月のとなりで

ンガェヒゥ

しゃぼん玉に口づけを

 こわれてはじけて消えてゆく

ひとりいたづらに鐘を鳴らし

 周りのすべてを透過して

勿忘草にはいとりないて

 鐘の鳴る間に消えてゆけ

 こわれてはじけて消えてゆけ



 心に歌はなかった。唄うことは出来ずに、詞をただ吐き散らしているだけだった。云いたい事など無く、伝えなければいけないことも無かった。きっと、伝えたい言葉は無かった。一人の存在なんてどこまでもちっぽけでこの世界に望まれたモノなどきっと一つもないのだ。

 だから私が一人消えようが関係ないはずなのだ。それなのに、彼女たちはきっと悲しむだろう。突然のむなしさに耐えきれずないてしまうかも知れない。自惚れでなければ、きっとそうだ。そしてそれは、とても哀しいことだ。

 人はかなしいことを忘れる生き物だ。そうして何れ、何を忘れたのかすら思い出せなくなる。そしてついにはどうでもよくなる。それはとても虚しいことだ。

 虚無のむこうには有限が広がり、その先はまた幽玄が待つ。


 こわれてはじけて消えてゆけ

  独り待つ間のさびしさよ

   過ぎる松葉に寂れゆく

    声過ぎるとき後退り

     こわれてはじけて消えてゆく

     蒼空に過ぎゆく虹色に

    こわれてはじけて消えてゆけ

   終ぞ声は音もなく


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