第6話
「・・・っ」
「・・・」
黙り合う私とリチャード。
小さい頃は仲良しだったからと言って、二人とももう大人の身体になっており、大分時間が経過している。
(何を話せばいいんだろ・・・)
どう切り出していいのかわからないが、この沈黙が耐えられない。
「「あのっ」」
私が声を出したタイミングで、リチャードも声を出した。
「ふふっ」
「あははっ」
それが面白くてお互いに笑い合う。
そして、そんなリチャードの笑顔を見ていたら、彼は何を話しても受け止めていたし、今も昔のように受け止めてくれるのがわかった。
「昔、キミがよくボクが喋ろうとすると一緒に真似しながら喋ったことがあったよね」
「えっ?そんなことあったかしら?」
私はごまかしたけれど、昔なじみの彼にはお見通しのようだ。確かにいたずらで彼が喋るのに被せて喋ろうとするブームが私にはあった。
「よく、そんな些細なことを覚えているのね?リチャード」
「あぁ、もちろん。キミとの思い出はだいたい覚えているよ」
「じゃあ、あれっ。あれは覚えている――――」
私たち二人は思い出話に花を咲かせた。
私もリチャードもお父様たちが亡くなったことには触れなかった。
「あははははっ、そんなこともあったわよねぇ」
「あの時のキミは勇敢だったなぁ、びっくりしちゃったよ」
私は久々に大笑いができた。
そして、リチャードは王子として成長しても、リチャードはリチャードで変わっていないとわかって安心した。
「あーーーっ、面白い」
「ボクもだよ」
ニコっとするリチャード。
変わったことがあるとすれば、リチャードが素敵な男性に成長したということだろう。
私はその笑顔にドキッとしてしまう。
「ん?どうかした?アリア?」
「別に、なんでもないわよ」
私は少し頬が火照るのを感じながら、目線を下に落とした。
「お父様とお母様・・・死んじゃった・・・」
あんまり心を込めて言いたくなかった。
だから、私はポップにさらっと伝えた。
せっかく楽しい雰囲気を壊したくないけれど、言わずにはいれない面倒くさい私の心。
自己中心的で嫌になる。
私はもじもじと手遊びをする。
「私、エドワードと婚約してたんだ」
ちらっとリチャードを見るけれど、彼は真剣な顔で私を見ている。
「でも、破棄されちゃった」
自分で言葉を紡ぐたびに自分の心が揺れて、溢れそうになっているのが分かる。
もう一言、声に出せば私は泣き出して止まれなくなることを知っている。
「私・・・」
バサッ
私はリチャードに抱きしめられる。
「ボクはキミの味方だ、アリア」
「ひっく、ひっくっ。リチャードおおっ」
私はたくさん泣いた。リチャードの胸の中で。
リチャードは黙って、私の背中をさすってくれた。
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