第三部

―91― 次なる鍛錬

 レイドモンスターがおよそ二週間後に現れるということで町は非常に慌ただしくなっていた。

 例えば、結界のせいで町の外に出ることができなくなったため、物流が滞り、仕入れができないお店は閉店することになった。

 となれば、真っ先に不安になるのが日々の食事をどうするかだが、その点に関してはそこまで心配に及ばない。

 基本、このガラボゾの町において、最も大きな産業はダンジョンだ。

 そして、町にある全てのダンジョンは結界の中に含まれているため自由に出入りできる。ならば、ダンジョンの中に入ってモンスターの肉を食べれば餓死するような心配にはならない。

 だから、結界のせいで物流が滞っているとはいえ、ダンジョン関連の産業は滞りなく動いていた。

 多少変わった点といえば、肉などの食材になる素材がよそから輸入できないため価値があがり、逆に加工しないと使えない魔石や毛皮なんかの価値は下がった。

 といっても大きく価格が変動したわけではないので、大した影響ではないんだけど。

 あとはお酒が輸入できないせいで価格が高騰し、一部の住民が荒れているなんて話も聞いた。

 まぁ、レイドモンスターを倒せれば、元の生活に戻るんだから、それまで我慢すればいいだけだと僕は思うが、それは僕がお酒を飲んだことがないからだろうか。


 ともかく、レイドモンスターが現れるまで、まだ二週間もある。

 だったらそれまでの間に僕のやるべきことは1つしかない。

 そう、ひたすらダンジョンを周回して、より強くなる必要がある。

 先日、ロドリグさんとの決闘に負けて、僕はまだまだ冒険者としての修練が足りないことを痛感した。

 だったら、レイドモンスターの討伐に貢献できるよう、もっと強くなる他ない。


「二週間って、そんな長くないしな」


 できることなんて限られてくる。

 だからこそ、効率よく物事を取り組むべきなんだろうけど。

 それにはどうすべきか……。

 僕は部屋でぼんやりと考えていた。


「うん、レベル上げを中心にやろう」


 という誰でも簡単に思いつきそうな結論に至ったわけだ。


「この町の最難関ダンジョンに挑もう」


 という結論に至るのは、あまりにも当然といえた。

 元々の予定ではアレアトリオダンジョンを周回して、〈魔導書〉を複数手に入れて、残りの火と風の魔法を覚えようと思っていたが、それは一旦諦めよう。

 確実に強くなるには新しい魔法を覚えるより、レベルをあげたほうが確実。

 もっとも効率がよいレベル上げは強いモンスターを倒すこと。

 この町で一番強いモンスターは当然、最難関のダンジョンに集まっている。


 あとは、せっかく買った『魔法の教本』を読んで、もう少し魔法に関する知識を深めて、覚えた魔法を戦闘でも使えるようになりたいけど、それは時間が余ったときにやればいいか。


 と、一通り方針が決まった僕は早速レベルを上げるべくダンジョンに赴いた。


―――――――――――――


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