異世界現代あっちこっち ~ゲーム化した地球でステータス最底辺の僕が自由に異世界に行けるようになって出会った女の子とひたすら幸せになる話~
二上たいら
クソザコナメクジくん、異世界に行く
第1話 この世界はクソゲーだ
現実ってヤツはクソゲーだ。
何故なら本当にクソゲーだからだ。
僕は自分のステータスを思い浮かべた。
柊 和也
レベル 2
体力 86/98
魔力 53/65
筋力 11(15)
耐久 8(10)
知力 22(23)
抵抗 3(8)
器用 7(14)
敏捷 4(11)
技能 無し
称号 無し
ステータスの括弧の中の数値は万全な状態での数値で、左が現在の実際の数値だ。つまり学校のトイレで囲まれて凄まれて手も足も震えている現状では、このくらいまで低下している、ということだ。
まあ、そのことを差し引いても僕のステータスは低い。文科省の調査による高校二年生の平均ステータスが下記の通りだ。
体力 最大値153
魔力 最大値97
筋力 33
耐久 25
知力 45
抵抗 24
器用 31
敏捷 28
僕の知力が高めだと思った?
万全な状態で平均値の半分くらいしか無いんだ。
まあステータスの知力という項目はどちらかというと理解力で、そのまま学力に置き換わるわけじゃないけれど、知力が高い方が学力が伸びやすいのは事実だ。
実際、僕の学力は学校内では下から数えたほうが早いし、全国偏差値も低い。
その他のステータスも軒並み平均の半分以下で、つまり僕はクソザコナメクジだ。
「だからなんで呼び出されたのに財布持ってきてねぇんだよ!」
僕を囲んでいるうちの1人、檜山がトイレの個室の壁を蹴った。ガンッと響く音がして、僕は恐怖に身を竦めた。
僕を脅している檜山は決してステータスが高い方ではないはずだ。仲間の2人にしてもそうだ。学力も、運動でも、それほどの成績を残している連中じゃない。ただ僕がそれに輪をかけてクソザコだというだけだ。
「ごめん。財布持ってきてなくて……」
「おまえんとこは弁当じゃねーだろ。昼飯代は!?」
「それも今日は忘れてきて……」
嘘ではなかった。ステータスの抵抗の値は精神的な耐久力のことだ。今の僕では彼らの脅しに嘘を吐くようなことはできない。万全の状態でも多分無理だけど。
「あーあ、トモダチ料も払えないのかよ」
「じゃあ今日はヨワラギくん、トモダチじゃねーな」
「トモダチじゃねー柊クンはなんなんだっけ?」
「く、クソザコ……ナメクジ、です……」
「声が小せぇ!」
「クソザコナメクジですっ!」
「声がでけぇ!」
檜山の腕が理不尽に振るわれて僕の頬を拳が打ち抜いた。まともに衝撃を受けた僕は、トイレの床に倒れ伏す。痛みと恐怖で涙が溢れてくる。そんな僕に檜山たちは足を振り下ろす。僕は亀のように体を小さくして耐えることしかできない。
何時間にも感じる数分が過ぎると、檜山たちは蹲ったまま反応の無い僕をいたぶることに飽きたのか、その暴力が止んだ。
「チッ、明日は忘れんじゃねーぞ。今日の分も上乗せだからな」
ご丁寧なことに相田が回復魔法を使ってから3人はトイレを出て行った。回復魔法は優しさではなく、証拠隠滅だ。あんなに殴られ、蹴られたのに僕の体にはアザひとつ残っていない。
後に残る痛みも無いが、暴力を受けている最中に感じた痛みを忘れられるわけでもない。一番キツいのが殴られて回復されて、殴られての繰り返しだ。いっそ殺してくれとすら思う。
それを考えると今日は安く済んだほうだ。まだ二時間目が終わったところだけど。
繰り返して言おう。
現実はクソゲーだ。
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九番目の貴方へ
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