第28話:第三都市防衛戦開始
昨日買った装備の確認をノエルがしている。昨日は実際に実射テストはしていなかったので新しい銃の性能テストを行っていた。
『特に癖は変わらなそうで良かったですね』
『そうね』
銃が強力になり、ノエル自身の技量もフェンリルによる戦闘訓練によって鍛えられた。何より先日の戦闘で倒した連中の戦闘データを基にしたシーカとの戦闘も戦闘メニューに追加された。
『ノエルは少々その体感時間圧縮に頼りすぎです。自惚れ無いで下さい、それは確かに重要ですが使えることは必須になります。それを運よく最初から持っていただけです、それ以外の戦闘技術も磨きましょう』
『分かってるわよ…ただちょっと休ませて』
『仕方ないですね…』
ノエルが休憩しようと近くに止めていたバイクに腰を落とした時だった。
『緊急依頼が来ました。都市からの依頼です』
『緊急ねぇ、内容は?』
『都市防衛戦です、これは対象シーカー全員に機械的に送られているものですね。作戦地域に行って都市防衛隊の基地を起点に援護するようにとのことです』
『低ランクシーカー向けの依頼ね。実際私のシーカーランクって低かったっけね』
『そうですね。どうしますか?受けますか?』
『受けましょうか、楽して稼げるなら丁度いいわ。一度装備をしっかり整えに自宅に戻ってからにしましょう』
『では最短ルートを運転します。その間休んでおいてください』
バイクにしっかりまたがると、フェンリルがバイクを操作し一人でに動き出す。その間にノエルは防衛作戦の詳細を確認する。
防衛作戦の内容は後方での支援だ、前線で戦う手練れのシーカーが撃ち漏らしたり予期しない襲撃に対しての予備戦力。その他には多少の資材や弾薬運びを行う雑用等だ。報酬は基本規定時間で交代、モンスターとの戦闘があった場合は汎用討伐依頼に色がついた程度の金額。これは汎用討伐依頼の戦闘データから金額を算出すると計算が楽だからだ。
ノエルが補給を済ませ割り振られた地点に到着すると、前線の方では戦闘が発生しているようだった。TSSR対物ライフルのスコープとフェンリルの支援で様子を確認するとかなりの数の機械昆虫系モンスターとシーカーと防衛隊員が戦闘を行っていた。
『これ、私攻撃していいのよね?』
『構いませんよ、ただTSSR対物ライフルの専用弾でもあのバクダンゴムシの装甲はこの距離では抜けません。徹甲榴弾での爆風で転がして援護しましょう、彼らならそれだけで十分な援護となります』
『了解よ、支援よろしく』
他のシーカーからの奇異な目線やバカにしたような目線。中にはノエルを侮った口調の者も居る中でノエルはTSSR対物ライフルを構える。
改造パーツによる改造を施されたTSSR対物ライフルの莫大な反動を強化服と身体能力強化ナノマシーンの身体能力にフェンリルの補助が殺し切る。まるで無反動砲を連射しているかのような異様な光景に周りのシーカーは驚愕する。
フェンリルによる優先順位を強調表示された対象を正確にTSSR対物ライフルの長射程の弾丸が着弾し攻撃対象を破壊には至らずとも爆発で横転させる。危険な状態のシーカーチームを援護する事を主目標として銃撃を開始する。
『徹甲榴弾はそれで終わりです、此処からの援護と言うならこれ以上は不可能です』
フェンリルからのその説明に納得したノエルはTSSR対物ライフルの弾倉を専用弾の入った拡張マガジンに変更して、リュックにマウントした。TSSR対物ライフルの代わりにタボールとBBA突撃銃を取り出すと声を掛けられた。
「なぁ!何で攻撃止めたんだよ!前線のシーカーがあんなに苦戦してるっていうのによ」
ノエルは内心「なんだこいつ」と思いながら無視して基地内に入ろうとすると掴まれる。先程のシーカーの以前にリーナと共に居たレンヤだった
「何?」
「だから何で前線のシーカーをもっと援護しないんだよ!」
「別に好きで援護したわけじゃない。それにもう徹甲榴弾は無いわ、無い物を撃てと言われても無理よ。そんなに援護したいならこの依頼放棄して助けに行けばいいじゃない」
「俺じゃなくてお前が行ってくれよ!俺は行きたくても行けないんだ!お前が行けばあそこにいるシーカーは助かるだろ!?」
「嫌よ、誰が好き好んで何も得られない死地に挑めと言うの?私は援護での戦闘支援報酬が欲しかっただけ、弾代もエネルギーパックもただじゃないのよ?リーナと大違いね。リーナは自分に出来ることをしっかり割り切って行動していたっていうのに」
そう言って、振り払ってノエルは基地に入った。
そこでたまたまウルフフラッグのサトナガを見かけた。ノエルはまたレンヤに良い寄られても面倒なので以前に引率者だった彼に文句を言う事にした。
「サトナガだったわよね?」
「あぁ、そうだがお前は?」
「覚えてない?ノエルだけど。前にグリスと一緒に護衛依頼したと思うけど」
そう言って仮面を変形するとかなり驚いて、勢いよく立ち上がった。
「あの時のお前か!?」
「そうよ」
「こんな顔してたんだな…で?何の用なんだ?」
そこでノエルはさっきあった事をサトナガに説明した。そしてこういった事が無いように改善を求めた。
そこまで言うとサトナガはため息をつきながら唸った。
「貴方あれの引率者だったでしょ?しっかり教育してよ」
「先に言っておくが。俺はもうあいつの引率者じゃない。あいつの事はウルフフラッグでもちょっと問題になっている。うちはそこんじょそこらのシーカーの一党とは訳が違って企業の傘下の組織だ。そしてレンヤはそんな事を無視して自分勝手に仲間を集めてやりやがる。しかも才能があるからなおの事悪い」
「イレギュラー因子っていう事?」
「そうだ。一応お前にそんな一方的な要求があったという事は上に伝えるが。あまり期待はするな」
「本当にリーナとは大違いね」
「あいつとはまだ仲が良いのか?」
「えぇ、昨日ももう一人商人と一緒にショッピングしたし」
「へぇ。まぁ良いか。とにかくだ、正直期待に応えられるかは分からん」
「酷いようなら撃ち殺すけど良い?」
「お前がか?確かに装備は充実したようだが…」
「私も実力不足は…」
言葉の途中でノエルの端末から通話要請を告げる音が鳴った。
「とにかくレンヤの事は頼んだから」
そう言うとノエルは通話要請を仮面の視線操作で受ける。
『もしもし?』
『おはようございます。都市機構維持機関広域経営部のオオサトです』
『どうも便利屋のノエルよ、で?要件は?今一応休憩中とは言え仕事中なんだけど』
『貴女は今都市機構維持機関防衛局が依頼した都市防衛依頼を受領中という事で間違いは有りませんか?』
『そうだけど』
『どの防衛拠点におられるか分かりますか?』
『第7拠点だけど』
そう言うと少しの溜めの後オオサトは話の続きを話し始めた。
『現在の依頼を現時点で達成した物として。新たな依頼をしたいのですがよろしいでしょうか?』
『まさか最前線で戦ってこいなんて依頼じゃ無いわよね…』
『そのまさかです。基本料金は1000万追加は出来高払いです。如何でしょう?』
『弾薬費は?』
『こちらで負担する事も可能です』
『じゃあそれで。ある程度は意欲的に戦闘するけど撤退は自分の意志で行動させてもらうけど良い?』
『構いません』
ノエルはどうにか不自然じゃない程度の条件を出したが通ってしまった。
『ある程度良い条件ですので受けたらどうですか?』
『そうね、受けましょうか』
最悪フェンリルの強化服強制操作で撤退する事を念頭にその依頼を受けた。
直ぐに基地にあった徹甲榴弾と汎用エネルギーパックを補給すると。前線の防衛拠点に向けてバイクを走らせた。
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