第19話 命名「ピノ」!!

「「龍??」」


2体の龍がそこに居た。


ーーー


見つかった事に驚き焦った小さな黒龍。そしてさらに小さいのが後ろにもいる。色が違うが兄弟か?


パタパタと羽を動かす…何故か2匹とも焦っている。見つかると思っていなかったのか。

どうやら攻撃してくるようだ。


「!!!!セイ、モチ!下がれっ!」

「モチは結界!私は援助する!」


一気に距離を取る


風魔法の斬撃を飛ばしてきた

もう小さい方は、口を開けている…咆哮か?やばい気がする。


口中へ空気中の魔素が動いているように感じる。

同時に黒い龍も咆哮をしようと口に魔力を集め始めた。


けどさ...


「なぁセイ。」「私も思ったところだよ。」


2人で身体強化して一気に詰める。

2体の頭上へと飛び拳に力を...


「「やめんかッ!!」」


2体の頭に思いっきり拳骨をぶち込んだ。

焦ったからって咆哮しちゃダメだ。


改めて龍達を見てみる。どちらも1メートルにも満たない大きさだ。

目は愛くるしい空色の瞳でキラキラ輝いている。小さな子は黄金色にうろこが輝く龍だ。黒龍よりも小さく、まだヨチヨチしている。目の色は同じく空色だ。


2体共拳骨を食らって涙目だ。羽で頭を押さえている。


「いや。俺らは悪くない。そっちが先に攻撃してきたんだからな。」

兄はうるうるな目で龍に見つめられている事に動揺している。


「うん。何より被害がでなくてよかった。...はい。チョコ。仲直りのしるしに。」

さすがにうるうるな瞳で見られたら耐えられない。し、仕方ないのだ。


『ねぇねぇ。攻撃してきたのは驚いたから??

もしかしてずっと僕たちの事見てた?

なんか気配は感じてたんだよね!僕魔力感知自信あったんだけどなぁ〜君すごいね!後ろの小さな子もね!』


『リュぅ…』黒龍が鳴いた。


え、かわっ!

鳴き声が!萌!萌えるよ!兄も心臓を押さえている。2人ともついつい悶え死ぬ所だった。



『キュッ!』小さい黄金龍はなんだか嬉しそうに返事している。かわいいな、この子は黒龍の妹ちゃんか弟ちゃんかな。黒龍は何となくだがお兄ちゃん感がある。


そんな龍2体、何故かずっと私たちを見ていた様だ。


先ほど差し出したチョコをいまだ受け取らない2体。

目がキラキラ光ったあと、2人ともすぐに迷う様な素振りをして悲しい目をした。


「なぁモチ。この子達と会話できるか?」


何か事情があるのかもしれないな。モチに会話を試みてもらう。

そう。動物同士感じるシンパシーを是非ここで披露してもらいたい。


うん!とモチは返事をし2体の龍に向き合って何かガウガウ言いながら会話を始めた。


『ガウガウ…ウ?ガウ。ワッ!ガウガウ』

『リュッ!リュリュ!リュウ…』

『キュウ…キュッキュッ!』


...


こんな会話が聞こえてきて正直兄も私もニヤケ顔が止まらないです。可愛すぎる。ごちそうさま。


『なんか、この子達のママが体調悪くてご飯を探しにきたんだって。美味しいもの食べたら元気が出るだろうと思って。

その時ゴウ君達が来たから追いかけて観察してたら美味しそうなもの食べてて、お母さんに食べさせてあげたいって思って見てたらしい。でも僕も2人も強そうな魔力持ってたから襲うに襲えなかったんだって!あとさっきは突然攻撃してごめんって言ってる!』



うん。襲うとかしなくてありがとう。咆哮されかけたけど結果オーライ。



「別にいいぞ。なんともないからな。

こいつらのお母さんってここを守ってる黒龍のことじゃないか?

ちょうど俺たちその黒龍の元にいかなきゃいけないから案内してくれよ。お父さんとお母さんなら治せるかもしれないし。」


そう兄の言った事を2体に伝えると、目を輝かせてパタパタと近づいてきた。

なんて事だ、2体とも強さゆえに疑うという事をしない純粋な赤子の様だ。

取り敢えずチョコを与える。まだあるから食べて良い事を伝えると2体とも美味しそうに食べ始めた。


モキュモキュして食べている。

おぉう。これが母性か。


兄もどんどんチョコとオランを与えている。


取り敢えずこの件をモチに頼んで母に報告。


ーーーーーーー


報告後、すぐに両親が来た。


「セイちゃん!怪我してないかしら?

ゴウ君はお腹壊してないかしら?モチちゃん、報告ありがとうね。」


なんだか心配された。兄はお腹壊してないから心配されるとか…


「ふふふ」

「セイ。笑うな。」兄は心外だと母に文句言っている。



「そしてその子達がモチが話していた黒龍の幼体だな?恐らくその子たちは黒龍の子供だろう。そもそも黒龍なんて一体しかいないからな。子供がいるなんてことは驚いたが...」


そう。2体の龍を無視していた両親…

普通すぐに聞くだろ。


「モチが会話してくれたんだ。

それで彼らのお母さんが黒龍だと分かったんだ。この子達によると、昨日の精霊の言った通り黒龍が弱ってきてるんだって。2人が来たら案内してほしいって事を話したよ。治せるかもしれないからって」


「分かった。モチ、ありがとな。

君たち。怖がらなくて良いぞ。


…ん〜俺たちの魔力感じとってるのか〜。流石黒龍の子だな。感知力が高すぎる…


俺たちが怖いなら、2人の所にいなさい。

ゴウ、セイ、この子達に優しくしてやれよ。お前らに懐いてるからな。」


両親が転移で現れた時から、私たちの足元に隠れる様に身を潜めていた。

2人のチート級な膨大な魔力に、圧倒的な差を感じたのだろう。


『リュッ』『キュッ』両親が、私達と同じ魔力の性質を持っているため幾分か安心した様だ。

母はもう彼らの声を聞いて目をキラキラさせている。父は彼らをヨシヨシ出来ないことを嘆(なげ)いている。


私達一行はそのまま、2体の龍に案内される事となった。


森を少し抜けると、なんだか歪んだ空間がある様に感じた。

父と母はなるほどね。と言っている。


「解除」父が手をかざすと空間がぐにゃりと曲がり、その場に突然大きな黒龍が現れ、こちらを見下ろしていた。


『やはり。この気配はお主達だったか。勇者と、聖女だな。通りで他の魔物が全くいなくなるわけだ。』


「おい、お前。しんどそうな顔してるな。しかも前はそんなちっぽけな魔力じゃなかっただろ。魔力まで禍々しくなってるじゃないか。

このままいくとお前、魔物化するぞ?どうしてこんなになった?」


魔物化とは、魔獣の様に理性がある生き物が、理性を失い見境無く攻撃する魔物の様に凶暴化する事。魔物は禍々し魔力を纏っている点が魔獣とは違う所で判断基準でもある。


『うむ。以前会ったかのう?覚えとらんがな…

普段はあんなヘマしないのだが。子を産んだばかりでな…隙を突かれたのじゃ』


というか。喋れるんだ。兄と私はいざ会ってみたらその大きさと迫力に呆然としていて話が追いつかない。


ちょっと良いかしら?と母。怖いもの知らずで黒龍に近づいてピトッと触れる。


「あら。これ呪われてるじゃない。

しかもかなり強力よ。すこしチクっとするわよ」


ディスペル



母がそう唱えた瞬間、黒龍の体から黒いモヤが弾け黄金色の母の魔力が打ち消していく。


『ゔぅ。聖女。いきなり過ぎて驚いたぞ。

だが、ありがとう。助かった。このまま行くと魔物化してそこの国一個消す所だったぞ。』


顔色が少し良くなった。目が綺麗な空色へと変わった。


ぬぬぬ。と、こっちに黒龍が目を向けた。


『…お主達の子か。我の子供達が世話になった様だな。そして、聖女にも感謝するが、まずはお前さんたちに礼を言う。聖女を連れてきてくれてありがとうのう』


「いいぞ!だけどまだ元気じゃないな。セイ、やってみるか?」

「うん!お母さん!やってみて良い?」


「ええ、良いわよ。モチちゃんもやってみなさい。私も様子を見てからやるわ」


黒龍に説明をして、魔力を与える事を試みる


「触るね!失礼します!」黒龍に触れるのだけでドキドキだ。


ピタ


ひんやりしている。ここに徐々に魔力を流す。

兄もモチも同様だ。


『む。お主ら凄いな。まだ赤子だろう。

良い魔力を持っておるな。心地いい。2人とも光の属性は聖女似だな。同じ波長だ。

して、もうちと強めに流してくれんかの?なかなか気持ち良くてな…』


「どれ、俺も流してみよう。お母さんも一緒にやろう。早く元気になってもらって今、さっき黒龍が話していた事について詳しく聞いておこう。なんだかきな臭いからな。」

と父が母に話しながら魔力を黒龍に流し始めた。


『ぬ、勇者の魔力か。おぬし、ちと緩めろ。お前さん魔力の質が強すぎるわ。子供たちはまだ可愛い魔力だがな...む。聖女よもっと強く流してくれ。...うむ、そうそう』


ん?なんだか親戚のおじいちゃんの肩もみをしている気分になってきたぞ。


「この患者さん、ジジ臭いね」私

「あぁ。追加料金もらうか?」兄

「こいつもう元気だろ。やらなくていいんじゃないか?」父


そうしてしばらくの間家族総出で黒龍の魔力回復を行った。


...


黒龍はうろこもツヤッツヤで見るからに健康な身体へと回復した。

今は私たちのチョコをちまちまと食べて、事のならわしを両親に話している。


両親はなぜ黒龍は呪われていたのか。誰に。そして目的は何か掴んで置きたいらしい。


私たちはめんどくさいので今は子供の龍達と戯れている。

2体とも魔力操作が上手く、魔力操作の練習を手伝ってくれた。そして年下の龍は何故か私になついてしまっている。膝の上に載って丸まっている。

兄も黒龍に気に入られたのかスリスリされている。

どうも魔力操作で魔力を体内から放出した際、その魔力を気に入ったのだと。モチも負けじと小さくなって甘えてくる。可愛すぎる。両手に花だ。



両親に黒龍から聞いた内容を聞いた。

両親の顔は深刻というより...なんというか面倒な事になったと言わんばかりの顔をしている。立場上放っておくわけにも行かないんだろうな。

黒龍によると、娘の龍。黄金色の龍を出産した時は魔力コントロールが難しく、普段なら魔力感知で人間たちに感知できないように隠密をしているのだが、その時だけは隠密を保つことが出来なかったらしい。恐らくだがその際に黒龍を探していた者、呪いを掛けてきた者たちに見つかってしまったと言う。なんでもここ数十年、怪しい冒険者がこの森付近をうろちょろしていたそう。十中八九黒龍を狙っての事だとは思うが。

タイミング悪く見つかってしまったという。


数十年も黒龍を探していた。それを聞くだけでも、今回の件は計画的でかつ執念深さを感じた。


「目的は黒龍の暴走化だな。面倒だが、事後報告でもいいならそいつらつぶしておくか。」


「そうね。この国の国王は平和第一で争いごとが嫌いな国王だけど、一定の貴族たちはここぞとばかりに戦争だ!と言ってくるでしょうね。そんな面倒ごとをしていたら埒が明かないし、事が大きくなってしまうわね。

だったら調査中に黒龍が襲ってきたからやり返した。またその原因を作った組織を殲滅した。と報告した方が国王にも、私たちもどちらにも良いでしょう。」


「もしかしたら一国にとどまらない話になるかもしれないからな。国同士の争いには基本的に不干渉だが、人々がそれで巻き込まれて犠牲を負う事は見過ごすことはできない。

だったら国が絡んでいたとは知らなかった。という体裁を取ろう。

今回は黒龍。魔獣が対象だから俺らの管轄内だ。俺たちが首謀者らを捉えても問題ない。」と父が解釈のすり合わせを母と行っている。


「お兄ちゃん。今回の件長くなりそうだね。」

「ああ。お父さん、今回は一度国に戻るのか?それともこのまま調査続行するのか?」


「国へは戻らずに調査を続ける。今回はちと厄介な件で長引きそうだ。お前らは少ししんどいかもしれないが、頼むぞ。

 また、今回の件はお前たちの勉強にもなるぞ。

勇者と聖女としての対応の仕方...例えば今回の件の様に、事が大きくなる前につぶしておくことが多いんだ。そういった対応や抜け道についてしっかりと見ておいてほしい。今後のためにな。」


「そうね。

2人とも面倒ごとは嫌でしょう?だから事が大きくなる前の迅速な対応が大事なのよ。」


うむなるほど。

どうせやるんだったら最短かつ最小で済ませたいもんな。


「わかった。ちゃんと見ておくよ。面倒ごとは嫌だけど、勇者ならつきものだからね。」

「うん。私もしっかり学ぼうとおもう。スローライフが掛かってるからね。」


「して黒龍。お前らはどうする?

...その子たちうちの子に 懐きすぎじゃないか?」


「うむ。どうやら主になって欲しそうじゃのう。どうだお前たち、嫌なら言うこと聞かせてやめさせるがのう...お前たちの魔力が心地いいらしいのじゃ。」



「いいぞ。この黒っちいの可愛いからな。しっかりしてそうだし。なっ!お前も良いよな!?」

『リュッ!!』シュパッと羽をあげて良い返事だ。


「私もいいよ。この子なんだか気が合いそう。ねっ!」

『キュッ!』頭をぐりぐりして懐いてくる。うむ。チョコを与えよう。


「ふは!お前ら顔がデレデレだぞ!

お母さんは…うん。落ち着いてくれ。モチはお兄ちゃんになるのか!よかったな」


『僕!お兄ちゃん!ふっふふーん!僕お兄ちゃんかぁ~』モチはなんだか嬉しくてポヤポヤしている。顔の周りからお花の見えてきたぞ...とにかく嬉しそうだ。


母は2体と私たち、モチを順番に見つめながらなにやらフンスフンスと息巻いてブツブツ言っている。「ウサギも良いけど、恐竜コスも...」と聞こえたが無視だ無視。


『うむ。従魔になるという事は我から離れるという事か...うむ。

まぁ我らの寿命は長い。修行だと思ってついていくと良い。が、たまに、たまにでいいのだ。我もそなたたちの所に行ってもいいかの?息子娘に会いたいしの...先ほどの菓子も食べたいのだ...いいかの?』


「あら、それなら...」と母がアイテムボックスをごそごそ動かし、なにやら大きな石をネックレスにして黒龍に渡した。


「これは転移石よ。ここに2体の魔力を流したらお互いの位置を把握できるから黒龍も私たちの元に来れるし、その逆も然りなのよ。どうかしら?」


『こんな希少な石。いいのか。ありがとうのう。』

「いいのよ、親は常に子供の心配はするもの。親同士の協力は必要でしょ?」


なんだか母が聖母に見えてきた。神々しいぞ。実際聖女で元から神々しいのだが。


「ちょっと良い服装考えたからあなたにも協力してもらいたいのよ。」

『む?...なになに...なるほどのぉ、いい考えじゃないか聖女よ。我もその姿見たいのぉ』


なんだか2人でこそこそと話し始めたが、内容…聞こえているぞ。

さっきの私の気持ち返せ。聖母発言撤回だ。

前世からブレないな。小さい時は特にいろいろなものを着せられた。…まぁこちらとしてもノリノリなのだが。


『キュッキュッ!』

小さい龍が私の前に座ってこちらを向いて鳴いている。体に魔力を纏っている。

つまりテイムをしてほしいってことかな?


前母が行っていたのを思い出す…

魔力を手に乗せて小さい龍に向ける。


「テイムっ!」


ドクン…ドクン

魔力が龍に向かって抜けていく。


そして、


龍の体内へ吸い込まれていくと、何かを掴んだような感覚がした。


『キュッ!』


と鳴くと、カチリとお互いの魔力が繋がった。


『主ちゃん!よろちくね!名前!名前つけてほちいの!』


可愛いらしい女の子っぽい声が聞こえた。

名前か…名前…うぅセンスが問われる。

うーん、見た目は金色…

性格は元気。弾む様な鳴き声。





「ピノッ!」















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