2 京都
そして、レンヤ達はいよいよ伏見稲荷大社に着いた。
石段を登ると左右に狐の石像が守るよりに構えていた。
「それで、ここからどこに行けばいいの?」
鈴が辺りを見回してそう聞いた。
「稲荷神社と同じで本殿に神様はいる。この先じゃないか」
そう言うとレンヤは真っ直ぐに迷いなく歩いていった。
「ここが本殿?凄いね。確か、重要文化財にしていされているんだよね」
鈴は赤と白の立派な建物を見上げてそう言った。
「そうなの?凄いね」
それを聞いた遥が嬉しそうに笑って建物を鈴と同じように見上げた。
「入るぞ」
レンヤはそう言うとなんの躊躇もなく建物の中に入っていった。
「そんなんで大丈夫なの?そんな簡単に神様って会えるものなの?」
鈴は不安そうな顔でレンヤの顔を見てそう聞いた。
「あぁ。大丈夫だ。稲荷神にアポを取ってもらっている」
レンヤは冷静な声でそう言った。見た目はそういう事をしないような人間に見えるのに意外とちゃんとしているようだ。こう見えてちゃんとした大人なんだよね。意外にも。そうは全然見えないのに。
「そういう事は先に言ってくれない?ヒヤヒヤしたんだけど。どうするのかなって心配したんだけど」
鈴は不貞腐れたように頬を膨らませてそう言った。
「聞かれなかったからな」
レンヤは子供のような事を鈴に言った。ちゃんとした大人なのに時々子供っぽいところがあるから本当はどっちなのか分からなくなる。
「普通、聞かれなくても言うものじゃない?はぁ。まあ。良いけど」
鈴は小声でそう言うと呆れたようなため息をついた。
レンヤと鈴は途中から認識阻害、姿を消して見えなくして歩いていき神様が居る部屋にまでやってきていた。
「やぁ。伏見の神。久しぶりだな」
レンヤは扉を開けると気軽な調子でそう挨拶をした。神様に対しての態度としては軽すぎる態度だ。まるで、旧友にでも会ったかのような態度だ。それで大丈夫なのだろうか。鈴や遥、彼方が驚いたような顔で一瞬止まり、そのあと心配そうな顔になった。鈴達も神様に対してそんな態度をして大丈夫なのか心配なのだろう。そりゃあそうだ。普通だったら絶対にありえない事だから。
その部屋の中は稲荷神のいた部屋とは違ってキラキラとした可愛らしい和の感じの雑貨がたくさん飾ってあった。そして、その真ん中に黒と赤の綺羅びやかな着物を胸元を大胆に開けて足も大胆にさらけ出した格好で座っていた。
腰まで伸びた稲穂が夕陽に照らされたような金色の髪に金色の瞳をした花魁のような華やかな女性がレンヤを見て嬉しそうな微笑んでいた。
「あらあら。レンヤくんじゃない。ほんと、おひさしぶりねぇ」
対する伏見の神はレンヤと同じぐらい軽く、フランクな感じでそう言った。甘ったるい舌っ足らずのような声で。
「あら?その子達は?」
レンヤに続いて入ってきた鈴達を見て伏見の神は首を傾げ、顎に人差し指びを添えて、そう聞いた。そのキョトンとした顔は子供らしい可愛さと妖艶な大人の魅力を持ち合わせていた。その瞳を見つめていたらそのまま吸い込まれてしまいそうな魅力があった。
「鈴だ。今、うちで預かっている。それに、彼方に遥だ」
そう言ってレンヤは一人ずつ紹介した。それにしても雑な紹介だけど。
「もしかして、そっちの子たちは黒子ちゃんとこの?」
「黒子?もしかして、稲荷神の事か?今の呼び名は黒子なのか。まあ、そんなところだ」
レンヤは呆れたような口調でそう言った。呆れてはいるようだがそれについては特に何も言わないらしい。
「鈴です。よろしくお願いします」
鈴はレンヤが雑な紹介をしていた時はレンヤの事を睨んでいたが、今は気を取り直して伏見の神に向き直ってそう丁寧に頭を下げた。そして、それに続いて彼方と遥も頭を下げた。
「いい子達ね。こちらこそよろしくねぇ」
そう言うと伏見の神は鈴達に向かって小さく手を振った。伏見の神は機嫌が良さそうにニコニコとしていた。子供が好きなのかもしれない。
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