第2話 枕

 水を沸騰させるのに

 ・氷から火を入れる

 ・ぬるま湯から火をいれる

 の2つでは、かかる時間が違います。

 どちらの方が早いでしょう。

 どうして早く沸騰するのでしょう。


 古典落語を聞いたことはありますか?

 落語は、失敗談だったり面白ネタだったり用語の解説だったり、本題のネタに関連した話から始まることが多いのですが、その小話しのことを『枕』っていいます。


 枕から入って、本題に進み、落ちが訪れる流れが多いです。 

 (いきなり本題から入る方もいらっしゃいます)


 人の頭はいきなりの切り替えは苦手なものです。

 命の危険が迫っていても、逃げることができず固まってしまう人が多いことからも察することができます。


 落語についてもそうで、本題にいきなり入り込める方はそう多くありません。

 先人たちは枕で切り替えがスムーズに進むことを経験的に見出したのでしょう。


 水の沸騰で言うなら、聴衆をぬるま湯状態にするのが枕という技術です。

 本題で同じ温度しか上がらないなら、ぬるま湯状態の方がいいのは明白です。


 催眠誘導でも同様の手法を使います。

 例えばカタレプシーの誘発で手が固まるネタをするとき事前に連想させることが多いです。


 直接的なのだと


 「握り込んだ手に接着剤が入って固まったらどうなる?」


 「えっ?固まる?」


 「そうだよね。じゃぁ(ry」


 とか、小話し的にするなら


 「小学生の図工でさ、紙を切り貼りするのに接着剤使った?」


 「使ったよ」


 「あれって手にくっつとペトーって張り付いてさなかなか落ちないの。そんなことなかった?」

 

 「あったね~」


 「んでいたずらで友達と接着握手とかして(ry」


 などとネタ振りし、ぬるま湯状態に誘導します。

 どんな段階での誘導にも通用するコツですので、覚えておいてください。



 実は催眠術には特別な技術がありません。

 ワンクッション置くなんて一般的に使われている技術にすぎません。


 つきつめればこういうことだよね?


 っていうのが催眠術なんです。

 ありふれた事を効果的に使っているだけ。

 知ってしまえば簡単な事、日常に溢れていることから抽出した技術なんです。


 催眠誘導でどういった枕が効果的でしょう?

 よく使われる状態は『固まる』『動かなくなる』『リラックスする』『気持ちいい』『安心』『幸せ』などです。


 それぞれの枕を考えてください。

  固まる=接着剤

  動かなくなる=金縛り、押さえつける

  リラックス=風呂、ソファー

  気持ちいい=風呂、マッサージ

  安心=自宅、家族、道具、お金

  幸せ=家族、お金、欲求の解消

 など、関連するキーワードなどからいくらでも盛れると思います。

 どれが相手にヒットするのか事前にイメトレしておきます。


 このイメトレが実際に催眠誘導をするときに役立ちます。


 という訳で今回のポイント3点です。


 ・いきなりの切り替えは難しい

 ・本題の前にワンクッション置く

 ・枕のイメトレをする




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