第47話:スラム街の抗争
食事もそこそこにエイリスがノエルに依頼されていた内容を話し始めた。
「まず、お姉様の自宅についてですが。周辺一帯を巻き込んで更地になっていました。恐らくですが保管されていた予備弾薬等に引火したのではないかと思います。周辺には弾痕と思われる痕跡がありましたから」
それについてはノエルとしてもフェンリルからの情報で察していたので自宅が更地になっていたというのも特に驚きはしなかった。
「…それはまぁ、大体予想がついていたわ。それで?私の家を吹っ飛ばしてくれたのはどこの誰?」
「それが…明確に何処の誰かまでは分からないんです。正確に言えばどちらがお姉様の家を吹っ飛ばした原因か分からないと言った方が正しいでしょうか」
「…どういう事?」
ノエルがどういう事か分からないと怪訝な表情をしているとリーナからの補足説明が入った。
「ノエル、貴女が住んでいた近くはスラムが近いのは知っていたわよね?」
「えぇ、依然襲われたこともあるし」
「スラムだって完全に秩序が無いわけじゃないの。ようはある程度大きな集団がそのスラムを牛耳ってるわけ。私がウルフフラッグに居たみたいなものよ。その集団ファミリーって言うんだけどそのファミリーは幾つかあってファミリーどうしは仲が良いわけではないから良く抗争が起きるの」
「なるほど、そう言う事ね」
「その想像通りよ。今回の抗争は結構スラムの外まで被害が出てしまったという訳。ASすらスラムのファミリーは所有してるからどっちが何処を破壊したかなんて分からないのよ…どちらも同程度の規模だし」
スラムを牛耳る組織、ファミリーはシーカーに匹敵する戦闘能力を持つ者も少なくない。性能は兎も角強化服を着た程度の人間が勝て無いとされるASを所有して居る。そんな物たちが争えば相応の被害となる事は想像に難くない。
「それで?その争ったって言うファミリーは何処と何処なの?」
「シルドファミリーとグルドファミリーよ」
「…そう。ありがとう」
「それで、これからノエルはどうするつもりなの?」
ノエルの表情はあまり芳しくは無い。普段そう感情を表に出さないノエルだが今は明確だ。眼を細め、眉間にしわを寄せ誰から見ても分かる程怒りを表情に出している。その自覚が有るのかノエルは普段変形している仮面で顔を隠した。
「そのファミリーとやらから慰謝料を請求してやるわ」
その言葉を聞いたエイリスとリーナはフリーズした。
「じょ、冗談でしょ?」
「まともに話が通じるとは思えませんが…」
「スラムを更地にしてでも誰の家を吹き飛ばしたのか分からせてやるわ」
そう興奮しているとは思えないほど、淡々とそう答えた。
ノエルにとって己が手に入れたすべては自分の血肉と変わらないと考えている。戦闘で破壊され、消耗するのは仕方が無い。だがそうではない物を破壊された。自らが汗水を垂らし、体を文字通りボロボロにして得た物を破壊された事が許せなかった。
「お姉様正気ですか!?」
「えぇ、いたって正気よエイリス」
「お姉様がオーダーメイドの装備等を手に入れ。いくら強くなられたとはいえファミリーとじゃ規模が違います!いくら何でも無謀です」
エイリスの制止を受けてもノエルはその考えを改めるつもりは無かった。そのまま二人を置いてノエルは食堂を出た。
『止めないのね?』
『おや、止めて欲しかったのですか?』
『別にそう言う訳じゃないわ。ただ意外だなと思っただけよ』
『確かに私とノエルの関係は契約上での前払い分の報酬ですが以前にも言った通りノエルの望む事全般をサポート致します。勿論ノエルの生存を最優先にしますけれど』
『頼りにしてるわ』
エルフィスタワーを出たノエルは一直線にスラム街に向かう。
ノエルの装備はほぼフル装備と言える状態であり、文字通り戦争に行くかのような面持ちである。
「ねぇ、そこのあなた」
「あぁん?何の用だ」
その辺にいたスラム街の中ではある程度身なりの整った男にノエルが話しかけた。スラム街においてある程度身なりの整った者は基本的にそれだけの金銭的余裕を持ったものという事だ。このスラム街で身綺麗な人間は少なくその殆どはそのファミリーに所属する者がほとんどとなる。
「シルドファミリーもしくはグルドファミリーの場所を知らない?」
「さぁ?しらねぇな」
「そう…」
「それはそうとお前いい体してるじゃねぇ…」
ノエルは用済みとなったその男をあっさりダルモアで両断すると次の情報を知っていそうな者に片端から声をかけ始めた。
「ねぇ、シルドファミリーもしくはグルドファミリーの場所を知らない?」
血に濡れた剣を持って少女はスラムを歩く
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