらない。


 しかし、そう言うわけにはいかない。何とか褒め言葉を捻り出し、返信した。


 気を良くした先輩は、『お前も書いてみたら?』……と、勧めてきた。


 僕も暇な身体では無いけど、仕方ないので、朝起きて出社前にちゃっちゃと書いて、投稿してみた。


 ……その日から、電話が鳴りっ放し! 


 何か怒られるのかと思ったら、とんでも無い! コミカライズ → ドラマ化 → アニメ化 → 映画化 ……と、何故かトントン拍子に進み、僕はすっかり有名人になってしまった。


 こうなれたのは、全て先輩のお陰だ。


 お礼に連絡したが、無しのつぶて……。


 SNSもブロックされた。



 ……しまった!


 僕は、本名で投稿してしまっていたのだ。

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