―70― アレアトリオダンジョン
アレアトリオダンジョン。
D級。攻略推奨レベルは65の冒険者が6人。
随分と、難易度の高いダンジョンに来てしまったな、と思う。普通なら、レベル34の僕が一人で来るようなとこではない。
とはいえ、僕には異常に数値の高い敏捷がある。無理そうなら、逃げればいいだけだし、そう気負う必要もないだろう。
それに、このダンジョンの攻略に向けて装備を一新した。
まず、〈
今までは奪われるのを気にして、高い武器は買わなかったが、ギジェルモもいなくなったことだし、そろそろ身につけてもいい頃合いだと判断したのだ。
そして、剣のほうは〈黒鉄の短剣〉と呼ばれる短剣に一新した。良質な鉄鉱石から作られた短剣で攻撃力をプラス230と、十分優れものだ。
まぁ、〈
このアレアトリオダンジョンは非常に厄介なダンジョンだ。
まず、ボス部屋までいく道のりが長い。今までのE級ダンジョンなら、20階層ぐらい下に潜れば辿り着けたが、このダンジョンは40層と倍の長さがある。
その間に、たくさんのモンスターと遭遇すると考えたら、非常に厄介極まりない。
「グルゥウウ!!」
目の前にモンスターの唸り声が聞こえた。
「えっと……」
呟きながら〈鑑定〉を使う。
◇◇◇◇◇◇
〈
討伐推奨レベル:53
巨大な爪を持った狼。俊敏な動きで巨大な爪を振り回す。
◇◇◇◇◇◇
「ガウッ!」
それを刹那でかわしつつ、短剣を突きつける。
「ん?」
と、困惑したのにはわけがあった。
短剣を突き立てたものの、攻撃が効いていなかった。
せっかく新しい剣を買って、合計の攻撃力を342まであげたというのに。
〈必絶ノ剣〉を使うか?
いや、このレベル差なら〈必絶ノ剣〉を使っても確実に倒せるとは限らない。それなのに、MPを大量に消費するのは避けたい。
「ガウゥ!」
再び、
「よし、逃げるか」
僕はモンスターから背を向けて逃げることにした。
できればモンスターを倒してレベルを上げたいが、一番の目的は初回クリア報酬だし、無理して倒す必要はない。
だから、より奥の階層に続く方向へ逃げることにしたのだ。
「って、すごい追いついてくる!」
簡単に振り切れると思っていたのに、
てか、
「どうしよ!?」
このままだと追いつかれる。
今までなら、モンスターに追いつかれるなんてことなかったのに!
「ガウッ!」
見ると、前方に大きなモンスターがいた。
熊だ。鎧をつけた熊が通路を塞いでいる。
◇◇◇◇◇◇
〈
討伐推奨レベル:57
鎧に身を包んだ熊。大剣を振りかざす。
◇◇◇◇◇◇
「うそでしょ!?」
冷静に〈鑑定〉をしつつ、このままだとは挟み撃ちにされる、という事実に戦々恐々する。
「グァァアアアアア!!」
と、
まずい、と思いつつ、僕はスキルを発動させた。
「〈回避〉」
瞬間、体が加速し、
グサッ、と血が飛び散る音がした。
どうやら
だが、まだ安心はできない。
なぜなら、今から2体のモンスター相手に戦わなくてはいけないのだ。
短剣を握った右手から嫌な汗が流れる。
勝てるのか……? この僕に。
だって、さきほど
しかも、逃げても意味がないときた。
「やるしかないか……」
それでも、僕は自分の心を奮い立たせて巨大なモンスター2体を相手に立ち向かう決意をした。
「あれ……?」
僕は首を傾げたのにはわけがある。
「グルゥ!」
「ガウゥ!」
と、雄叫びを上げながら、モンスター同士でいがみ合いを始めていた。
どちらも僕の存在を忘れてしまったのか、僕には見向きもしないで戦っている。
「えっと……」
普通、モンスターって問答無用に人間を襲うもんだよね。
仲間割れなんだろうか? よくわからない。
ただ、一つ言えることは――
「またとないチャンスだ……」
モンスターを無視して、前に進むという選択肢もあるが、せっかくなら漁夫の利を狙って、どちらも倒してしまいたい。そうすれば、レベルもあがるし素材を換金してお金も儲かる。
ならば、
「〈必絶ノ剣〉」
傷を負った今の
◇◇◇◇◇◇
レベルが上がりました。
レベルが上がりました。
◇◇◇◇◇◇
「こっちは〈必絶ノ剣〉を使うまでもないか……」
すでに満身創痍の
◇◇◇◇◇◇
レベルが上がりました。
◇◇◇◇◇◇
うん、レベルが3つもあがった。これは中々にしてラッキーだったかも。
「〈アイテムボックス〉」
と、呟くと手のひらから異次元の空間に繋がった輪のようなものが出現する。
「これに入れていけばいいんだよね」
今までなら、解体して高値がつく魔石だけを回収していたが、〈アイテムボックス〉を手に入れた今、モンスターごと回収することができる。
しかも、(特大)と書かれていたし、けっこうな数を入れることができるんだろう。詳しく検証はしていないけど。
そんなわけで、
これなら、素材を取り残すこともないし、けっこうお金を稼げそうだ。
それから〈必絶ノ剣〉を使い、減ってしまったMPをMP回復薬を飲んで回復させる。
当然、MP回復薬は〈アイテムボックス〉に収納して持ち歩いていた。
「よしっ、この調子でもっとダンジョンを進もう!」
ダンジョン攻略を始めてまだ序盤だが、良い成果に巡り会えたので気分がよかった。
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