第43話 調査報告書②

【極秘】


調査報告書


 報告者:東矩とうがね 祐希ゆうき


 被験者:法外ほうがい かける(敬称略)



概要:


『駆』本人の言によると、自分の『100%』は『じゃんけん勝負に敗退する』との事であった。


 実は、我々は『法外』と言う名に記憶があった。 


『駆』の伯父にあたる『法外 もとむ』は、我々組織の前身に当たる『能力科学研究所』の創設者の一人で、不完全ながらも『予知能力』を有していた。 その弟であり『駆』の父『法外 ゆずる』は『予知能力』に加え『透視能力』を有しており、それを使いすぎた為に早逝した……との見方もある。


『駆』から採取した遺伝子を解析した結果、父である『譲』氏と同様の特異な塩基配列が判明した。


 本来であればこの『能力』を効果的に利用して、順調な人生設計が出来たであろう『駆』だが、現実には『じゃんけんに負ける』という事象のみに固執し、『能力』を利用することは無かった。



考察:


『駆』が『能力』を利用しない理由として、以下の理由が考えられる。


1、『能力』の過剰利用による『父の死』を本能的に察知し、自己防衛の為に能力発動制限をしている。


2、『駆』の性格が、大きく関与している可能性がある。


 ず、彼が『能力』を発動する際には、大幅な『心拍数・呼吸数上昇』『血圧・脳圧上昇』『低血糖』が励起される。 鼻腔からの出血も複数回見られ、健康被害が示唆しさされている。


 また、『駆』は『相手に対する慈悲』が極端に強い。


 調査により判明した事だが、例え憎しみの感情を抱く相手でも『その相手が悲しむ姿を見たくない』という情緒が強く働くようだ。


 以前、小官が狂言誘拐による実証実験を行った際にも、実行犯役の演者がどんなに憎々しげな演技をしてもなお『敗北行動』を選択していた。

もっとも、この時は『駆』が小官の身を案じて、じゃんけんの敗北を喫しない為、強力な接着剤で自らの指に塗布して参戦した為、結果的には彼の初勝利となった)


 また、行方不明になった我々組織の『能力者』の所在を検索する際には、その相手が『発見されたく無いと思っているのに、自分が見付けては可哀想ではないか?』との思いから、強靭な精神力で『能力』を抑えつけていた。

(この際は、携帯式アナライザーによる『駆』のアドレナリン測定により『能力者』の所在を発見する事ができた。)

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