第20話 パワーレベリングを終えよう
結局、あの男は水琴の友だちの兄だった。水琴の友だちのひとりが兄とメルの写った画像について話をしたことを告白してくれて、兄の画像や連絡先などの情報を提供してくれたのだ。画像を見る限り、あの男で間違いない。
こちらから警告を発することもできるようになったわけだが、覚えておけよと啖呵を切ったわりには水琴のところに追撃のメールがあるわけでもない。このまま放っておこうかとも思ったが、両親に経緯を話したところ速攻で相手の家に電話を入れた。
相手の親はどうも最初こそこちらの言い分を疑ったようだったが、こちらの家の前で様子を覗っている画像があること、警察に相談済みであることを話すと態度が一変したようだ。この件は自衛しつつ、後は両親に任せておく他に無いだろう。
それからしばらくの間、平日は水琴の送り迎えが続いたが、別段男からの接触は無く、両親によれば男は親からキツいお灸を据えられたようだ。直接、謝罪をということだったが、水琴が断って、親同士でなんらかの決着がついたらしい。水琴は部活に復帰して、送り迎えも終わった。
月日は巡り、バレンタインデーも過ぎたが、特に例年と変わったところがあるわけでもない。当然のことながらアーリアにはバレンタインデーの習慣などはなく、メルからもチョコはもらえなかった。わざわざ説明して催促するわけにもいかないので仕方ない。
僕のレベルは37にまで上昇した。すでに第30層のドラゴンと戦えるレベルだということだったが、それはあくまでレベルの話だ。僕らの技量が追いついているとはとても思えないし、死闘を繰り広げるつもりもない。第20層のドラゴンには第41層で上げられるところまでレベルを上げて、訓練を積んでから挑むつもりだ。
学校生活は順調だ。学業という意味においては。授業を受けるまでもなく、教科書を読むことで大体のことは理解できる。予習どころか大学入学共通テスト向けの参考書を解いている段階だ。
学校の定期試験で全力を出すことは敢えて避けている。成績の向上があまりにも急激だと不信感を持たれかねないからだ。徐々に成績を上げるような感じに調整を入れている。
大学入学共通テストの参考書を解く限り、行く大学に困ることは無さそうだ。模擬試験などで全力を出したことが無いので、実際の偏差値がどの程度かは分からないが、今のところ理解できない設問は無い。
明確にやりたいことが決まっていないし、とりあえず東大でも目指しておくかって感じで、東大向けの参考書も購入した。そちらはこれからだけど。
とりあえず大学の選択は親元を離れるのが目的だ。実家にいる限り、表立って探索者として活動ができない。アーリア深層の魔石を売るためには、日本のダンジョンでも深層に至らなくてはならない。うまくやれば一人暮らしの生活費どころか学費だって捻出できるだろう。
東大はともかく、関東の大学を目指すということは両親に伝えてある。必要なら奨学金を借りたり、バイトして資金を捻出するつもりであるとも。
両親は反対はしなかった。それどころか僕の学費や、一人暮らしの生活費くらいの蓄えはあるという。そのために共働きでやってきたのだと言うことだった。
ただ成績の心配はされた。少し前までの僕は決して出来の良い方では無く、むしろ不出来で、東大どころか大学進学そのものが危うかったからだ。毎週末、外を出歩いていることも両親に心配される原因だろう。なので最近は週末は図書館で勉強しているという体になっている。
塾に通うことも提案されたが断った。平日はともかく、土日の予定を埋めるわけにはいかない。成績が伸び悩んだらお願いするかも知れないと言うと両親は納得した。
やがて3月も終わり、春休みが過ぎて、僕は高校三年生になった。レベルの上昇は鈍化して、レベルは40に留まっている。ここまでくると普通にレベルを上げるのに数ヶ月、第41層でのパワーレベリングでも数回はかかると言うことで、僕はパワーレベリングを終える決断をした。
決戦の時は近い。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます