5.嵐が来る
――ポケットに、成形した樹脂のかけらをしまっていたのを忘れていた。
ヤシの木から実を落とそうとしている時に、それはポケットから零れ落ちたようだった。
『なぁ、お前』
自分がココナッツのジュースを飲んでいる時に、エイハブは樹脂のかけらを自分に見せた。
『……どうして
自分はそれを『神様』の農園で作っていることを教えた。
エイハブは眉を動かさずに、子供らの話や大人達の話をさらに聞いてきた。
樹脂を作る大人の仕事。樹脂を切り分ける子供の仕事。
『神様』に呼ばれた子供たちの事。狂気じみた大人たちの乱痴気騒ぎ。
そして、自分はそのすべてを不快に感じているということ。
全部を伝えると、エイハブは言った。
『お前、今日はうちに泊まれ。帰るんじゃねぇぞ』
そうして青い瓶の飲み物を取り出すと、それを一気に飲み干した。
『くそったれが……あの野郎、やっぱり最初に殺しておくべきだったな。おれの島で好き勝手にやりやがって……ハァ、これが、なにもかも面倒がったツケってヤツか。結局、一度殺しちまえば、もう普通には戻れねぇってわけだな、ハァ……』
エイハブは首を振り振り、ため息を吐きながら灯台へと入っていった。
風が強い。嵐が近づいているようだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます