理不尽

コンロード

ジン

 日本の、とある山村に、学会から追い出され世捨て人のような生活をしている科学者がいた。


 彼は、自分を見下した学会や人類に復讐する為、悪魔のような研究を続けていた。


 それは、究極の超人を創り出す研究だった。


 彼は幼い息子に生体改造を施し、遂に人類の能力を遥かに超越した、文字通りの『超人』を創り出した!



 その超人の名は『ジン』


 ……彼の研究成果を嗅ぎつけたマスコミは、ジンの能力に驚愕し、その知名度は全世界に広がった。


 ……人間とは勝手な生き物で、人々にちやほやされると、復讐など何処どこへやら、テレビ出演や執筆活動等、充実した人生を送り、やがて彼は、安らかにこの世を去った。



 日本の、とある山村とは別の山村に、学会から追い出され世捨て人のような生活をしている科学者がいた。


 彼は、自分を見下した『ジン』の父親に復讐する為、悪魔のような研究を続けていた。


 それは、究極の魔獣を創り出す研究だった。


 彼は粘菌に生体改造を施し、遂に人知を遥かに超越した『魔獣』を創り出した!


 しかし、彼の悲願は、復讐する相手が既に死んでしまった為に遂げられず、その怒りの矛先は『ジン』に向けられた。



 魔獣はジンの住む山村を目指し真一文字に進撃した。


 進路に当たる都市は、次々と壊滅した。




 人々は、ジンの登場を切望した。


 その思いに応えるべく、ジンは雄々しく立ち上がった。


 ジンの飛行能力は、音速を超える。 その衝撃波ソニックブームは、時に建物や人体を破壊してしまう。


 自衛隊は、地域住民を避難させ、ジンの出撃に備えた。




 ジンは、魔獣の方角をキッと睨み、出撃体制を整えた。


 ジンが呼吸を止めて念じると、足元から蜃気楼が発生した。 ジンの脚部から放出される高温により空気が熱せられているのだ。


 ジンが姿を消し、そのあとから『ドッ!』という音だけが木霊こだました。音速を超えた為、音だけがあとから届いたのだ。



 ……ジンは、その音だけを残し、この世を去った。 ジンの、強靭な肉体も音速を超えるスピードには耐えられなかったのだ。




 そして……人類も滅亡した。


 魔獣の勝ち誇った雄叫びだけが空に響いた。

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