第21話 隠しヤンデレメインヒロインを攻略せよ!3

 え、ちょっと待ってくれ……よ。

 俺はギャルゲーをしに拓哉の家にやって来ているんだよな?


『ふははは、そうだ。その通りだ。私が……ヤン・ゲル……ヤンデレ大魔王だ!!』


 自分で言うのめんどくさくなって訳したよこの女──ッ!!

 いや、役したくなるのはわかるけども!!

 自分の名前だぞ!!


『そういうことなのか……やはり、怪しいと思っていた!!』


 しかし、なんで主人公までこいつの正体を知っているんだよ──ッ!!

 というか……早く逃げろ!! 相手は魔王だ。

 ポケ○ンでいうところの御三家貰ったところで、チャンピオンリーグ行くのと同じだぞ!!


 すると、突如主人公が白く光りだす。


 それと同時に拓哉は俺の方を焦った表情をしながら向き。


「ここからが本番だぜ!!」


 などとカッコいいことを言いやがる。


 本番か……ここから、どういうギャルゲーに……。


 主人公の周りの白い光は徐々に消えて──。


『ふははは、まさか、お前があの伝説の勇者シャルジラス・ロバルキューベか!!』


 おいおい、さらなる急展開──ッ!!

 それ以上に魔王と比にならないほどの複雑な名前──ッ!!


 気づけば、なぜかワクワクしていてコントローラーを強く握りしめていた。


『それは古い名前だよ。ヤン……ヤンデレ大魔王よ!! 俺はもうシャル……キューべじゃない!!』


 もう突っ込まないから……名前を訳すぐらいで突っ込んでたまるか──ッ!!


『──あだ!!』


 いや、ダセーよ!!

 もっと、カッコいい名前にしてやってくれよおおおおおおおお!!

 せめて、拓哉にしてやってくれよ!!


 俺は拓哉の右肩に手を置いて。


「なぁ、拓哉?」

「ん? なんだよ?」

「もう一度、一からやりません? やり直そうぜ?」

「……はぁ? 無理に決まってんだろ。今からやっても六時間かかるぜ、ここまで来るのにはよ」

 

 そんなかかるのか……いや、かかって当たり前か。

 なら、仕方ないな……。


「ふんで、どれがむずいんだよ?」

「そうだな。もうすぐわかるぜ」


 あまり、わかりたくねー。


『お前はあえて、私の好感度を──っ!!」

『そうだぜ。わざとだぜ──ッ!!』

『なら……』

『なら……』


 お、なんかかっけえ!!


『『なら──ッ!! ここで勝負!!』』


 そのセリフと共に、ドラ○エのようなBGMが流れ出す──。


 いや、まんまなのだが……。


「なぁ、これ、ドラ○エだよね?」

「はぁ? 『ときめきガールズ』に決まってんだろ?」


 そう真顔で言う拓哉。


 んなの、とっくに知っとるわ!!


 そして、画面が変わり……。


『ヤン・ゲルデレ大魔王が現れた!』


「え……ドラ……」

「○エだな、これは……」


 どうやら、拓哉も認めているらしい。

 いや、完全にドラ○エのバトル画面だもん。

 どっからどう見てもそれだもん。

 これは、言い逃れは無理だぞ。


「実はだな……」

「ん? なんだ?」

「このルートだけ、最後はバトルなんだ」


 なるほど。

 それがこれということなのか……。


「それで、お前なら、こいつを」

「──そういうことかよ。俺に任せろ!!」


 とりあえず、俺は『呪文』を選択する。


 今はHPがどのくらいかが一番知りたいところだ。

 

 しかし、呪文はどうやら『イオグラ○デ』しか覚えていないらしい……。


 これ、ドラ○エじゃん!!


「仕方ない……これだ──ッ!!」


 俺はボタンをポチリと押すと──。


 主人公のアニメーションが始まる。

 どこから出したかわからない聖剣を握り、通称ヤンデレ大魔王に飛びかかり、斬り裂いた──ッ!!


『長いバトルだったな……これでしめーだ──ッ!!』


 いや、一瞬なんだが……なんなら、一ターン目なんだが……。


「さすが雄也だ!! まさか、この大魔王を──ッ!! そして、よく呪文とやらの使い方がわかったな!!」


 こいつ、舐めてんのか?


「いや、だってまんまドラ○エの画面だもん」


 っつーか、ラスボスよえー!!

 え、あの呪文でワンパン!?

 拓哉、お前は何と戦ってたんだよ?


『ぐははは、お前と本気でやれてよかった──っ!!』


 そのセリフとともに、画面にはハートマークが……。


『このハートと形が同じになったら、ボタンを押してね!!』


 どうやら、最後はギャルゲーにありがちな要素で蹴りをつけるらしい。


 全く何なんだ。

 このギャルゲーはよ。


「さぁ……決めろ……」

「お、おう!!」


『それでも……俺は……』


 そのセリフとともに、ハートマークに徐々に近づいてくるもう一つのハートマーク。

 多分、これを合わせるのだろう。


「いけええええええええ!!」


 なんか、めちゃくちゃ拓哉がテンションが高いので……俺も。


「よろしくお願いします!!!!!!!!」とボタンを押した──。


『好きです!!』

『わ、私も!!」


 そして、俺に泣きながら飛びついてくる拓哉。


「うわ、なんだよ?」


 え、泣ける要素あったか?

 俺にはなかったのだが。


「ありがと……ありがと、ありがとおおおおお!!」


 まぁ、こいつはこのシーンを見るために何十時間もかけたんだもんな……そりゃー、感動するわな。

 

 それでも、一つ言わして欲しい……。


「なんだ、このギャルゲー」







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