第27話 ケーガー

「まずは売り上げだ。かなり伸びていく計画だね。CAGR(ケーガー)が妥当かどうか」

「けーがーですか?」


(はい、でました!山田チーフの横文字チャレンジ)


 真奈美はこの展開に愛着を持ち始めていた。


「うん、CAGRと書くんだけど、ケーガーって呼んだ方がかっこいいでしょ?」

「ふふふ」


 二人は目を合わせて笑った。


「冗談はさておき。CAGRはCompound Annual Growth Rateといって、要は年平均成長率のことなんだ。市場の将来性の話とかで、M&Aとは関係なくても良く聞く単語だよ」

「はい、覚えます!」


 真奈美は敬礼した。


「ははは。投資銀行と話をすると、このような横文字や略語がいっぱい出てくるから、少しづつなれていくといいね」


 山田は優しく笑った。


「で、そのCAGRが10%。過去のこの会社のと比較すると高い印象だ」


 山田は2ページ前のP/Lの直近実績に画面を戻した。


「この会社はいい意味でも悪い意味でも安定経営してきている。それが今年を機にっ急に10%成長路線になるとするならば、かなり合理的かつ納得がいく説明が必要だよね」

「確かにそうですね」


(トラックレコード……実績って言ってくれてもいいんですよ~)


 真奈美は心の中で山田をちゃかしてみるものの、声には出せなかった。

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