第八十六話「リビルドシティの支配者」

 Side ???


 地上が騒がしい。


 しかし人間とは愚かな物だ。


 例えどんな世界になっても人は人であるかぎり争いは捨てられない。


 救おうとしてもそれに逆らう連中はどうしても現れる。


 だからそれを前提として支配する枠組みを作った。


 それがリビルドアーミーであり、リビルドシティである。


 だがフォボスが言う様に私は選択を間違えたかもしれない。


 人を越えた絶対的な存在による武力による支配。


 それこそが人類を繁栄させる方法だ。


 

 Side 緋田 キンジ


『地下から高エネルギー反応複数!! 何かがくるぞ!!』


『なに!?』


 佐伯 麗子の慌てた声が通信機に響くと同時に地面が揺れる。

 中枢府のタワーを中心に彼方此方に穴が開き、そこから何かが現れる。


『アレは――バルキリータイプのパワーローダーか?』


 全身真っ白でトレーダーのアネット達が使うパワーローダーに外見が酷似している。

 翼らしき大きなバインダーまである。

 

 そして――白い翼の大きなバインダーを携えたパワーローダー――二本角に二つ目、アインブラッドタイプの特徴を模した奴が現れた。

 

『まさかお主がリビルドシティの、影の支配者か?』


 アーティスが若干声を震わせながらトレーラーから尋ねる。


『影の支配者か――まあ君達の視点から見ればそうなるね。名前はノアとでも呼んでくれたまえ』


 そしてヘルメットを取る。

 目鼻立ち整ったまだ若い金髪の少年だ。

 狭山 ヒロト君と同い歳ぐらいだ。


 だが何処か人形のような無機質さと超然染みた何かを感じる。


『リビルドシティがここまで追い込まれるなんてね。本当はリビルドシティが崩壊しても傍観するつもりだったんだけどね』


『なんだと!?』


 自分が支配している町が滅んでもいい?

 何を言ってるんだ?


『僕はリビルドシティを管理していた。僕独自のやり方でね。長い年月をかけて、人類を管理、運営するために――まさか並行世界を跨いで邪魔者が現れるとは思わなかったけど』


『その邪魔者が俺達、ジエイタイか』


『その通りだよ――フォボスが警戒するわけだ。こうして目の前に立ちはだかるとは――』


『フォボスを知っているのか?』


『勿論だよ。彼とは密約を交わしている』


 密約?

 一体何の密約だ?

 嫌な予感がして来たぞ。

 

『分からないかな? 簡単さ――この世界の管理運営するための支配権だよ』


 その言葉に想像はしていたが直接口から利かされると絶句してしまう。


『不思議に思わなかったかい? どうしてこの世界でフォボスが暴れないのか? それはフォボスの役割を僕が代行しているからさ』


『話は分からない部分もあるが――我々はフォボスとやらの手駒でしかなかったのか?』


 ランシスが震えた声で尋ねる。


『その通りさ。今このビルの最上階で呑気に酒を飲んでいる、代表者も僕の意思を代弁する都合の良い存在にしか過ぎない。彼は従順ないい駒だよ――』


『ちょっと待て――いや、待ってください!!』


 金ピカのパワーローダーに身を纏った奴――オードンと言ったか。

 が――問いかける。


『じゃあリビルドアーミーは何なんですか!? そのフォボスとやらの――』


『便利な道具だよ。変わりは幾らでもいるね――』


『なっ――』


 オードンはショックを受けたと思う。

 面と向かってブラック企業の常套句を言われたのだから。


『だけど状況が変わった。僕はリビルドアーミーとリビルドシティを捨てて、フォボスと本格的に手を組む事にするよ』


 その場にいた全員が絶句したと思う。

 何を言ってるんだこいつは?


『この世界の支配方法を変えるのさ。人を越えた存在による圧倒的な武力による支配。結局はそれが正しいやり方なのさ』


 ノアはマスクをかぶる。

 同時に仕掛けて来た。


『来るぞ!!』


 俺達は迎撃態勢を整える事にした。

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