第二十話「自衛隊VS日本軍」


 Side 緋田 キンジ


 大盛り上がりに終わったリオとAliceの少女の戦い。


 それに触発されたのか石崎大尉や朝倉中尉達もシュミレーターをフル稼働させて戦う事になった。


 対するは自分率いる第7偵察隊、宗像 キョウスケ、水瀬 キョウカ、高倉 ヒトミ、ルーキーなどが参加した。


 パワーローダーの条件は同じ。


 双方ともにこの世界のパワーローダーを使用している。


 正直言うとパワーローダーの訓練は不安だった。


 変な話だが実戦よりも緊張している気がする。


 ギャラリーは横須賀基地の人間やAliceの少女達だ。

 幾ら大規模でも、パワーローダー同士の戦いでここまでAliceの少女たちが興味を示すことはないらしい。


 よほどリオと御剣さんとの戦いが衝撃的だったのだろう。

 

 戦う場所は基地内部だ。



 Side 石崎大尉


 戦いは基地内部。

 

 数もパワーローダーも互角だが彼達の戦闘スキルは侮れない物がある。

 それは分かっていたが――


『こちらアルファチーム!! 相手は凄腕です!!』


『ベータチーム! 此方も苦戦中!!』


 敵の判断速度、部隊の展開スピードが素早い。

 まともに相手をしたらやられる。


『そんな!! 壁を蹴って!?』


『こいつら接近戦を!?』


『ダメだ!? 接近戦じゃ歯が立たない!!』


 状況が巡るましく変わり、前時代的な近接戦闘に状況が移行しつつあった。

 ゼレーナやAliceの少女達との戦いで、パワーローダーによる接近戦を行う者は稀だ。


 正直自殺行為と言ってよい。


 それを抜きにしてもパワーローダー同士の白兵戦など、ほとんどない。

 なのであまり重要視されてなかった訓練項目だが――その部分を突かれてしまったようだ。


『落ち着け!! 距離を離して対処しろ!!』


 そう指示を飛ばすが――


『きょ、距離を離しても食らいついてきます!!』


『こんな狭い通路でここまで動けるのかよ!?』


『クソ!!』


 本来なら敵部隊を誘い込んで本命の自分達の部隊がトドメを刺すと言う作戦だったのだが、このままでは陽動部隊が全滅して作戦が破綻する。


 どうするべきかと思ったところで撃墜判定が次々と知らされてくる。

 そしてキルゾーンとして設定していた広間に敵が雪崩れ込んできた。

 控えていた部下達に応戦させる。


『銃の軌道を読めるのか!?』


 驚きながらも銃弾の雨を降らせる。

 そうしないと瞬く間に敵の反撃でやられてしまう。


 せめて一矢報いたいところだが相手のパワーローダーの動かし方の概念が我々とは別次元の領域だ。


 射撃戦に持ち込んでも接近戦に持ち込んでもやられる。


 あと一分もしないウチに撃破判定をもらうだろう。



 Side 緋田 キンジ


 シュミレーターを使った演習は終了。

 結果は俺達の圧勝に終わった。


 色々と条件を変えたり、人を変えたりもしたがそれでも勝利した。


 佐伯 麗子からは「やりすぎだバカ」と言われた。


 まあ政治的なあれこれを考えると八百長だの接待的なあれこれもアリなんだろと思うが、俺もキョウスケもそこまで器用に出来ちゃいない。


 そして今は何をしているのかと言うと――


「いや、完敗でした」


 周りが交流会と言う名のパーティーになっており、そんな中で石崎大尉と二人きりで話し込んでいた。

 こう言う時は大概、リオかキョウスケかの二択なのだが――こう言うのは正直慣れてない。 


 相手は自分よりも軍人している軍人――いや、自衛隊は軍隊でなく、自衛官は軍人ではないのだが――その辺の説明は本当にややこしい。

 特に人手不足の昨今は武装した災害救助隊の公務員みたいな感じの扱いに拍車が掛かってるし。


 まあそれはともかく――


「正直言うと、自分達の動きが悪影響にならないか心配ですね」


「パワーローダーでゼレーナを倒す方々を何を仰いますか」


「はあ……」


 やはりAliceでないと人類の天敵倒せない的な世界観なんだろうなと思った。

 まあパワーローダーの装備の性能の問題もあるだろうが。


 リオやパンサーなどは別だ。

 あの世紀末世界を生き抜いてきた猛者だ。

 自分達、温室育ちの自衛官と比べる事すらおごがましい。


「ですが――少し不安もありますね」


「不安?」


「ええ、この世界はゼレーナと言う脅威がありながら人類は一致団結出来ずにいますから」


「はあ――」

 

「日本国内だけでも軍の過激派、反Alice派などがいるんです。早めにこの世界から立ち去った方がいいかと」


「確かにな――」


 確かに面倒な事になりそうだと思った。

 異世界のバハムスやゼレーナの事だけでも手一杯なのにこれ以上負担は増やしたくない。


 名残惜しいがこの場所から旅立つ準備を進める事にしておいた。

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