自分探しの旅ではなく

 今回は、長い旅だった。3/28に出発して、4/12に帰宅。計16日間。私の人生では最も長い旅になったが、今後はもっと長い旅を計画しているので、これは序章のようなものだと思っている。


 費用は一日1万円弱。合計で15万円くらい。旅の始めはレシートなんかをこまめに保存しておいたが、途中で面倒になったので詳細な費用は分からない。ただ、贅沢はしなかったし、観光も少なく、有料道路もほとんど走らなかったので、こんなものだと思う。



 今回はいろいろな人と出会った旅だった。一人旅をしていると、誰かと会話することが少なく、段々と会話に飢えてくる。そんな中で出会った人たちの話は一つ一つが印象に残るものだ。

 これまでの話には書かなかったが、今回の旅でもいろいろな人がいた。



 例えば、あるゲストハウスでは住み込みで働く女性に出会った。出発の朝ロビーへ降りると、小さな声で、そして美しく歌っていた姿が印象的だ。朝からウクレレを弾いている姿からは自由と平和を感じた。


 室戸岬で出会ったライダーは会社の異動で四国にやってきたそうだ。元々は東京で働いていましたが、広島に異動の後、最近徳島に異動になったそうだ。単身赴任の生き方でもバイクとともに充実しているように思えた。


 高知のゲストハウスではオーナーさんと夜遅くまで酒を飲んだ。本業はカンボジアで観光業をやっているらしく、翌日にはカンボジアへ出発するそうだ。私も会社員時代はカンボジアで仕事をしていたので、話が盛り上がり、カンボジアのビールをご馳走になった。すごく水っぽいビール、現地では冷蔵庫がないので氷を入れて飲むのだ。


 コンビニであったオバチャンは、どこから来たの?という定番の言葉から会話をした。会社を辞めて旅をしている話をしたら、それは一大決心だと励まされた。


 大山の駐車場では、バイクを立ちごけさせたときに手伝ってくれたオジサンがいた。困っている人を気軽に助けられる姿は東京ではあまり見られない。


 鳥取の飲み屋では、閑散とした店で常連のオジサンに愚痴を話した。バイクを立ちごけさせたこと、今は無職なこと、これから旅を続けること。その人からは鳥取の見所や名物なんかを教えてもらい、日中の落ち込みを忘れさせてくれた。教えてもらったホルモン焼きそばも絶品だったことはよく覚えている。


 磐梯の道の駅で出会ったライダーは、県内の山道や林道を走るのがメインと言っていた。私のように長期ツーリングには行かないようで、お互いの旅の魅力を語り合った。



 こんな風に旅に出ると、いろいろな人に出会う。知らない土地には知らない人がいるのだ。そして、一人一人がそれぞれの人生を生きていることを実感する。

 そして、世界が広がる。知らない人生を知って、私の人生もその一つでしかなく、悩みや葛藤など私だけのものでもないと知れるのだ。


 一人旅は自分探しではなく、探しなのだ。一人旅だからこそ知れるがことがある、と私は思う。だから私はこれからも一人旅を続けるだろう。

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