美少女で残念なヒロインたちの心の声が聞こえるようになった件

さい

第1話 テレパシー(前編)

 俺は特定の女子の心の声が聞こえた。

 発症したのは、中学二年の頃だった。


 当時の俺はその声に気持ち悪くなって何度も吐いたものだ。

 当時の俺は多分、「尊敬している人は?」なんて言われたら「聖徳太子」と答えただろう。


 実際、聞こえない声が聞こえたり、いきなり大人数の声を一緒に聞こえたらどうだ?

 結構辛いものだぞ。

 しかも、それがどれもめちゃくちゃ気になる内容でよ……。


 しかし、一ヶ月をしたところでそれは無くなった。


 と思っていたのだが……なんでまた聞こえるようになったんだよ……。


『あ、小倉くん今、あたしの胸見た……』


 なんでだよ……。

 なんで、悪夢が再び起こるんだよ……。



「おはよ……拓哉」と俺は椅子に座り、スクールバッグを机の横にかける。

「お〜おはよ〜雄也」


 雄也とは俺の名前だ。

 俺は小倉雄也。高校一年生だ。

 今はそれといって特技はないが、昔は【テレパシー】が使えた。 

 いや、まじで。


 ふんで、こいつが大石拓哉。

 俺とは中学の頃の仲であり、なかなか仲が良い。

 親友? 的な……。


「なんだ、眠そうだな」

「まぁな〜」


 こいつは、重度のギャルゲーオタクだ。


「また、ギャルゲーか?」

「そうだよ。全ルートの回収だよ」


 あまりわからないが、多分すごいことなのだろう。

 やれやれ……何が面白いのか俺にはわからん。


「そういえばよ? このクラスで誰が一番美少女だと思う?」


 その言葉に俺は頬を少し赤く染めて。


「そりゃー、神崎だろ」

「だよな〜あの、ボンキュンボン。完全に理想個体」

「おい、ポケ○ンみたいに言うな」

「ははは、わりぃ、わりぃ。それより、お前は幸せ者だな」

「はぁ? なんで?」

「だってよぉ〜お前、神崎さんと幼馴染だろ?」

「まあな」


 神崎愛美。

 彼女は俺が幼稚園にいた頃からの幼馴染であり、昔はよく一緒に遊んでいたものだ。

 まぁ、中学入ってからはそんなの無くなったが……。

 しかし、本当に可愛いな。

 こんな人と俺は昔、遊んでいたのか。


 俺は神崎をじっーっと見る。


 その俺の視線に気づいたのか、神崎は俺を見て。


 ふんっ!! とそっぽを向いた。


 やっぱりだ……神崎は中学に入ってからは俺のことを嫌っているのかよく無視をする。


 俺って嫌われるようなことしたのかな?


「まあ、二次元が俺の嫁だからな!!」

「気持ち悪いな」

「はぁ!? 気持ち悪くねーよ。三次元は裏切るが、二次元なら裏切ることはない。それどころか、三次元はな? 二股とかできねーけど、ニ次元ならできる!!」


 うわっ〜相変わらず、すげぇ〜こと言いやがるな。

 しかし、たしかにそれは一理あるな。


「わかったわかった」

「ほんとか?」

「ああ」

「じゃあ、お前もギャルゲーを……」

「ちげーよ? お前が気持ち悪いってことがわかっただけだよ」


 俺は二次元ではなく三次元で生きてやるぜ。

 しかし、ほんとに拓哉は少しあれだよな……それでも、こいつは優しいんだよな。


 だから、気づけば俺はこいつと一緒にいた。


「んだとぉ!!」と俺に襲いかかる拓哉。

「ちょっ──ばかやろ、椅子が倒れる……」


 そのまま、椅子は倒れ、俺と拓哉は転んだ。



「いってて……」


 まさか、放課後になっても痛いとは……骨でも折れたかもな。


 放課後になり、教室は騒がしい。

 俺はあまりそういうのは苦手だ。

 だから、俺は早くに教室を出て尻を抑えながら廊下を歩いていると──。


「あの……小倉くん。少しいいですか?」


 ふと、背後からそんな声がした。

 声からして女子だ。


「は、はい……」


 俺は後ろを振り向くとそこには、一人の美少女がいた。


「ど、どうしたんすか?」


 あれ……俺、こんな美少女と友達じゃねーぞ?

 誰だよこの人。


 あ、もしかして何か落としたのか!?

 いや、そんなことはないみたい。


「少し、お話がしたくて……あの、この後暇なら公園とかどうですか!?」

 

 いや、初対面に公園とか誘うか普通……?

 しかし、これは告白……なのか?

 いやいやいや、勘違いするな俺──ッ!!

 こういうのは、大体告白じゃねーから。


「お、おっけ〜!!」


 なんか、気持ち悪く返事しちまった──ッ!!


 すると、彼女は笑顔になって。


「ありがとうございます!! あたし……石川詩織です!!」


 なるほど、詩織か……さっぱり知らね。


「それじゃ、石川さん……公園? に……」

「はい!!」


 さてさて、何だろうか……。


 この頃の俺はまだ気づいていなかった──。

 あの悪夢が再び起こることを──。

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